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古の庭で  作者: 槍田歩馬
第一章 幕開け
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第10話 もしものために

 次の日から、松本先生はもう学校に来なくなった。

「校長」

「どうしたの?」

「校長は初めからわかっていたのですか?その・・・松本先生が犯人だと」

「うふふ」

 校長は不敵な笑みをした。「田中ちゃんはは何でも知っているのよ」

 じゃあ何故松本先生を野放しにしたんだ、と言いたくなった。おかげで手を焼かされたじゃないか。

「おはようございます・・・」

 珍しく、佐野くんの明るい、陽のオーラがない。

「おはよう。元気ないね?」

「そりゃあ、同期があんなことになったので。それに、佐倉先生の謎も増えたし・・・ほとんど眠れませんでした。」

「寮ではいつもこんなテンションなのよ」と、後ろから声がする。

「ああ佐倉先生、おはようございます」

「おはよ。ねえ御酒先生、ちょっと話いいかな?」

 瑠璃さんは手招きした。今日は英語科の準備室で話す。

「昨日の、ことなんだけど・・・」

瑠璃さんは眉間に皺を寄せる。

「ついさ、毛利についていろいろ言ったじゃない?佐野くんの前で」

「ああ・・・大分不死身の話に踏み込んでましたよね」

「色々話しながら、『しまったな』って思ったの」 

 それは話している時にうっすら思っていた。

「それで、佐野くんには言ってしまおうかと」

「え?・・・何を」

「私の不老不死。・・・もしものために、ね」

 え?と混乱する。何で、と。

「私は反対です」と私はきっぱり言った。「大体、佐野くんが毛利の手先ではないとは限らないでしょう」

「いいや、彼は大丈夫」

「何を根拠に・・・」

「わかるんだ」

まっすぐとした目だった。

「まあ私の兄については、話さないとでしょ?」

「・・・」

「だから今週末、教員寮で」

「・・・わかりました」


 それから松本先生が学校に来ることはなく、教員だけには一身上理由で退職したとだけ伝えられた。

 幸い、松本先生はどの組の副担任もしておらず、まだ4月だったこともあり、生徒たちに混乱はなかった。


 家に帰って悶々と考える。

 瑠璃さんは、何故佐野くんに話すことに決めたのだろう。今まで私が見てきた中で、大っぴらに言っていることはなかった。「言うと後々面倒だからね」と瑠璃さんは言う。ならいくらもしものため、といっても佐野くんに話す必要はあるのだろうか?

 わかっている。これは、嫉妬だ。佐野くんと瑠璃さんが打ち解けているのを感じているんだ。でも、嫉妬以上に、何か不安がある。

 「後々」面倒だと言った。ある考えが頭をよぎる。もし、瑠璃さんがこの学校に長くいるつもりが無いのだとしたら──?

 気がつくと電話をしていた。

「もしもし、瑠璃さん?今週末の件で、聞きたいことが・・・」

『・・・話すことは無いよ』と小さな声がして、電話は切られた。

 空模様が段々と悪くなっている。どす黒い雲が、空を覆っていく。

 まだ先の見えない不透明さに、悩まされることになりそうだ。

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