第7話 始まり
「え?金庫の金がない?」
事件があったのは、新学期が始まって一週間ほど経ったときのことだった。
「はい、ごっそり」と私は答える。
「色々入っていたんだけれどねえ・・・」
いつもながら神出鬼没な校長がいつの間にか後ろに立っていた。
「佐倉先生は何か知らないの?」校長が言う。
「へ?私を疑っているんですか?」
と瑠璃さんはとぼけた声で言った。
「いーえ?そんなことしなくても貴女は億万長者ですからね、この田中ちゃん、一ミリたりとも疑っちゃあおりませんよ。私が言いたいのはね・・・」
「?」
職員室中の教員が首を傾げる。
「さっさと犯人見つけて半殺しにしてきて下さい⭐︎貴女得意でしょうそういう荒事」
「ははは、嫌だなあ私はか弱い女子ですよお」
そう言って瑠璃さんは自分の机の引き出しから竹刀を取り出した。皆が凍りつくのがわかる。私は苦笑いした。
「まあまあ校長、金庫責任者は私なんで、佐倉先生と探してみせますよ」
と瑠璃さんの腕を掴んで立ち上がる。
「どこ行くの?」
校長が訊いた。
「犯人の目星はついているんで、御酒先生と作戦会議してきまーす」
そう言うと瑠璃さんは扉を開けて職員室を出て行ってしまった。
「──で?犯人の目星は?」
廊下で小さな声で訊く。瑠璃さんはいきなり立ち止まって、後ろを振り返った。
「しっ。後ろ」
後ろを振り返ると、柱の後ろの影が動いた。
「つけられてる」
誰だろうか。このタイミングなら、犯人?そういえば、前に瑠璃さんが──
すると瑠璃さんが大きな声で言った。
「こそこそしないで出てきて下さい。どうされたんです?──佐野先生」
柱から佐野くんがひょっこり顔を出す。気まずそうな顔をしている。まさか佐野くんが犯人?
「あわわ・・・」と佐野くんは動転していた。
「落ち着いて、どうしたの?」と冷静さを保つよう努力して尋ねる。
「いや、僕、見ちゃったんです・・・昨日」
「おお」
「といっても後ろ姿だけなんですけど・・・」
そう言って佐野くんは俯く。
「で、誰」
「あれは松本先生・・・でした」
「え!?」と思わず叫ぶ。
「やっぱりねー」
瑠璃さんは頷く。
え、松本先生が?驚きが隠せない。まだ出会ってそれほど立っていないが、盗みなんて大層なことするようには見えなかった。
というか、なぜ瑠璃さんはそう思っていたんだろう?前に言っていた『毛利さん』が関係しているんだろうか?
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