ようこそ
目が覚めた。私は起き上がる。
ここはどこ…?何があったんだっけ…。えーと、老婆の姿がフラッシュバックする。
呼吸が乱れる。深呼吸し、心を落ち着かせ、恐る恐る布団をめくった。
「あれ…? 傷がない」
あんなことがあったのに……。私は小指にも視線を向ける。
あれ…? 震える指で無いはずの小指を撫でる。確かにそれはそこにあった 。
私は信じられずじっと小指を見つめる。
見つめていると、やけに視界が広いことに気がついた。片目を取られたはずなのに。
手を目に当てる。眼球の感触が伝わるし、近づいてきた指が見えた。
「夢…だったの?」
でも、感覚を鮮明に思い出せる。それに悪夢を見たにしては脂汗をかいていてない。
戸惑っていると、襖が開いた。入ってきたのは仮面を被っていない狐だった。
琥珀はきつね色の毛だが、この狐は銀色の毛だった。
彼はしゃがみ込む。
「お目覚めになられましたか。唯様」
狐……。そうだ、私…琥珀に助けられたんだった。傷がないのは……異界だから治療手段があるんだろう。
「あの…琥珀は何処ですが? お礼が言いたいのですが」
彼はさらに頭を下げる。
「申し訳ありませんが、彼は追放されました。ここには居ません」
「追放…何でそんなことを!」
「彼は貴方を招待者だと気付かず、街に放置し、怪我を負わせました」
招待者…? 何それ。いやそんな事よりも琥珀の方が重要だ。
「でも彼は私を助けてくれました!! それに傷も治して」
「救助するのは彼の義務です。それと失礼ながら唯様は勘違いされています」
「勘違い…?」
彼は頭を上げる。
「はい。唯様……ご自身の頭かお尻をお触りください」
私は頭を触った。何か……付いてる。もふもふとした毛ざわり、それに三角形。
「これは…耳……?」
「その通りです。彼は貴方を狐にして自己再生を促しました」
狐にして…。どうやって。私は自分のお尻を見る 。やはり尻尾が生えている。
「琥珀は……どうやって私を狐に?」
「血を飲ませたのです。彼は貴方が人間として生きられることを剥奪して助けたのです」
人間を剥奪……。つまり…。
「つまり私は……」
「狐になられました。ようこそ、我らの一族は歓迎します」




