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推しは異世界で今日も『快適』に暮らしている。  作者: 西 悠希


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8/10

第8話 平常心とは。



……そういえば、前世を思い出したけど、言った方がいいんだよな?言うならウィルにだろうけど……。

王子に話しかけるとか、普通に無理だろ。

いきなり話しかけて、「俺、前世の記憶があるんです!」なんて言えるわけないしなぁ。

それこそ王子と二人でなんて、話せる雰囲気じゃないし。

やっぱりそこは、ちゃんと護衛とかいるんだよな。小説で気軽にフィンの屋敷で避暑休暇してたけど、遠乗りの時も護衛とか、ちゃんといたみたいだし。


まぁあれはウィルだけじゃなくて、フィンやガレス、マティアスも高位貴族の令息だしな。


えぇー……どうやって伝えたらいいんだ?

うちの場合、親との関係は貴族らしく、どちらかというと希薄だし。


……いっそのこと、フィンに話すか。

それが一番手っ取り早いとは思う……けど、フィンが主人公の小説を読んでて、気づいたらこの世界に転生してたって、話すのか……?


さすがにちょっと気まずい……。


でもそれが一番いいよな。結局、いろいろ聞かれるだろうから、早いうちにフィンに話してた方がいい。それに、そこからウィルに繋いでもらったらスムーズだろうし――


「ルカ、そろそろ授業が始まるけど、教室に戻らなくて大丈夫?」


「……えっ? あっ!戻る」


使っていた物たちを片付けて、教室へ向かった。


いつも眠くなるはずの午後の授業が、今日は眠くならなかった。あのお茶のおかげなのかな?


「ルカ、聞いた?次の授業、自習になったらしいよ」


「え、そうなの?何も聞いてなかった。自習かぁ……今日は眠くないんだけどなぁ」


「俺は眠い。だから次の時間は寝る!」


……ユリウスが寝るなら暇だなぁ。

そういえば、フィンが自習だと言って、魔導具研究会に残ってた時があったな。

暇だし行こうかな。結局、魔導具作りも中途半端なところで終わってたし。


「俺は魔導具研究会の方に行ってくる」


「あぁ!じゃあ、またあとでな」


……それにしても地味に遠い。


魔導具研究会の教室を開けて、誰もいないことを確認する。


「さすがにみんなが自習なわけじゃないしな」


さて、続きをやってみるか。


……やっぱり集中すると、無駄に力が入るな。でもまっすぐ書くには、ある程度手首を固定していないと曲がってしまう……。かと言って、ゆっくり書くのもそれはそれで、液溜まりみたいになるし――


あぁ!もう少しでいい感じに描き終わると思ったのに!最後で線がブレた!……地味に悔しい!


修正ペンで最後のところだけ修正して、なんとか魔導回路を描き終えた。


「あれ?この時間に人がいる」


?!?!


「君は……」


「ルカ・エーベルです。授業が自習になりましたので、魔導具作りの続きをしていました」


「あぁ!そういえばお昼もいたね」


「はい。先日、魔導具研究会に入りました」


なんでこの時間にここに?!?!


「そうだったんだ。私は正式に入ってはいないけど、ここにはよく来るから、よろしくね」


「はい、よろしくお願いします。ウィルフリード殿下」


ウィルは慣れてるようで、棚からカップを取り出し、自分でお茶を入れ始めた。


…………。


……いや!びっっっくりした!!のんきに魔導具作ってたところにまさかのウィル!

普通に話したつもりだけど、絶対、声震えてたよな、俺!

というか、なんでこんな時間に一人でこんな所にいるんだよ!見た感じ、護衛らしき人も見当たらないけど?!どっかに隠れてるのか?!

そうであってくれ!!


ん?というか、ウィルとフィンって同じクラスじゃないのか?もしウィルも自習になってたとしたら、フィンと一緒にこっちに来そうな感じなのに。


「……あの、フィンは?」


「あぁ、フィンは寝不足みたいで、教室で寝てるよ」


「そうでしたか」


……夜中まで魔導具作ってそうだもんな。それでイレーネに怒られてそう。


「ルカはフィンと仲が良かったのかい?」


「いえ、ここに来てから少し話した程度です。魔導具作りに関して尊敬はしていますね」


「あぁ、すごいよね。近くで見てきたけどいつも思うよ」


やばい!ウィルと普通に話してるんだけど!いいの?!

いや、ダメだろ!!護衛っ!!護衛はどこだーっ?!


「あの……お一人で大丈夫なのですか?」


「ん? あぁ、護衛なら教室の外で待機してるよ」


「なるほど」


まぁ、それなら大丈夫なの……か?


「私のことは気にせず、魔導具作りの続きをするといいよ」


「あ、はい」


…………。

いや、無理だろ!気になるよ!



第8話を読んでいただき、ありがとうございます!

ルカに平常心は無理でした。

また書けたら更新します!

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