第8話 平常心とは。
……そういえば、前世を思い出したけど、言った方がいいんだよな?言うならウィルにだろうけど……。
王子に話しかけるとか、普通に無理だろ。
いきなり話しかけて、「俺、前世の記憶があるんです!」なんて言えるわけないしなぁ。
それこそ王子と二人でなんて、話せる雰囲気じゃないし。
やっぱりそこは、ちゃんと護衛とかいるんだよな。小説で気軽にフィンの屋敷で避暑休暇してたけど、遠乗りの時も護衛とか、ちゃんといたみたいだし。
まぁあれはウィルだけじゃなくて、フィンやガレス、マティアスも高位貴族の令息だしな。
えぇー……どうやって伝えたらいいんだ?
うちの場合、親との関係は貴族らしく、どちらかというと希薄だし。
……いっそのこと、フィンに話すか。
それが一番手っ取り早いとは思う……けど、フィンが主人公の小説を読んでて、気づいたらこの世界に転生してたって、話すのか……?
さすがにちょっと気まずい……。
でもそれが一番いいよな。結局、いろいろ聞かれるだろうから、早いうちにフィンに話してた方がいい。それに、そこからウィルに繋いでもらったらスムーズだろうし――
「ルカ、そろそろ授業が始まるけど、教室に戻らなくて大丈夫?」
「……えっ? あっ!戻る」
使っていた物たちを片付けて、教室へ向かった。
いつも眠くなるはずの午後の授業が、今日は眠くならなかった。あのお茶のおかげなのかな?
「ルカ、聞いた?次の授業、自習になったらしいよ」
「え、そうなの?何も聞いてなかった。自習かぁ……今日は眠くないんだけどなぁ」
「俺は眠い。だから次の時間は寝る!」
……ユリウスが寝るなら暇だなぁ。
そういえば、フィンが自習だと言って、魔導具研究会に残ってた時があったな。
暇だし行こうかな。結局、魔導具作りも中途半端なところで終わってたし。
「俺は魔導具研究会の方に行ってくる」
「あぁ!じゃあ、またあとでな」
……それにしても地味に遠い。
魔導具研究会の教室を開けて、誰もいないことを確認する。
「さすがにみんなが自習なわけじゃないしな」
さて、続きをやってみるか。
……やっぱり集中すると、無駄に力が入るな。でもまっすぐ書くには、ある程度手首を固定していないと曲がってしまう……。かと言って、ゆっくり書くのもそれはそれで、液溜まりみたいになるし――
あぁ!もう少しでいい感じに描き終わると思ったのに!最後で線がブレた!……地味に悔しい!
修正ペンで最後のところだけ修正して、なんとか魔導回路を描き終えた。
「あれ?この時間に人がいる」
?!?!
「君は……」
「ルカ・エーベルです。授業が自習になりましたので、魔導具作りの続きをしていました」
「あぁ!そういえばお昼もいたね」
「はい。先日、魔導具研究会に入りました」
なんでこの時間にここに?!?!
「そうだったんだ。私は正式に入ってはいないけど、ここにはよく来るから、よろしくね」
「はい、よろしくお願いします。ウィルフリード殿下」
ウィルは慣れてるようで、棚からカップを取り出し、自分でお茶を入れ始めた。
…………。
……いや!びっっっくりした!!のんきに魔導具作ってたところにまさかのウィル!
普通に話したつもりだけど、絶対、声震えてたよな、俺!
というか、なんでこんな時間に一人でこんな所にいるんだよ!見た感じ、護衛らしき人も見当たらないけど?!どっかに隠れてるのか?!
そうであってくれ!!
ん?というか、ウィルとフィンって同じクラスじゃないのか?もしウィルも自習になってたとしたら、フィンと一緒にこっちに来そうな感じなのに。
「……あの、フィンは?」
「あぁ、フィンは寝不足みたいで、教室で寝てるよ」
「そうでしたか」
……夜中まで魔導具作ってそうだもんな。それでイレーネに怒られてそう。
「ルカはフィンと仲が良かったのかい?」
「いえ、ここに来てから少し話した程度です。魔導具作りに関して尊敬はしていますね」
「あぁ、すごいよね。近くで見てきたけどいつも思うよ」
やばい!ウィルと普通に話してるんだけど!いいの?!
いや、ダメだろ!!護衛っ!!護衛はどこだーっ?!
「あの……お一人で大丈夫なのですか?」
「ん? あぁ、護衛なら教室の外で待機してるよ」
「なるほど」
まぁ、それなら大丈夫なの……か?
「私のことは気にせず、魔導具作りの続きをするといいよ」
「あ、はい」
…………。
いや、無理だろ!気になるよ!
第8話を読んでいただき、ありがとうございます!
ルカに平常心は無理でした。
また書けたら更新します!




