第4話 方針会議
夜が明けた。
カーテンの隙間から、陽光が漏れる。
その光で悠は自然と目を覚ました。
「やばッ……!!遅刻………。」
習慣化された行動で、直感的に遅刻だと理解する。
だがそれも起き上がってからは違う。
「そうだ……異世界なんだった」
悠がリビングへ向かうと、ちらほらと人がいる。
時刻は……午前8時。
学校に行く準備をする頃合の時間であった。
「おはよう…悠君」
眠気が去りきってない声を掛けて来たのは、拓也であった。
今さっき起きたのだろう、まだ寝巻きのままで、髪は少しだけ乱れていた。
「おはよう、拓也君。よく眠れた?」
「全然だよ……。なんだかやっぱり落ち着かない。……元の家のことあるし。」
「そうだよね……」
目を擦りながら拓也は答える。
目の下には少しだけクマがある様に見えた。
皆もこの状況を受け入れつつある中でも、やはり元の世界の事は気になるのだろう。
「けど、考え込んでも何も始まらないしさ。協力してやれることをやっていこう」
悠の言葉に拓也は少しだけ、目を丸くする。
「悠君……昨日より明るいね、良かったよ」
ホッとしたように拓也は胸を撫で下ろす。
悠の事情を知っているからだろう、心配してくれていたのであった。
「ありがとう」
「みんなおはよう〜」
欠伸を手で押えながら、委員長…綾はリビングの扉を開けた。
人がまばらであった空間は、気が付けばそれなりの人数へと変わっていた。
「それじゃあ、みんな席に着いて。会議始めるよ」
その言葉に従って、ゾロゾロと皆は白い長机と椅子に座っていく。
綾はコップにはいった水を少量飲み、こほんと咳き込みして話し出す。
「みんなおはよう。今日なんだけど……色々考えて、王都に向かうことに決めたの。」
「…理由を聞いても?」
雅人は目を細くしながら、綾へ尋ねる。
「理由は3つよ。食料備品調達、資金集め、情報収集。…食料備品については説明はいらないわよね。この人数で暮らしていくとなればかなり必要になってくる。今朝の朝食ももう全員分は作れない。」
「あとあの……冷蔵庫?みたいなやつの中身、そんなに少ないの?」
芽衣は綾へと視線を投げかけた。
「あと作れても……20人分だと思う。」
料理系の能力を持つクラスメイトが手を挙げて答えた。
昨日の夕食を作った時から、皆から絶賛されて無事料理担当へと就任ていた。
「20人……あと5人分足りないのか。」
「かなり節約しながら作って20人分よ。ギリギリ足りないの。」
「食料と備品のことはわかったよ。資金集めも理解してる。あとは……」
「何の情報を集めるか、だよな」
「珍しく頭回ってるじゃん、翔太」
「うるせぇ。どこかの無能でもない限りわかるだろ」
翔太の嘲笑を含んだ視線は、やはり悠へと向けられていた。「やめろ」と雅人は言うが、翔太に反省の色はない。
「……。木山君の言う通り。けど今回集める情報は多くて3つまでにしましょう。」
「なんでなの?」
「多分……だけど。」
拓也は話に入って話し出した。
「食料の件からだけど、食料は5人分足りない……だからその5人を王都へ向かわせる事になる。その5人で、食料調達、資金集め、情報収集全てこなすのは限界があるかもしれない。それに不測の事態も。」
「だから、情報は多くて3つ。情報は最悪また別の日でいいから。……じゃないでしょうか。」
「その通りよ。」
「まじで……すごいね影山君って……。」
賞賛の声と視線が拓也へ集中する。
拓也に視線が行くと言うことは、その隣に座る悠の姿も確認される。
賞賛とは程遠い視線が悠に少しの間だけ向けられる。
(まぁ、予想はしてたよ)
「という事で、振り分けは私がしたわ。王都へ向かう組は……。」
綾は、そう言ってポケットから紙切れを取り出す。
その紙を見ながら、1人ずつ呼んでいく。
「佐久間君、小春、影山君、雨宮君。それに私よ。ごめんだけどこの5人は朝食は抜きよ。」
「朝食は抜き」という言葉に、小春が膝から崩れ落ちた。
「ちょっと大丈夫!?」
慌てた様子で芽衣は小春に駆け寄る。
小春は小声で「ごはん……ごはん…。」と呟いていた。
申し訳なさそうに目を伏せる綾。
だが、またもや悠の耳に声が聞こえた。
「なんであいつ……?」
「能力なしで、何かできるの?」
まぁ、当然の反応であった。
能力がないだけで、ここまでなるとは……。
みんなの前で言った時、想像はしていたが軽く超えてきた。
「ここに残る人達は、もしもの事態に備えておいて。まだ周辺の安全が確保された訳じゃないわ。男子達よろしく頼むわよ」
男子の士気はうなぎ登りだった。
「それと…木山君。余裕があれば、周辺の情報も欲しいわ。少しだけでいいから探索をお願い。」
「っしゃ!!やってやるぜ!!探索とか、俺一人で十ぶ……「必ず、誰かと一緒に行動して。何も分からない状態で、あまり自分の力を過信しないように。」…………。ッチ、わぁったよ」
翔太の言葉を遮るように、綾は冷徹に言い放った。
「それじゃあ王都組は準備が整い次第、出発しましょうか。」




