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属性は陰でした。  作者: はる


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第12話 危機は止まず


短い休息を終え、

悠達は再びダンジョンの奥へ進んでいた。


先程まで響いていた戦闘音が、嘘のように静まり返った。


聞こえるのは、

靴音と、

どこかで滴る水音だけが響いていた。


「……また、静かになっちゃったね」


小春は小さく呟く。

その時。


ーーーーカツ。


「……?」


足音が変わった。


足元を覗く。

洞窟特有の岩肌じゃない。

加工された石材だ。


つまり、ここは遺跡で間違いない。


「……雰囲気が変わったね」


「遺跡……ぽくはなってきたわね。けどおかしい。」


綾は顎に指を添える。


「ここに来て一回も他の冒険者と出会ってない……ダンジョンならもう少し、居ていいと思うのに……。」


綾の言う通りであった。

この世界のダンジョンは、レベル上げができる場所。というのが常識。


人の出入りもない、この場所は通常のダンジョンとは違う。

その違和感は、この場の全員が感じ取っていた。



進む事に加工された石材が増えて行く。

石材だけじゃない。


朽ちた石柱。

そこに刻まれた古代文字。

壁に刻まれた、精巧な紋様。



「また、開けた場所に出るよ……」


小春の声に皆は警戒態勢へ。

1歩ずつ進む。


足がその空間に入り、空気が変わった。


「……うわ……すっげ……。」


「すごい……」


ドーム型の空洞程では無い。

だが奥行は比にならない。


不気味な雰囲気とは一変。

神秘的な空間が広がっていた。


規則的に並ぶ、揺らめく松明が淡い光を放っている。

その燈が、その奥を照らしていた。


「……階段!あの奥っ」


拓也が指さす、遺跡の奥。

うっすらと階段のようなものが見える……。


「あそこ登れば、次の層行けるんじゃねぇか!」


その階段を見つけた瞬間。

A班の1人が声を上げる。



「ッ!ちょっとっ!!」


静止の声も聞かずに、興奮したように駆け出した。

その瞬間。


ーーーーゴゥンッ!!!


低く、重い音が遺跡全体に響いた。


同時に石床に黒い線が走る。

まるで血管だ。


血管のように脈打つちながら、紋様が広がる。


「……ッ!足元!!」


石床が割れ、そこから伸びる骨。


「ひ……ッ……!」


誰かが震えた声を漏らし。

空気が変わった。


肺の奥に冷たい泥を流し込まれるような、不快感。

悠は無意識に剣へ手をかける。


その時。


ーーーーズルッ


何かを引きずるように、階段を降りてくる存在。

視線が奥へ集中する。


音がゆっくり近づいて来る。


松明の明かりに照らされて''何か''が姿を現す。


「ッ!!アンデット……ッ!!」


「いやっ……違う!!あれは死んでいない!」


拓也は鑑定眼で、その何かを食い入るように見ている。


全身を古びた鎧で覆った、人型。

片腕は肘から先を欠損。

その部分からは赤黒い肉が露出している。


だがその異形さは、オマケに過ぎない。

反対……右手に持つ、禍々しく錆び付いた剣を引きずっている。

その剣だ。錆び付いているはずなのに、切れ味が異様。石床を豆腐のように切り裂いて、歩み寄ってくる。


「……戻れッ!!!」


雅人の怒号が響く。

周囲には、既に何体もの骸兵が出現していた。


「……骸剣卿ッ!?レベルが……40ッ!?」


「はぁ!?」


「……あれは今は絶対に勝てないッ!!引くわーーーーッ!」


綾のその判断は遅かった。

既に入口を塞ぐように、骸兵が蔓延っている。


「……あれはアンデットじゃない。まだ生きた傭兵です!……なんだ……?深淵の…亡骸なきがら?……なんだそれ……ッ!」


パニックになっている拓也を後ろに、綾は声を上げた。


「全員後退!!後ろの骸骨だけでも倒して、離脱するわ!!」


「……ッ!!」


だがその声に1人だけ応えない。

さっき飛び出したA班の1人。


腰を抜かして、その場で藻掻いていた。


「くそっ!!」


悠は気がつくと飛び出していた。


「雨宮君ッ!!」


「……ッ」


雫が顔を強ばらせる。

綾の声も無視。


「……ぁッ助け…………ッ!」


男子生徒は手を伸ばす。

応えるように伸ばすその腕を掴んで……………はぇ?



掴んだ。


「………ぇ?」





肘から先の、手だけを。



「ぁああああああああああッ!!!!!」


遅れて、男子生徒の絶叫が響き渡る。

絶望に染まった顔から、構わず液体を流す。


斬られた。

至近距離ですら目視できない、剣速。


嫌な音を立てながら、血液を垂れ流す。

ぐじゃり……っ


血と塵が混じり合い、男子生徒が動く度に不快な音を響かせる。


「…ぅ……でぇがぁぁぁぁぁ……」


「………悠!動いて!」


雫の掛け声。

瞬時に後ろへ後退ッ


ーーーーーッ!!


男子生徒が伸ばしていた腕が、瞬時に輪切りにされる。


「ーーーーぁ」


声すらもう出ない。

ピクッピクッと、痙攣を起こす。

意識を保てているのが奇跡みたいに。


「雨宮君!戻りなさい!!!」


「ッ!!クソッ!!!」


「ぁぁッ、やめでぇ……ッ!おいて……ッ!いかッ」


声がする。

だが振り返れない。

この現実を見たくないからだ。


「ぁぁぁあッ!!や゛めてぐだざぃッ!!や゛めッ!…………ぃぁ……」


声が途絶える。

遅れて、壁を切り裂いた音。

遺跡が震える。


「………………」


周囲には骸兵がいる。


だと言うのに、誰も声を荒らげない。

誰も動けない。



呼吸すら忘れたように、その場に立ち尽くす。




この世界に来て、初めてーーーーー。


クラスメイトが死んだ。













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