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属性は陰でした。  作者: はる


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第11話 ダンジョン


翌朝。


中庭では、少し騒がしい音がする。

いつもより早い朝。

季節は本格的に冬へも移行し、朝は薄着で出歩けない程である。


吐く息が白かった。


「B班!準備行けそう?」


「ああ、問題ない。あとは最終確認だけだ」


雅人の声は、寒さの中でも変わらない態度であった。

役職と班の割振りが完了し、数日が経った。


今日は、前々から準備をしていたダンジョン攻略に向かう日だ。


初めてのダンジョン攻略。


古代の人間が作ったとされる、「遺跡」の1つ。

中は何層にも分かれており、現段階で20層まであると判明している。


現在は魔物の巣窟となっているダンジョンは、冒険者の間でレベル上げ場と認識されている。


と言うのが、綾達が持ち帰ってきた情報だ。


不測の事態を考慮し本来、一班で行う依頼であったが、今回は2班での攻略。


まずは浅い層1~5層までの間で鉱石、魔石などの資源を回収しつつ、班全体の平均レベルをあげることを目的としていた。


残ったものは、拠点護衛及び作業更新。


悠は支援班に所属し、戦闘班Bへ割り振られる。


「……準備できた?」


小走りで駆け寄ってきた雫。

覗き込むように悠を見た。


「うん、出来てるよ。雫も?」


「……ん。完璧」


雫も悠と同じく、斬り込み班としてB班に割り振られていた。


「それじゃあ、出発しようか」


中庭に響いた綾の声。

まずはギルドに向かい、依頼を受注する所からである。








王都を抜け、移動すること1時間と少し。


A.B班は、依頼指定場所のダンジョンの入口まで到着していた。


崖沿いに開いた、巨大な裂け目。


その奥からは少し冷たい空気が流れ出している。


「……ここか…。」


悠は目を細めた。



一行は中へ踏み入れた。


「………。」


遺跡……と聞いてあった以上、想像するのは人工的に作られた石造りや、古代文字だ。


だが、その相談とはかけ離れたものだった。


「……なんだここ?」


遺跡ではない。


洞窟と言うのが、1番当てはまる場所だ。


空気は湿っている。

岩肌から滴る水音が、薄暗い通路に反響する。


「暗くてよく見えない……」


小春が小さく呟く。

外の光は、既に入口までにしか届いていない。

奥に広がるのは闇1色。


ただの自然な洞窟だ。


「ひとまず……先へ進もう」


息を呑む綾。


「前衛、先に行くぞ」


雅人が剣を引き抜く。

金属音が静かに響いた。






「何も出ない……。ほんとにダンジョンなの?ここ。」


少し気の抜けた声で言う小春。

一行が歩き出して、数十分。

魔物とは一切遭遇していない。

皆の緊張感も少しづつ抜けてきていた。


「…あってるっぽいね。……一応ダンジョンだよ」


拓也は目に淡い光を宿らせ、周囲を見渡す。

鑑定眼でダンジョンと表示されるなら、ダンジョンで間違いないはずだ。


「開けた場所に出るわよ。みんな、もう一度気を引き締めて。」


綾の声と共に、薄暗くジメジメとした洞窟を抜ける。

先程までの光景とはまた違う光景が広がっていた。


ドーム型の空洞。、

岩で形成された広い空間だ。

先程の湿気も、無造作に伸びるツタすらない。

見上げるほど大きな空ーーーーー。


「みんな、あれッ!!!」


悠は上を向いたまま声をあげる。


「……は?」


「なんだ……あのでかい……骨。……龍……?」


全員が悠の声に、上を見る。


龍だ。


黒く朽ちた骨。

人を丸呑みに出来る程の巨大な頭部。

だが見えているのは上半身だけ。


だと言うのに、妙に威圧感があった。


自分達もこの先、あのような化け物を相手にする時が来ると。そう思ってしまう。


「……あんなのが来たら……ひとたまりもないよ……」


1人が呟く。


ーーーーガサッ


音だ。

呟く声に呼応するように、その音が激しくなる。

全員の視線が動く。


「あそこっ……!壁の穴の中!」


無数の赤い瞳が揺れていた。


「……ここはっ!魔物の巣だよ!……それにあいつらは…ウォルフ・ラビット!レベル差はそんなにないけど、速さと攻撃力の数値が異常だッ!」


「…………来る!」


次の瞬間、一斉に壁から飛び出してくる。


灰色の毛並みに鋭い牙。

兎みたいに長い耳。

だが全員を狙うその目だけは、獣の目をしていた。


「全員迎撃用意!!」


綾が叫び、陣形を取る。


地面を蹴る音が響き続ける。

異常な速度。

発達した後肢が、踏み込む。

跳躍とも取れるその1歩はとてつもなく大きい。



小春は後方に移動。煌矢を準備し出す。


「「おらぁあああっ!!」」


前衛が剣を振り抜く。

だが、それを横へ跳躍し回避する。


「なぁッ!!」


「フェイントを入れろ!相手が回避した先での攻撃をメインにするんだ!!」


雅人は叫びながら、目の前にきたウォルフ・ラビットを迎撃する。


炎を纏った剣を雑に振り下ろす。

ウォルフ・ラビットはそれを察知し、左へ避けた。


だが雅人の踏み込みは、左へ傾いている。

力任せに剣の軌道を左へ持っていく。


そのままウォルフ・ラビットの首を断ち切った。


「中衛!前衛に支援魔法を!」


「《加速》!」

「《強化》!」


「うぉ!やりやすい!!」


「油断するな!」


雅人の視界の端を、影が横切る。

遅れて風圧。


「右っ!!」


瞬時に叩き落とす。

そのまま前へ!


飛んでくるウォルフ・ラビットの蹴り。

金属と金属が弾けるような甲高い音。


「……ッ!……散るな!!」


遅かった。

後衛までの侵入を許す。


壁。

天井。

岩場。


ウォルフ・ラビットは縦横無尽に駆け回る。


「……ッ!悠君!前っ!」


「ッ!!!」


拓也の声がきこえ、咄嗟に剣で前方を防御。

間一髪、鋭いニ本の牙が剣へと噛み付く。


嫌な音を立てながら、瞳が悠を凝視する。


「離すなよ……このッ!野うさぎがっ!!」


岩場へウォルフ・ラビット事叩きつける。

ぐしゃり。と剣づてに伝わる嫌な感触が、背筋をなぞる。


血を撒き散らしながら、足をピクピクさせなが動かなくなった。


「……ッくそっ……僕は何も……ッ!」


力がない。

ただの傍観者になってしまっている。


乱戦。

中・後衛で輝く支援魔法。

飛び交う光の矢。


だがその間に入り込まれ、陣形がむちゃくちゃだ。


……なにか。なにかなにかなにかッ!!


だがここで勝手に動けば、さらに崩れる。


「……数がっ多すぎるッ!!」


綾が叫んだ。


「いや、もう終わりみたいだ!」


岩壁の穴からはもう出てきていない。

全員の士気が上がる。


「ふッ!」


影移動。そこからの闇討ち。

雫は静かに。だけれど大胆に行動する。


「ッらぁ!!」


悠も負けじと、能力は使えないがシンプルな肉体だけで勝負する。

一撃ではトドメをさせない。


ーーーー音ッ!


振り向き、剣を構える。


「…………ぁッ!!!」


後方から飛んでくる、蹴りが悠の剣を弾き飛ばした。


顔面へ迫る追撃の牙ッ!

やられーーー!


ーーーートスッ。


視界の端を手と銀色が横切る。

口を開けたその中央を突き刺す短剣。


ウォルフ・ラビットは一瞬だけ痙攣し、そのまま動かなくなった。


「……悠。大丈夫?」


雫は静かに短剣を振り払う。

血肉を撒き散らしながら、飛んでいく死体。


「大丈夫……。ありがとう助かった。」


「……ん」


纏う雰囲気が雫の周りだけ、落ち着いていた。

この乱戦で背後から、的確に敵を殺して行く。


いつの間にか、足音は止んでいた。

土の上には、黒い血を流したウォルフ・ラビットの死体が幾つも転がっている。


「終わったか……。」


雅人は周囲を見渡す。

息を切らしながら、額に冷や汗をかいていた。


たった数分。

それなのに、全員の体力はかなりも消耗していた。

このまま前進か、後退か……。



「少しだけこの場所で、休憩しましょう」


委員長が選んだのは前進。

だが皆が否定することは無かった。


初めての戦闘に乱戦。

その中で、ほとんど負傷者がいないのは少しづつこの世界での経験が生きてきていたからであろう。


寝そべったり壁へ腰掛けたりして休んでいる全員を見下ろすように、骸の龍はただ静かに見てるようであった。








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