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メンタルつよつよ令嬢ハルカはガリガリ王子をふくふくに育てたい!  作者: ふくまる
第5章:ふくふくの実をつけましょう

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第88話:はじめての恋バナ

ご愛読いただきありがとうございます!

 久しぶりの冒険者活動から数日。

 私たちが参加したハーピー討伐の話は、いつの間にか学院中へ広がっていた。


「ほら、あの方よ」

「え? ハーピーの群れをアーサー殿下とご一緒に討伐なさったっていう……」

「意外と普通のご令嬢なんですのね」


 ここのところ、学院のあちこちでこんな会話が聞こえてくる。

 好奇の視線まで向けられるようになり、さすがに少し落ち着かない。


 何だ、コレ。


 とりあえずハーピー討伐が原因なら、同じ立場のレオにも状況を聞いてみよう。


「ねえ、レオの周囲もこんな感じなの?」

「ん?あ〜俺はアーサーと一緒にいることが多いからな。最初はよく二人で囲まれてたんだけど、今は王族に無礼があってはいけないってんで、遠巻きにされてる感じだな」


 レオ曰く、実害はないので放っているらしい。ただ、前にも増してご令嬢方からのお誘いが増え、断りの手紙を書くのに苦労しているそうだ。何ソレ、自慢?


「それより、お嬢の方は大丈夫か?」


 レオが心配そうに瞳を揺らす。


「大丈夫。今のところ噂話程度だから……あ〜でも一人だけ困った人がいたな」

「どんなやつ?」

「魔導士コースの教授って言ってたよ。転科しないかって、熱心に勧められた」


 昨日、突然魔導士コースの教授に呼び止められ、転科しないかと熱心に勧められたことを話した。


「あ!あと、ごく稀に『アーサーを紹介しろ』とか言ってくる子達もいるかな。この前なんて、一人になったところを待ち伏せされて、暫く付き纏われたんだよね」


「それは厄介だな。変な注目を浴びてる今だけのことだとは思うけど……。そうだな、暫くは休日も護衛した方が良さそうだな」

「え?忙しいのに悪いよ!それに、今週末はエマたちと街に行く約束してるし」

「だったら余計だ。女子だけで出歩くより安心だろ」


 あれよあれよと言うまに、週末の同行をゴリ押しされた。エマ達に何て言おう。て言うか、レオが一緒の方が目立つ気がするんだけどな……。


 そんな心配をよそに、翌日、エマ達に話の流れと共にレオの同行許可を取ると、意外なほどあっさりとOKが出た。荷物持ち兼護衛なんて大歓迎——しかもイケメンなら文句なし、と三人とも大乗り気だった。


 ……何だ、コレ。


◇◇◇


 そして約束の週末。


 私はタウンハウスまで迎えに来てくれたレオと共に、馬車で『フロストリア』へと向かった。店の前には、先に到着していた三人が、街歩き用の控えめな姿で待っていた。


 エマは落ち着いた紺のワンピースに絹の日傘、シャルは淡い緑のドレスに草花の刺繍が入ったカーディガンを羽織っている。マリアは丁寧に仕立てられたシンプルなブラウスとスカート姿だった。みんなとてもよく似合っている。


「じゃあ、俺は少し離れてついていくから」


 そう言って、レオはエマたちに視線だけで挨拶をすると、私たちから距離をとった。私はそんなレオにお礼を述べ、エマ達と合流して店に入る。最初は『フロストリア』王都店の視察を兼ねた紹介からだ。


 店内に足を踏み入れると、高級ライン、普段使い用と分けられ、それぞれの棚に美しく並べられたボトルや石鹸が目に入った。


「ハルカ様、お待ちしておりました。お嬢様方も、ようこそお越しくださいました」


 出迎えてくれた店長が、私の姿を認めて笑顔で寄ってきたので挨拶を交わす。他の店員にエマ達の案内を頼むと、その間に私は店長から売れ筋や新商品の反応を聞き、来季の商品について少し意見を交わした。


 「問題なさそうね」


 一通り話し合いを終え、エマたちの方へ向かった。すると、ちょうど新商品を手に、店員から説明を聞いているところだった。


 「こちらのパックは、高い保湿効果に加え、肌のくすみやごわつきを改善し、美白にも効果があるんですよ」


 その説明を聞いた瞬間、エマの瞳がきらりと輝く。


「買いますわ!」


「お買い上げありがとうございます。こちらの商品は密封されておりますので、開封後はすぐにご利用ください——」


 そんな注意事項を聞きつつ、会計をすませる。

 シャルとマリアも思い思いの品を選び、購入してくれた。私は感謝の気持ちを込めてサンプル品をいくつか手渡す。気がつくと、皆の手が商品の入った箱でいっぱいだった。


「素敵なお店ね。接客も丁寧だし」


 エマ達も気に入ってくれたようだ。


 話しながら店を出ると、少し離れた木陰にレオが立っているのが見えた。目が合うと、側に寄ってきてスッと荷物に手を伸ばす。


「お嬢様方、よろしければお持ちしますよ」


 ……あれ?

 レオって、こんなに紳士だったっけ?


 私が戸惑っている間にも、エマはためらいなく荷物をレオに預ける。シャルとマリアも遠慮がちにそれに倣う。レオは三人の荷物を受け取ると、再び少し離れた場所へ下がった。


 次はマリアオススメの雑貨店に移動する。

 雑貨店を出た後は、目に入ったお店にその都度入る。友人たちとおしゃべりしながらするウインドウショッピングは、時間を忘れるほど楽しかった。


「ふう、そろそろ疲れてきましたし、お茶にしませんこと」


 エマの一声で、近くにあったカフェに入ることが決まった。


「少し小腹も減ってきたから、私はクレープにしようかな」

「私は、こちらのケーキセットにしますわ」


 それぞれ思い思いに注文を済ます。ふと顔を上げると、離れた席でレオがサンドイッチを注文しているのが見えた。良かった、レオもちゃんと休憩してくれてる。

 


「それで、ハルカ」


 運ばれてきたケーキを一口食べたところで、エマが声を低くした。

 そのままちらりとレオの座る席へと視線を向ける。


「あなた、本当にレオナルド様とはお付き合いしていないの?」

「え?」


 唐突な質問に、私は思わず聞き返した。


「だって、休日の買い物にまで付き添って下さってるでしょ?特別な関係でもない限り、そこまでしてくださる殿方なんて稀よ」

「いや、だからレオはそんなんじゃないよ。護衛だよ。最近変な注目のされ方しちゃってるから、心配して付いてきてくれただけだよ」


 そう答えると、今度はシャルが身を乗り出した。


「では、アーサー殿下とはいかがなんでしょう?デビュタントでのファーストダンスとか、学院で遭遇した時の反応とか、すごく仲良しに見えるのですが」

「それは……幼馴染だし、私にとっては家族みたいなものなんだよ」


「家族、ねえ……」


 エマが納得いかないような顔で私を見る。

 けれど私はそんな視線にも気づかず、目の前の紅茶を一口飲んだ。


 すると、シャルが頬を染めながら、もじもじと口を開いた。


「あの、私、実は婚約者がいまして」

「え、そうなの?」


「父が懇意にしている子爵家の嫡男で、幼い頃から決まっていて……次の夏休みに、顔合わせをすることになっているんです」


「わあ、そうだったんだ!」

「初めてのことなので、今から緊張してしまって……」


 シャルが恥ずかしそうに、でも嬉しそうにそう呟いた。


 今度はその様子を見ていたマリアが控えめに口を開く。


「私は平民なので婚約とかはまだ先の話ですけど……でも、商家の娘なので、いずれは家のために誰かと一緒になるんだろうな、とは思っています」


「私は」とエマが続けた。「父からは、先に商会を継ぐ準備をしろって言われてますの。でも、お見合い自体は何人かとしましたわよ。卒業までにはお相手を絞りたいと思っていますわ」


 三人の話を聞きながら、私は少し不思議な気持ちになった。


 婚約。

 結婚。

 顔合わせ。


 同級生の口からそういう言葉が語られることに、衝撃を受けた。

 そっか、私もそういう年頃になったんだ、としみじみと実感する。


「ハルカは?」


 エマが、私の方に視線を戻した。


「辺境伯を継ぎたいから、婿を貰おうと思ってるんだけど、まだ具体的には決まってなくて……」


 私以外の三人が顔を見合わせる。


「お見合いの打診とか、釣書とか、お父様から何かお話はありませんの?」

「うん。特には……」


 微妙な空気が流れた。

 何か私がすごくモテない子みたいに思われてる気がする……。


 私は、何となく気まずくなって、目の前のお皿に残っていたクレープを次々と口に運んだ。


「まあ、まだ学院も始まったばかりですし!ハルカなら、きっとこれからお話もたくさん来ますよ」


 シャルが明るい声で気遣ってくれる。

 そうか、普通はこの年頃なら正式な話の一つや二つ、話が出ているものなんだ。


「一度お父様にお尋ねになっては?おそらく、ハルカの耳に入ってないだけで、色々お話が届いてると思うわよ」


 エマが珍しく真面目な顔をした。


「家柄、魔力、経営手腕——ハルカの価値は見る人が見れば分かることだわ。男なら私が婿に欲しいくらいだもの」


 ……いやいや、それはさすがに言い過ぎでしょ。


「ありがと、エマ」


 エマの優しいフォローが身に染みる。


「私だって、ハルカが男なら結婚したいです!」


 マリアとシャルが揃って頷く。


「じゃあ、私が正妻で、二人は側室ね」


 エマが楽しそうにそう言い放つ。

 その言葉で、場の空気がいっそう和んだ。


 その後は、理想の夫や結婚生活の話から、学生らしく課題や試験対策のことまで、話題は次々と広がり、話が尽きることはなかった。

 私たちは、いつもよりたくさんおしゃべりをし、たくさん笑った。


 窓の外では、茜色に染まった大通りをたくさんの人々が行き交っている。

 そろそろ帰る時間だ。


「絶対、また来ようね!」


 私がそう言うと、三人とも嬉しそうに頷いてくれた。


 学院へ入学して三ヶ月。

 こうして友達と街を歩き、おしゃべりをして笑い合う。

 そんな何気ない休日が、とても楽しくて尊いものだと、知ることができた一日だった。

問題:この女子トーク、レオは聞いていたと思いますか?


① 聞こえないように気を遣っていた(紳士)

② しっかり聞いていて内心楽しんでいた(笑)

③ 断片的には聞こえていたけれど、特に気にしていなかった


さて、どれでしょう?

正解は……皆さまのご想像にお任せします╰(*´︶`*)╯−☆


*お知らせ*

ストックが尽きてきたので、今週から投稿ペースを月水の週二回に戻します。

またストックが溜まりましたら週三ペースに戻しますので、しばらくの間はご寛恕くださいm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
A:多分③の『聞くつもりはないけど 聞こえちゃった』かと… レオ君は「お嬢が誰を選んでも オレ(達)は家族だし オレはお嬢を護るだけだ」 …って スタンスだろうなと推測。 …ハルカちゃん これで少しは…
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