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メンタルつよつよ令嬢ハルカはガリガリ王子をふくふくに育てたい!  作者: ふくまる
第4章:ふくふくの花を咲かせましょう 

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第67話:見え始めた繋がり

 『拉致の痕跡が発見された』

 ——その報せが届いてからというもの、屋敷の空気は張り詰めたままだった。


 治安維持隊、騎士団、冒険者ギルド、商業ギルド——。

 あらゆる方面へ協力要請が出され、捜索の手は日ごとに広がっている。


 お祖父様は引き続き現地で捜索の指揮を執り、お母様は治安維持隊を率いて周辺地域を捜索。

 セバスとルナもまた、諜報部隊を動かして情報収集にあたりながら、各種ギルドと連携して魔道具に関する情報を集めていた。


 それでも、決定的な手掛かりは、まだ何ひとつ掴めていなかった。


 そんな中、私は自室に籠もり、机いっぱいに広げた資料へ視線を落としていた。


 探索日誌。

 地図。

 周辺街道の情報。

 魔道具商の取引記録。


 少しでも繋がるものはないかと、頭を回し続ける。


「……転移魔法を使える相手、か」


 ぽつりと呟く。


 転移魔法による直接移動は、国によって厳しく制限されている。

 しかも、人を伴う転移となれば、転移陣の設置はほぼ必須だ。


 領を跨ぐ転移陣ともなれば、国の許可も必要になる。

 加えて、設置には膨大な魔力と費用がかかると、以前聞いたことがあった。


 ——となると、ヒロはまだオンタリオ領内にいる可能性が高い。


 それに、転移陣を仕掛けるには、正確な日程と場所を把握していなければ不可能だ。


 つまり——探索の日程や野営地の位置が、事前に漏れていた可能性が高い。


「……どこから情報が漏れたんだろう」


 偶然ではない。


 誰かが計画的に情報を集め、ヒロを狙った。



 

「お嬢様」


 静かなノックの後、扉を開けて入ってきたのはルナだった。

 その後ろには、セバスの姿もある。


 二人とも、いつになく表情が硬い。


 考え事に没頭していたせいで、私はノックの音にも気づいていなかった。

 突然の呼びかけに、びくりと肩が跳ねる。


「何かわかったの?」


 問いかけると、ルナとセバスは一瞬だけ視線を交わした。


 そしてセバスが静かに前へ進み出て、私の前へ数通の手紙を置いた。


「……ヒロの部屋を確認したところ、いくつか気になる手紙が見つかりました」


 静かに口を開いたのはセバスだった。


「送り主の多くが、クラウゼン家関係者のものです」


「やっぱり……」


 胸の奥がざわつく。


「さらに調査を進めた結果、クラウゼン子爵家とソルティス侯爵家の間で、定期的な書状のやり取りが行われていたことも判明しております」


「ソルティス侯爵……」


 その名前に、背筋へ冷たいものが走った。


「たしか、弾劾されて発言力を落としていたはずじゃ……?」


「表向きは、です」


 セバスが淡々と続ける。


「侯爵家は、現在も莫大な資産を保有しております。その財力を背景に、各貴族への融資を通じて、再び影響力を強めつつあるようです」


「そんな……」


「既に複数の中小貴族が、ソルティス侯爵家へ逆らえない状況にあるとの情報もございます」


 ——貸金による支配。


 金は、人を縛る。


 そして貴族社会では、それがそのまま“力”になる。


「それと……もう一点」


 今度はルナが口を開き、私の前へ一通の手紙を差し出した。


「ヒロが出発する前日、新たな書状が届いていたそうです」


「誰から?」


「クラウゼン子爵家のご令嬢——アデル様です」


「アデル……?」


 聞き覚えのない名前だった。


 これまで確認されていたのは、『オスカー』と『ヴァルター』からの手紙だったはずだ。


 その時、後ろから声がかかった。


「オスカー殿の妹だ」


 振り返ると、いつの間にか部屋へ入ってきていたセシルとアーサーが立っていた。


「セシル」


「話が聞こえた」


 セシルは腕を組みながら続ける。


「アデル・クラウゼン。俺と同い年の令嬢だ。学院では顔見知りだった。専攻が違ったから親しいわけじゃないが、何度か話したことはある」


「どんな人?」


「物静かなタイプだな。兄のオスカー殿ほど社交の場には出てこない」


「……その人が、ヒロに何の用だったんだろう」


 偶然だろうか。


 ——いや。


 今は、“偶然”で片付けるべきじゃない。


 私は机の上へ視線を落とした。


 ソルティス侯爵。

 クラウゼン子爵家。

 ヒロへ届いていた数々の手紙。

 そして、失踪前日に届いた新たな書状。


 点と点が、少しずつ繋がり始めている。


「……クラウゼン家が、何らかの形で関わっている可能性がある」


 静かに呟くと、部屋の空気がさらに張り詰めた。


 アーサーが不安そうにこちらを見る。


「ハルカ……」


「もちろん、まだ断定はできないよ。でも、今ある情報から考えると、無視はできない」


 私はゆっくりと顔を上げた。


「……アデル様に会えないかな?」


「学院の繋がりを使えば、話を通すくらいなら可能だと思う」


「オスカー様にも会えるかな?」


「不可能ではないが……」


 セシルが慎重に言葉を選ぶ。


「兄上にも協力を仰ごう——その方が、秘密裏に接触できると思う」


 アーサーが力強く言い切った。


「じゃあ、お願いしてもいい?アーサー」

「私、直接会って、話を聞きたい」


 書状のやり取り。

 ヒロとの関係。

 ソルティス侯爵との繋がり。


 確かめたいことは、山ほどある。


 私はまっすぐ二人を見た。


「クラウゼン兄妹に会いに行こう」


 その言葉を合図にするように、部屋の空気が静かに動き始めた。

次回、クラウゼン兄妹に会いに王都へ行きます。

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