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メンタルつよつよ令嬢ハルカはガリガリ王子をふくふくに育てたい!  作者: ふくまる
第4章:ふくふくの花を咲かせましょう 

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第62話:仲間

今日もありがとうございます╰(*´︶`*)╯♡

 ヒロとの話を終え、引きずりそうになる気持ちを立て直し、私は商業ギルドへと向かった。


 この一週間は、お祖父様の直接指導が受けられる——そう聞いてから、午後の訓練時間を確保するため、プロジェクトの予定を必死に調整していた。その結果、明日の午後に予定していたパッケージの打ち合わせを、今日の午前中へと変更してもらっていたのだ。


打ち合わせを終えると、その足で急いで屋敷へ戻る。

昼食を済ませ、着替えを終えると、休む間もなく訓練場へ向かった。


「あ! お祖父様!!」


廊下の先に、同じく訓練場へ向かう背中を見つけ、駆け寄る。


「今日から訓練を見ていただけるのですよね? よろしくお願いします!」


隣に並ぶと、お祖父様は軽く笑った。


「化粧品の仕事は順調らしいな。先日会ったベルンハルトが浮かれておったぞ」


「……順調といえば順調ですが、彼の場合は、奥様方からの問い合わせ攻撃から解放されたことのほうが大きいと思いますよ」


「はは、なるほどな」


短く笑ったあと、ふとお祖父様の視線が鋭くなる。


「それにしても、ハルカとアーサーの訓練に立ち会うのは久しぶりじゃな。どれほど腕を上げたか、楽しみにしておるぞ」


その一言に、自然と背筋が伸びた。


やがて訓練場にたどり着くと、ソワソワした様子のアーサーとセシルが、すでに準備万端で待ち構えていた。


「「ラオウ様、本日はご指導のほどよろしくお願いいたします!」」


勢いよく頭を下げる二人に、お祖父様は一度だけ頷いた。


「よし、まずは走り込みと素振りから始めるか」


簡潔な号令とともに始まった訓練は、予想通り厳しかった。


◇◇◇


「大分体も温まったな。では、今の実力を見せてもらおうか」


お祖父様が二人へと目を向ける。


「そこの模造剣で打ち合ってみよ」


「「はい!」」


揃って剣を構え、向き合う。私は邪魔にならないよう、少し距離を取った。


「——始め」


短い合図と同時に、空気が弾ける。


一合、二合——三合目で、アーサーの剣が弾き飛ばされた。


「もう一度」


剣を拾い、息を整えて再び構える。


一合、二合。今度は少し長く続く——そう思った次の瞬間、再び剣が宙を舞った。


肩で息をするアーサーに対し、セシルは涼しい顔のまま。

技術も体力も、その差は歴然だった。


「魔法も使え」


不意に、お祖父様の声が落ちる。


「え?」


「実戦では選り好みなどしていられん。使えるものはすべて使え」


その一言に、私は前へ出た。


「では、遠慮なく」


「え? ハルカ嬢も?——あ、少し待ってください」


わずかに引くセシルをよそに、足元に「大地の盾」を展開し、掌に炎を灯す。


「行け!」


短い号令。


セシルが即座に構え直す。重心は低く、動きに無駄がない。


踏み込んできた瞬間に合わせ、盾の角度を変えながら炎を放つ。

それを見切り、セシルは横に転がって距離を取る。


「アーサー!」


呼応するように、死角から風を纏った一撃が迫る。


「っ!」


受け止めながら後退するセシル。わずかに対応が遅れた。


「……あっぶな!」


距離を取りながらも、その目は楽しげに細められている。


「息が合ってますね、二人とも」


「ふふ。ずっと一緒に訓練してますから」


アーサーも小さく頷く。


その様子を、お祖父様は腕を組んだまま黙って見ていた。


「連携は悪くない。だが——甘いな」


ぽつりと落ちた一言に、私たちは思わず姿勢を正す。


「相手に立て直す隙を与えるな。間断なく攻撃せよ」


「はい!」


「よし、もう一度だ」


その一声で、打ち合いが再開される。


セシルの剣は速く、重い。風魔法と身体強化が重なり、攻撃はさらに鋭さを増す。

それでも私たちは二人で食らいつき、何度も弾かれながら、少しずつ間合いを詰めていった。


そのたびに、お祖父様の短い指示が飛ぶ。


「遅い」

「踏み込みが浅い」

「アーサー、遠距離魔法も使え!」


言葉は少ないが、一つひとつが鋭く的確だった。



一区切りついたところで、「止め」と声がかかった。

三人で息を整えていると、お祖父様がゆっくりと口を開いた。


「今のところ、二対一でちょうど良さそうだな——セシル」


「はい!」


「お前の剣は速さと重さを兼ね備えている。身体強化の練度も高い。だが——」


 お祖父様は、厳しい視線でセシルを見据える。


「単独での戦いに慣れすぎておる。一対一を前提に動いているな。

 だが、実戦は試合ではない。そのような状況のほうが、むしろ稀だ」


 静かながら、重い指摘だった。


「連携への対処、そして自らが連携に加わる戦い方を覚えろ。

 いずれ部隊を率いる立場になるなら、なおさらだ」


「……はい。肝に銘じます」


「ハルカ」


「はい」


「盾の展開は早くなったな。だが、炎の後に隙が生まれておる。

 同時発動を、もっと滑らかに使いこなせるようになれば——一段上に行ける」


「わかりました」


「アーサー」


 視線が向けられる。


「お前は、連携の中での動きがいい。相手の動きをよく見ている」


 アーサーが、わずかに目を見開いた。


「それは強みだ。だが——剣技はまだまだだな。

 未熟な部分を補うためにも、風魔法による遠距離攻撃との組み合わせを、さらに工夫しろ」


 低く、しかし確かな肯定を含んだ声音。


「焦るな。お前には、お前に合った戦い方がある。それを模索しろ」


「……はい」


 静かに頷くアーサー。


「さて——連携とその対処については、オンタリオ騎士団の訓練でも取り入れておる。ワシらが不在の間、しっかり揉まれてこい」


 一拍置き、お祖父様は楽しげに口角を上げた。


「——そうだな。騎士団の訓練に食らいついていくためにも、この一週間は、身体強化を集中的にやるか」


 そう言って、お祖父様は私たち一人ひとりの顔を順に見渡した。

 その視線は、値踏みするようでいて、どこか楽しげでもある。


「『オンタリオ流体術』を用いた運用法だが……興味はあるか?」


「オンタリオ流体術……ですか!?」


 セシルが驚きの声を上げる。

 それも無理はない。『オンタリオ流体術』は領内でしか知られていない、いわば独自の武術体系だ。特に王都では、剣を主とする騎士にとって体術は野蛮なものと見なされ、剣術よりも下に見られているという。


「ああ。『オンタリオ流体術』は、魔力が少なくても扱える身体強化法を基礎として発達した武術じゃ。

 だが——効率的な魔力運用という点では、魔力持ちにとっても極めて有効な運用法でもある」


「我々が普段行っている身体強化とは、どう違うのですか?」


「そうじゃな。身体に魔力を纏わせ、筋力・速度・反射を底上げする——その点は同じじゃ。

 じゃが、この『オンタリオ流体術』には、武器を身体の延長として扱う『融合術』という技術がある」


 お祖父様は、手にした木剣を軽く持ち上げてみせた。


「要は——剣そのものも、身体強化と同じように強化できる、ということじゃ」


「「そのようなことが可能なのですか!?」」


 セシルとアーサーの瞳が、一気に熱を帯びる。


「ああ。現にワシはそうしておる」


「「おおっ!」」


 その一言に、二人の目が見違えるほど輝き出した。

 今すぐにでも教えてほしいと言わんばかりに、じりじりとお祖父様へとにじり寄っていく。


「——ただし」


 熱を帯びた空気を、切るようにお祖父様が言葉を挟む。


 そのまま、視線がゆっくりとこちらへ向けられた。


「魔術による後方支援を主とするハルカは、『融合術』よりも、効率的な魔力運用と身体強化を優先した方がよいだろう。それで構わんな?」


「はい!」


「よし。五分休憩の後、始めるぞ」


◇◇◇


 その日、私たちは新たに教わった身体強化の運用を、ひたすら反復した。

 すでに身についた強化の範囲を拡張するのは容易ではなく、特にアーサーは、『紅蓮』発動時に風魔法を剣へ纏わせる感覚が抜けず、それを身体の延長として扱うことに戸惑っていた。


 セシルは、そもそもの魔力量がアーサーや私ほど多くないため回復に時間がかかる。範囲の拡張自体はできても、それを維持し続けることに苦戦している様子だった。


 私は二人ほど新しいことに挑戦しているわけではなかったため、比較的対応はできていたが、無駄な魔力消費が多いと指摘され、纏う魔力量の微調整に加え、身体強化を維持したまま魔法を同時発動させる——その操作を滑らかに行うという課題を与えられた。


 翌日も魔力運用を重点的に反復し、それぞれ技量の底上げを図る。

 慣れない魔力の流し方に最初は戸惑いながらも、アーサーたちは次第にその感覚を掴み始めていった。


 私もまた、これまでよりはるかに軽い負担で、同じ出力を維持できる感覚を得られるようになってきた。



 やがて基礎が形になってくると、お祖父様の判断で、セシル対アーサーの打ち合いや、三人での連携訓練へと移行した。


 セシルは年下の扱いに慣れているのか、大げさに褒めて気分を乗せたかと思えば、軽く挑発して負けず嫌いに火をつける。そのさじ加減が絶妙で、私もアーサーも自然と引き込まれていった。


 訓練開始から三日も経つ頃には、互いの距離はぐっと縮まっていた。

 口調も砕け、いつの間にか「アーサー」「セシル」と呼び合っている。


 さすがに私まで呼び捨てにするのは気が引けて、「セシル様」と呼ぶことにした。


 そして迎えた最終日。

 私たち三人対お祖父様による、実戦形式の訓練が行われた。


 ——もちろん、お祖父様は利き手と逆の手で模擬刀を持ち、魔法も身体強化も一切使わないというハンデ付きではあったが。


 この一週間で磨いてきた身体強化と連携。

 そのすべてをぶつけるつもりで挑んだものの——結果は、あっという間に撃沈。


 それでも諦めることなく、何度も立ち上がり、励まし合いながら、最後の一人が倒れるまで挑み続けた。


 ——その結果。


 私たちは、ワンランク上の身体強化と、

 『共に戦った仲間』という確かな絆を手に入れたのだった。

ローゼンベルク家は代々騎士団長を輩出する家柄。その嫡男であるセシルは、レイノルド治世下において騎士団長となることを周囲から期待されています。

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