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48話 限界点

 え、マジで何を言っているんだこのおっさんは。

 

「助けに来なくてよかったってことか?」

 

「ち、違う! だ、だからといってもだ! わたしも君もこの三層に来ている! だからわたしだけ馬鹿にするなと言っているんだ!」

 

 ひょっとして会話が通じていないのだろうか。

 俺にはさっぱりおっさんが何を言っているか理解が出来ない。

 

(トゥールー、わかるか?)

 

(推定。恐らくですが、マスターに馬鹿にされたのが気に食わないのでは?)

 

(馬鹿に? 俺が? 何か言ったっけ?)

 

(実力が伴っていない、という部分でしょう)

 

(はあ? 事実だろう?)

 

 まさかそんな事はないだろうと思って俺は口に出してしまう。

 

「違うとは思うけど、実力が足りないって言ったのが気に触ったのか?」

 

「そ、そうだ! もっと口の聞き方に気をつけて、年上を敬えと言っているんだ!」

 

 嘘だろおい。

 マジで言ってんのかこれ。

 

「……馬鹿にする意図はない。だけど実際あの猿にやられそうになっていたのは事実だろ?」

 

「それを馬鹿にしてるというのだ! なんだお前は!」

 

 お前がなんだよって言いたい。

 事実を伝えただけで、しかも助けられた相手に向かってなんでそう言うんだろうか。

 

「はあ……もういい。俺は帰る」

 

 これ以上話しても無駄だ。

 そう思って俺は引き返そうとしたが。

 

「ま、待て! お、おい待てと言っているだろう! 足を止めんか!」

 

 そんな事を叫びながら横を通り過ぎた俺の肩を乱暴に掴む。

 流石に俺もイライラが溜まってくるんだが。

 

「人の肩を掴むんじゃねえよ。……なんだよ」

 

「不機嫌そうな顔を見せるな! 失礼だろうが!!」

 

 総てを塵に(オール・ベット)、を打ちたくなる感情が湧いてくるが抑える。

 

「はいはい、んで、何のようだ?」

 

 危険も排除したしもう良いだろ。後は帰るだけだし何もねえだろうが。

 そんな俺も絶句するような台詞が飛び出した。

 

「この先に四階層の階段がある、行くぞ」

 

 

 ……………………???

 

「は? え? は??」

 

 今なんて言った?

 聞き間違いか、四階層の階段があるとかなんとか抜かしてなかったか?

 行くぞ? 誰に言ってんだ?

 

「ぐずぐずするな、早く行くぞ!」

 

(ト、トゥールー。すまん、今俺は理解が追いつかない。このおっさんは何を言っているか通訳してくれ)

 

(え、えっと。その、そのまま直訳ですが……マスターと一緒に四階層に行く、と言ってますよね?)

 

 トゥールーすらも疑問系だ。

 そりゃ、そうだろ。

 わけがわからんもんな。

 

「ま、待ておっさん」

 

「おっさんと言うな!! わたしはベーベルと言う名前がある!」

 

「そ、そうか。ならベーベル……」

 

 瞬間、頭に衝撃が走る。

 そこまで痛くはない。

 

 だが、その衝撃を受けた、ということに対して俺は衝撃を受けていた。

 

「呼び捨てにするな! さんをつけろ! それと敬語だ! 全く、礼儀を知らんのか!!」

 

 そう、そのベーベルというおっさんが俺の頭を殴ったのだ。

 

「…………」

 

「なんだその目は。少し礼儀を教えてやったんだ、礼くらい言ったらどうだ」

 

 

 ……俺は新人類と話しているのかもしれない。

 まるで会話が通じないし、何故殴られたかもまるで理解出来ないし。

 

(マスター! マスター! 落ち着いて下さい。怒りはご尤もです。ぶっちゃけ消し飛ばすかって思うのはトゥールーも同じです。ですが、今、このタイミングはマズイです)

 

(……あぁ、ギリギリ冷静だ。まだ、ギリッギリな!)

 

(まだ怒らないマスターの冷静さと忍耐に感動しました。トゥールーならもっと早く激怒してます)

 

(お前は止めたいのか促進したいのかどっちだよ、で、タイミングがマズイって?)

 

(はい、以前も言いましたが、怒り等の悪感情でリズが目覚めます。特に、この周りに誰も居らず、更に魔獣が居るダンジョンは、殺人を犯すには格好の場所です)

 

(なるほどな。ここで俺が怒りに任せたらリズとやらが出てきて、俺が反動でパーンする可能性があるわけか)

 

 理屈はわかった。

 だが、正直それで止めれるかは波打ち際の砂城ぐらい脆いぞ。

 かーなーり、頭にきはじめているからな。

 

「ぼさっとするな! 行くぞ!」

 

 ……無視して戻るのが一番な気がしているが、ついカチンと来たのか言葉に出してしまった。

 

「おっさんさあ……」

 

「貴様、人をおっさんと」

 

「うるせえんだよ。さっきこの階層の猿に負けかけただろうが、それがなんで四階層に行く話になるんだ。この下の階層はもっと強いのが出るんだろ? 勝てんのか? 自殺がしたいなら一人で行けば良いだろうが」

 

「なんだそんな事か」

 

 おっさんはふんと鼻を鳴らして言い放った。

 

「お前がなんとかすればいいだろう。あのグレイエイプに簡単に勝てるんだ、四階層以降も問題ないだろ」

 

 ふー……はー……

 深呼吸しろ。深呼吸だ。

 

「なんで俺が、おっさんの世話をしないといけねぇんだ……?」 

 

「ギルドの後輩で年下だろうが。先輩を助けようという気持ちはないのか貴様は。とんだ薄情者だな」

 

 まだだ、まだ堪えるんだ。

 やれる俺は我慢できる子だ。

 

「そもそも、なんで下に行く必要があるんだ。証は上だろうが」

 

「下に行けば行くほど高価な物があるだろう。そんな事も知らんのか」

 

 ああ、確かにコアに近くなるからその分魔力を秘めた物、つまり高価な物は多いってのは来たな。

 少し安心したぜ、下に誰かが取り残されているとかそういう助けざるを得ない様なことじゃなくて。

 本当にな。

 

 

「<疑似英雄譚・白き誓いティルトニクス・エグゼクタ>」

 

 全身が白い鎧に覆われる俺の姿を見て驚くおっさん(クズ)

 

 さて、もう……ゴールしてもいいな。

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 俺は走った。

 全力で洞窟を駆け上がる。

 あんなやつを無視してすべての力を発揮して高速で洞窟内を駆け、階段を踏むのも面倒なので壁を蹴ってどんどんと上へと昇る。

 

 太陽の光が見え、そのまま洞窟を抜けた後も走り続ける。

 そのまま走り続け、その場所から結構離れた所にあるティリアスと模擬戦をしたあの平原までやってきた所で俺は足を止め

 

 思いの丈をぶちまけた。

 

「ふざけんなクソ野郎があああああああああああああああああああああ!!! <総てを塵に(オール・ベット)>おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 

 

 その日、極大の白い光が天に向かって放たれたのが目撃された。


【TIPS】

いつか絶対にボコボコにするという意志を感じる

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