49話 別視点:アルマダ
───数時間前
「さてっと、ご主人も行っちゃったし、どうしようかなー」
ボクのご主人様こと、ユウはギルドへと向かっていった。
依頼で稼いで来ることと新王杯の事を確認するって言ってたけど、その辺真面目なんだよね。
シルヴあたりにお願いすればご主人様に対してなら宝物庫からお金になる物をくれると思うんだけどね。
まあそういう所も好きなんだけどね。
んーでも特にやることはないんだよね。
どうしようかなって考えていると、ティリアスから声をかけられる。
「アルマダちゃん、今日って何か用事ありますか? よければ一緒に買物に行きませんか?」
これは少し珍しい。
ボクとティリアスの仲はそれほど良いわけじゃないから。
これは悪い、というわけじゃなくて、単純に仲がいいとは言えないからなんだよね。
種族的にってのもあるんだろうけどね。
嘘を嫌う鬼と嘘を吐く悪魔じゃあね……。
だからこそ、その誘い文句をボクに言ったのはちょっと意外かな。
「ん、いいよーどうせ暇だったしね」
「よかった。それで……ええと」
ちょっと言いよどむ。
「じーーーーーーー」
……めっちゃ見てるマキナがいるからかな。
「マ、マキナちゃんも行きます?」
「行く行くー! いえーい!」
「い、いえーい」
ハイタッチを要求するマキナに対して律儀にティリアスは声を合わせてタッチする。
「いえーい!」
「いや、やらないよ?」
ショックを受けたような顔をするけど、正直ボクはあんまりマキナは好きじゃないんだよね。
何考えているかわからないし、なんか、隠しているような気がするんだよね。
……ご主人様の害にはならないと思いたいけど、ね。
「買い物はいいけど、ボクお金ないよ?」
「あ、あたしもー」
「その、特にお金を出してもらうつもりはなかったですけど、お金ないんですか?」
ボクとマキナは頷く。
それをみてティリアスは苦笑いをする。
「その、今までどうやって?」
「えーあちこち行って、適当に貰ってきたかなあ」
「もらう? 人からですか?」
「ううん、おいてある物を貰うの」
「それは泥棒じゃないですか!! 捕まりますよ!!」
「あはは、そんな事あるぐらいならよかったけどね」
今までのボクは何をしても記憶から消えるから、物を盗った所で誰もそれを咎める人はいない。
だから捕まることもない。
……ああ、そういえば今はそれが出来ないんだっけ。
「もう! お金なら出しますから、今度からそういう事しちゃだめですよ!」
「はいはーい」
「……そういう行為をしたら、ユウに言いつけますから。絶対怒りますからね?」
う、確かに。
絶対怒るだろうね……。
「も、もうしないから!」
「全く、まあ過去のことは仕方ありません。今度から欲しいものがあったら言って下さいね。考慮しますから」
考慮、という所が流石だね。
買うって言うと必ず買わないといけなくなるから。
流石鬼だ。
「あたしはそもそも食べ物は必要ないし、服も作れるし、だから何も要らなかったんだよね」
それを聞くとやっぱり警戒心が上がっちゃうんだよね。
食べ物が必要がない生物は居ない。
……本当に、生物なんだろうか、マキナ。ヒトカタは。
「それで、何を買うの?」
「そうですね、まずは食料品と……寝具でしょうか。流石にベット一つでは狭いですし、床で寝させるわけにもいきませんから」
ふーん。色々考えているんだ、ボクらの事。
「そういえばさ、この家ってティっちゃんの家なん?」
「ティ、ティっちゃん? わ、私の事ですか?」
「そうそう、ティリアスだからティっちゃん。んで、アルマダちゃんはアーちゃんね」
「……なんかアーちゃんの方が可愛い」
「ボクアーちゃん? ……まあいいけど」
別にご主人様以外になんて呼ばれようが構わないしね。
「んじゃ、決まりって事で。で、実際どうなん?」
「私の家ですよ。寝る場所がないか聞いた時に、ここを紹介されまして」
「ほうほう、それは誰に聞いたの?」
「よくわからない男達でしたね。案内された後、何故かオレのモノにしてやるよとかなんとか強い求婚を受けまして」
「うんうん……うん?」
「お断りしたら襲いかかってきたので、やむを得ず懲らしめたら、ここは好きに使っていいと。ただその後ここで寝ていると時折男達が来て一緒にベットに入ろうとしたので、そういう事はやめてほしいとお願いをしたのですが」
「ほ、ほぉ……それで?」
「どうも、手続きがうまく言ってなかったみたいなので、最初の男を探してお話をしたらちゃんと権利書をもらえましたよ。だから間違いなく私の家ですよ。安心して下さい」
「なるほど、それなら安心だね!」
あ、わかっていて投げた。
……大丈夫かなこの家。
ま、このメンバーなら大丈夫でしょ。
ご主人様も居るしね!
んーでも宿を取るって言ってたしなあ。
まあそうしたら一緒の宿に行けばいいか。
ボクとご主人様は一心同体みたいなもんだからね!
ふふふ、ユウの使い魔だから仕方ないね!!
「じゃー女子三人で買い物と行きますか!」
先導を切っていくマキナ。
少しだけ微笑みながら後ろについてくるティリアス。
ボクはその後に続いて外に出る。
「鍵をしてっと……」
一応鍵を締めるティリアスだけど、正直入ろうと思えば入れるぐらいには頼りない。
まあいいか、盗られて困るものもないしね。
「ああ、そういえば合鍵も取りに行かないと、それを追加をしないといけないですね」
「合鍵?」
「ええ、元々頼んでいたアルマダちゃんとユウの分ですね。後はマキナちゃんの分も追加でと」
律儀だなあほんと。
「あたしにももらえるのー? やったー」
「もう仲間ですからね。出入りできないと不便ですから」
「まあわかるけどね、そんな一人一つ要るかな?」
「何かあった時に困りますから」
もうマーキング付いているから瞬間移動でボクは入れるんだけどね。
そういった転移妨害の魔法もかかってないし。
……ま、ここで言うのも無粋かな。
仲を悪くしたいわけじゃないしね。
「さて、ではまず食料品を買いに行きますか」
「いえーい。あたしお菓子欲しいー」
「え、食べないんじゃなかったんですか?」
「冗談冗談。でも味覚はあるからあるとあたし嬉しいです」
味覚はあるのか。
でも食べ物は要らないと、不思議な身体だなあ。
その後、色々な店を回った。
果物から肉までバランス良く買って、流石に人数が多い分買う量も多い。
流石にティリアスの両手にそれぞれ三つずつカゴをもち始めた所で手伝いを申し出る。
これぐらいなんとも、とは言ってて実際それほど大変そうではなかったが、流石に邪魔だもんね。
ま、これぐらいは手伝おうか。
「流石にちょっと大荷物になってきましたね、一度荷物をおきに戻りましょうか」
「はーい!」
「あの、カゴ振り回さないでもらえますか?」
子供みたいなマキナを叱るティリアス。
うーん、背丈の差もあって母娘みたいだね。
「おや、あれは……」
そのティリアスの声で視線を向ける。
「あ、ユウじゃないですか」
「え? あ、ホントだー!」
すると、たまたま店から出てきたご主人様の姿を見つけた。
「む、女性と一緒? ペロっ、これは浮気!」
確かに知らない女性が隣りにいる。
けど、多分知り合いくらいかなーあの距離感は。
ご主人様って親しいとその分距離が若干だけど近いんだよね。
ほんとよくよく見ないとわからないぐらいの距離だけど。
……そういう意味でいうと一番近いのはティリアスなんだよねえ。
やっぱり最初に会ったからかな?
ご主人様はこちらとみると若干ため息を吐く。
むむむ、その態度は傷つくなーもー。
「はぁ……なんでお前らがここにいるんだ?」
「私達は一緒に買い物に来てたんですよ」
「食料とか色々だよー」
「悩殺下着とかね……ふふふ」
「下着ねえ。約一名常にそんな感じなのともう一名は服すら要らないはずだが?」
多分ボクのことかな? 後は……誰だろ。服が要らない?
あーそういえばマキナは作れるって言ってたっけ。
「む、彼女たちは君の仲間かな? 始めましてだな! オレはガーネットだ! 気軽にガーネットとよんでくれ!」
その女性はガーネットと名乗って、ボク達に挨拶をする。
どうしようかと思っていたらティリアスが返事を返したのをみてボクも合わせる。
「えっと、ガーネットさん? どうも、私はティリアスです」
「あ、自己紹介する感じ? ボク、アルマダ!」
「く、陽の者のオーラ……はいはい、ちゃんと紹介すれば良いんでしょ? あたしはマキナちゃんでーす」
子供みたいな事をするマキナだったけど、ちょっと気になってたことを言ってくれた。
「おやおやーひょっとしてデート中でしたぁ? お邪魔しちゃったかなー?」
こういう時は役に立つよね。
若干ボクも気になってたし。
「あっはっは、オレが恋人に見えるか! それは光栄だな! 君は面白いな、マキナ!」
そう言いながら豪快にマキナの頭を撫でる。
おお、凄い爽やかな人だ。
でもちょっとボクと合いそうにないなー……もっと合わない人がいるみたいだけど。
「なんて強い陽のオーラ。強い……勝てない……」
陽のオーラって、ああ、こういう陽気な人の事か。
時々マキナはよくわからない事を言うんだよね。
……不思議とユウが居るとなんとなくは意味わかるんだけど、なんでだろ。
「ガーネットさんはユウと交流があったんですか? アルマダちゃん、知ってる?」
「ううん。知らないよーご主人様の友達、なんだよね?」
ボクが知らないって事は本当最近会った人かな。
多分ギルド関係、かな?
「いや、オレとユウは先程会ったばかりだ、一悶着あったんでな、その時に親友になった!」
「一悶着? 何かあったんですか?」
「実はな……」
話し始める二人の横でボクは聞く。
さりげなーくユウの方に行きながら。
「なにそれ、スーパーヒーロータイムじゃん。……ん? どったの?」
「いや……自己嫌悪だ」
「ヒーローか。目指してはいるがまだまだだ。だが最終目標として目指している!」
ヒーローね……
「ふーん……」
「…………」
「ヒーロー、ですか」
ボクを含めて反応が悪い。
ま、そうだろうね。
人間のヒーロー、ええと英雄か。
英雄は大体他種族を駆逐する存在ってよく言われているからね。
特に悪魔に対しては何人葬られたかわからないぐらいだ。
まあそれなりに悪い悪魔だから特に感慨もないけれど、一応は同族が殺されている事を考えると複雑だよね。
でも、ティリアスは鬼で、大体同じだからわかるけどマキナも複雑そうな顔をしているのはなんでだろう。
同じ様に同族が、っていうには数が少なすぎるよね。
……ま、どうでもいいか。
「おっと、すまない。この後依頼を受けていてな、そろそろ行かねば。今日は楽しかったぞ! また会おうではないか、ではな!」
そう言って走り出す。
えっと、なんだっけか。ガー……なんだっけ。
ま、次会う時覚えればいいか。
「そういや俺も依頼受けてたんだったな。行ってくる」
「あ、手伝おうかー?」
折角だしついていこうかと思ってご主人様に声をかけるけど断られる。
「一応実力だめしもあるしからな、気持ちだけ受け取っておく」
「そっか、頑張ってねご主人様! 応援してるよ!」
うーん、残念。
行きたい気持ちはあるけどご主人様がそう言うなら仕方ないか。
無理にお願いして嫌われたくないし。
「怪我がないように気をつけて帰ってきて下さいね」
「まあ、うん。……いざって時は助けてあげてもいいよ」
「おう、サンキュー。まあ夕方か、夜には帰れるとおもう」
ん? お、ひょっとしてこれは。
「ん、あれ、でもやdむぐぐぐッググッ!」
ボクは急いで余計なことを言おうとしたマキナの口を封じる。
幸いにも間に合ったみたいで不思議そうにボクらを見ているご主人様になんでもないように笑顔を見せる。
「なんだ?」
「なんでもないよーいってらっしゃーい」
ちょっと腑に落ちない顔をしてたけど、そのまま行ってくれた。
全く、余計なことを。
「っぷはあ! ちょっと! いきなり口を塞ぐなんてなにすんの!」
「ご主人様、帰ってくるって言ってたでしょ。多分宿のこと忘れているんだよ。それを思い出したら帰ってこなくなっちゃうでしょ」
ん、ああ。でも別にそれでも良かったかなー。
いや、でも追い返される可能性もあるし、これでよかったと思おう。
「めっちゃ好感度高いね。なんかあったの?」
「使い魔だしねー」
「それだけ?」
…………こういう所嫌いなんだよね。
妙に鋭い。それに感情を読めないし、ボクとしてはやりづらい相手だ。
「ま、秘密にするのはいいけどさ。そういうの隠し続けてると、いつか取り返しがつかないことになる」
怖いこというね。
でも言わないよ、言うとしてもご主人様だけだ。
ご主人様はボクの全て。
あはは。
そう、ご主人様は絶対に渡さない。
何があっても、何をおいても、何を犠牲にしても、何が起ころうとも、何がなんでも。
たとえ取り返しがつかない事が起きても、それがご主人様にとって悪いことじゃなければ構わない。
持っているもの全部。
全部全部全部 全部 全部全部全部 全部全部全部 全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部 全部全部全部全部全部全部ぜんぶぜんぶぜんぶ
ぜんぶぜんぶ ぜんぶぜんぶぜんぶ ぜんぶぜんぶぜんぶ ぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶ ぜんぶぜんぶゼンブゼンブゼンブゼンブ ゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブ ゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブ
あ げ る
────私は貴方のモノ
あの幼い頃から────
────ねぇ、水月 悠様
ずっとずっと────
【 】




