45話 嫌な予感
「あ、ユウじゃないですか」
「え? あ、ホントだー!」
「む、女性と一緒? ペロっ、これは浮気!」
あーあ、出会っちまったか……。
そこで出会ったのはお騒がせポンコツ三娘。
そう、ティリアス、アルマダ、マキナだった。
(浮気!?)
お前は黙ってろ! 収集つかんだろうが!
ため息を吐きながら俺は三人に声を掛ける。
「はぁ……なんでお前らがここにいるんだ?」
「私達は一緒に買い物に来てたんですよ」
そうティリアスが言ったので見てみると確かにカゴのような物を複数持っている。
それぞれ一つずつか。流石に現代でよく見るスーパーのビニール袋ではなく、カゴのようなものなんだな。
何が入ってるんだろうか?
「食料とか色々だよー」
「悩殺下着とかね……ふふふ」
「下着ねえ。約一名常にそんな感じなのともう一名は服すら要らないはずだが?」
呆れたようにそう告げるとつまらなそうに舌打ちをするマキナ。
態度悪いなこいつ。
「む、彼女たちは君の仲間かな? 始めましてだな! オレはガーネットだ! 気軽にガーネットとよんでくれ!」
そこで声をかけたのはコミュ力が高そうなガーネットだ。
「えっと、ガーネットさん? どうも、私はティリアスです」
「あ、自己紹介する感じ? ボク、アルマダ!」
「く、陽の者のオーラ……はいはい、ちゃんと紹介すれば良いんでしょ? あたしはマキナちゃんでーす」
それぞれが自己紹介を交わすと、ふとマキナが悪い顔をした。
あ、こいつろくなこと言いそうにねえ。
「おやおやーひょっとしてデート中でしたぁ? お邪魔しちゃったかなー?」
からかうような声色でガーネットと俺を交互に見比べる。
はあ、すこし頭でも再起動させてやろうかと思ったがガーネットはその言葉で笑い出す。
「あっはっは、オレが恋人に見えるか! それは光栄だな! 君は面白いな、マキナ!」
全く気にしていない様子でマキナの頭を撫でる。
それを全力で嫌がって離れるマキナ。
「なんて強い陽のオーラ。強い……勝てない……」
あいつが何を言っているのか分からないが、まあ静かになったみたいなので放っておいていいだろう。
「ガーネットさんはユウと交流があったんですか? アルマダちゃん、知ってる?」
「ううん。知らないよーご主人様の友達、なんだよね?」
不思議そうに首を傾げるティリアス。
ああ、ティリアスとアルマダは大体一緒だったから、別の交流があるのが不思議なのか。
「いや、オレとユウは先程会ったばかりだ、一悶着あったんでな、その時に親友になった!」
いつのまにやら親友認定されているんだが?
「一悶着? 何かあったんですか?」
「実はな……」
そう言って井戸端会議のように話し始める。
横ではアルマダが、離れているものの耳を澄ませて聞いているマキナ。
話を聞き終えた時の第一声は。
「なにそれ、スーパーヒーロータイムじゃん。……ん? どったの?」
「いや……自己嫌悪だ」
こいつと同じ思考か…………。
「ヒーローか。目指して入るがまだまだだ。だが最終目標として目指している!」
拳を握ってそう断言するガーネット。
「ふーん……」
「…………」
「ヒーロー、ですか」
が、なぜだか三人の反応が悪い。
馬鹿にしているわけではないみたいだが……なんだろうか。
それを察したわけではないだろうが、ふとガーネットが声を上げる。
「おっと、すまない。この後依頼を受けていてな、そろそろ行かねば。今日は楽しかったぞ! また会おうではないか、ではな!」
片手を上げポーズを決めながら走っていくガーネットはそのまま町中に消えていった。
それを聞いて俺も思い出す。
「そういや俺も依頼受けてたんだったな。行ってくる」
「あ、手伝おうかー?」
そうアルマダが声をかけてくるが首を振る。
「一応実力だめしもあるしからな、気持ちだけ受け取っておく」
「そっか、頑張ってねご主人様! 応援してるよ!」
「怪我がないように気をつけて帰ってきて下さいね」
「まあ、うん。……いざって時は助けてあげてもいいよ」
「おう、サンキュー。まあ夕方か、夜には帰れるとおもう」
三者三様な対応だが、一応は心配してくれているらしい。
「ん、あれ、でもやdむぐぐぐッググッ!」
突然アルマダがマキナの口を抑える。
「なんだ?」
「なんでもないよーいってらっしゃーい」
何かを言いかけていたみたいだが、まあいいか。
そう言って俺は忘れかけていたアイアンウルフの討伐に向かった。
一方その頃……
「いやあ、いい出会いだった。それに珍しい人を見れたし」
鼻歌なんかを口ずさみながら道を歩いてしまう。
やはり良い事をした後には良い事が待っている!
「あれは、悪魔と鬼と、なんだろうか。今まで見たことない種族だったが、人間なのか?」
少し違う気もするんだが、ううん、まあいい!
「あれがユウ少年のチームなのかな。良いメンバーだ」
それぞれに強い力を感じる。
特にあの悪魔の少女。今は何かで力を抑えられているが、かなり強力な力を持っている。
でも、それよりも気になるのは。
「……その強力な悪魔がご主人様と慕う君は、どれほどの強さなのだろうか」
ぶるりと身体が震える。
恐怖なのか、武者震いなのか分からないが、この胸の鼓動は高鳴っている。
「勢いでライバルと言ってしまったが、そのライバルの名に恥じないようにしなければな!」
そうと決まれば依頼を早く終わらせてトレーニングだ。
その後日課の人助けをしてまたトレーニング。
「はっはっは、今から楽しみだよユウ少年!!」
「大通りで大声出さないの。周りの人が驚くでしょ」
「む、その声はリカか。相変わらずか細い声をしている。肉を食え肉を!」
振り返った先には仲間のリカが呆れ顔で立っていた。
手に持っているのは、おお、食料か。
「肉はあるんだろう?」
「はいはい、ちゃんと買ったわよ。それより、いつも以上に随分とご機嫌みたいだけど何かあったの?」
「おお、聞いてくれ! 実はだな!」
何故かうんざりしたような顔をしていたがオレは身振り手振りと動作で完璧に彼のことを伝えた。
聞き終えたリカはふうっとため息を吐いた。
「ふうん、ガーネに付き合ってくれるなんて珍しくていい子ね」
「ああ、そうなんだ! すごくいい子なんだ!」
そうだ、オレの事をガーネと愛称で呼ぶリカに対して、前々から言っていた事を言おう。
「オレもリーちゃんって呼んでもいいだろう!?」
「嫌よ恥ずかしい……」
首を振っていやいやするリカ。
「ユメちゃんもだめか?」
「絶対嫌。大体家から離れたのにその名前で呼ばれたくないわよ」
「そうか……」
仲間であるリカことリカ・ユメノミはこういった愛称を許してはくれない。悲しいことだ。
何より家に対して悪感情を持っている。それはよくない。
「何度も言っているだろう。家が嫌ならオレが話を付けてくると」
「確実に絶対に間違いなくこじれるからほんっっっとやめてね!!」
「あ、ああ。え、遠慮しなくても良いんだぞ?」
「違うから。違うから絶対に勝手に行動しないで頂戴ね!?」
念を押される。
ううむ、まだ信頼されていないのだろうか。
それとも力が足りないと思われているのだろうか。
どちらにせよ、精進あるのみだな!!
「でも、確かに気になるわね。その子」
おお、珍しい。
色々話をリカにするが大体は良かったわね、の一言で終わってしまうのだが。
「新王杯に出てくるのよね、その子」
「ああ! 決勝で会う約束をしたからな!!」
「ガーネの強さを知らないわけじゃないけどね、そんな甘いものじゃないってことはわかってるわよね?」
「勿論だ! だが、それでもオレは負けん!」
「どこから来るのかしらねその根拠は」
ふうっと小さく息を吐くリカの肩に手を置くと、驚いたように見上げる。
「リカ、それにカイナ。君達心強い仲間がいるからだ! だから負けん!!」
「……まったく、それはどっちかと言うと男性が言う台詞よ」
「あっはっは、すまんな! 女らしくない女で!」
こういう性分なのだ。もはや変えれないし変える気もない。
「ああ、その新王杯のチーム。後一人だけどカイナが見つけたらしいわ」
む、それは良かった。
オレ達は元々三人組だったからな。どうしても一人足りなかったからな!
「まあ、あのカイナが見つけてきたって所が凄く不安だけどね……」
「大丈夫だ! オレがなんとかするさ!!」
胸を叩きながらそう告げる。
それを見て笑うリカ。うむ、やはり笑っていないとだめだ!
「呑気なのか大物なのか、期待しているわよ、リーダー」
「ああ! 任せておけ!」
拳を握って強くそう宣言する!
と、そこで思いついたようにリカが言った。
「そういえばその子、ユウって言ったわね。強いの?」
「強い。相当な。正直勝てるかどうかはわからない」
ハッキリと断言する。
「……ガーネがそこまで言うのは初めてかもね。勝てるって言わないのは」
「ああ、恐らく大会でも最強だとオレは思う」
「まあ、警戒は上げておくわ。と言っても、何をするわけでもないけれどね」
肩を竦めるリカ。
確かに大会という形式上、特に出来ることもないな!
「でもね、そのチームって悪魔と鬼と人間じゃないナニカ、なのよね」
「恐らくな! 彼女らも相当手強いぞ! 全く油断できんな!」
だがその言葉で首を傾げるリカ。
「ひょっとして、ガーネ忘れてる?」
「む、何をだ!?」
サイフか!? いやあるな。
後は……何も持つなと言われたから何も持ってないな。
「忘れ物はないぞ!」
「違うわよ。全く、あのね」
リカが告げた言葉で、思い出す。
「新王杯は人間限定。その子達出られないでしょ」
……そう言えばそうだったか。
「何故だ?」
「はぁ……種族間の格差がありすぎるからそっちは別大会でしょ。新魔杯の方に出てるわよ」
なるほど! そういえば別大会があったな!
「ということは別メンバーか!」
「でしょうね。流石に一人で参加なんてしないでしょ。ガーネみたいに皆忘れているようなポンコツじゃないでしょうし」
「随分な言われようだ。しかし言い返せんな!」
まあ頼れる仲間が居ることだし、誰かが言ってくれるだろう!
頭が良さそうな人たちだったしな!
「さて、そろそろ依頼行くわよ。顔合わせも一緒なんだから、ちゃんとしてよね」
「任せろ! 所であと一人はなんて人なんだ?」
「私も名前しか聞いてないけど」
少し思い出す素振りを見せてからリカは言った。
「───ダルダダーンって言ってたかしらね」
【TIPS】
昔は新王杯でも全種族が競っていたが、圧倒的な竜族の強さに常に他の種族が負け続けていたため、人間のみとなった。
これは新人では才能の有無ではなく生まれ持った力が強いほうが新人クラスでは圧倒有利だからである。
人間は成長は早いが、流石に1年では早すぎる。
そのため大会が分かれることになったが、これを甘いと感じては行けない。
冒険者である以上他種族と戦うことも多く、更に今後の大会は全て混合だからだ。
この大会で優勝したからと言って天狗になってはならない。
……なおチーム戦ではあるが4人までの登録という形上、1人の参加も可能ではあるが未だかつて1人で優勝した者は居ない。
───ギルド内広報より




