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42話 安い挑発には乗るタイプ

少しづつPVが上がっているの見ると嬉しいです。皆様ありがとうございます。

宜しければ感想も頂けるとすごく嬉しいです。

(うぅ……ぐすん)

 

(まだ泣いてんのか。言っとくが自業自得だぞ)

 

(マスターを怒らせたらどうなるか身にしみましたです……)

 

 人を悪人みたいに言う。

 

「さて、そろそろ戻るか……居るかね、そのパーティーってやつら」

 

 そんな事を思いながらギルドに入る。

 

 

「おいおいおい冗談は無しだぜ! ランク10のほぼ実績がない新人の面倒を見ろっていうのかよ! そりゃ寄生ってやつじゃねえのか?」

 

 入った瞬間にそんな男の声が聞こえる。

 見れば受付の所に態度悪く手を机にかけながら乗り出すように大声を上げている男。

 そしてその前に居る受付嬢、アリス。

 

「あんたらも新人の時はあったやろうが! ランクだけが全てで判断すると痛い目みるで! なにせ期待の新人やぞ!」

 

 てっきり男に詰め寄られて困っているかと思ったが中々覇気のある返しをする。

 

「期待の新人ねえ! 一体どんなやつなのかしらねえけどよ、お前みたいなちんちくりんの専属なんだろ? 大したことねえのがまるわかりだぜ!」

 

 酷い言われようだな。

 っというか多分、というか十中八九俺のことだろう。

 周囲には二人の男女がいるが、少しばかり眉はひそめているものの止める気はないらしい。

 

「なんやて!! ウチの冒険者を馬鹿にすると容赦せんで!!」

 

 腕をまくりあげて喧嘩なら買うと言わんばかりにこちらも乗り出している。

 

「なんだ、ギルドにはチンピラしかねえのか?」

 

「ああん? なんだてめ、うお……な、なんでハンマーを担いでるんだ?」

 

「ちょっと野暮用でな。ああ、助かったぜアリス」

 

「ん? ああ! ちょっとユウ聞いてや! こいつらが馬鹿にするんよ!!」

 

「話は途中まで聞こえてたよ。んで、こいつらがそのパーティーか?」

 

 そう尋ねると頷くアリス。

 やっぱりかと思う半面、先が思いやられる展開だ。

 

「あん? なんだてめえがその期待の新人とやらか……てめえ固有武装は何だ?」

 

 睨みつけるようにこちらに近寄ってメンチをめっちゃ切ってくる。

 まじでチンピラかよ……。

 

「固有武装? ……剣って言えば良いのか?」

 

「っは? 剣だぁ、おいおいおい、これが寄生じゃなくてなんだっていうんだ、なあ?」

 

 大仰に手を広げて後ろを振り向いて、仲間に同意を求める。

 

「やれやれ、口調は褒められないが、まあ一理はあるな」

 

「アンタいつかギルドから追い出されても知らないよ、っても、剣ね……」

 

 剣ってだけで凄いバカにされているな。

 そういえば、近接武器は冷遇されているって聞いたが、これがそうなのかね。

 

「はあ……馬鹿らしい。こんな話受けれるかよ、まだ赤ん坊のお守りの方が楽だぜ!」

 

「この、言わせておけば!」

 

「やめろってアリス別に構わんよ」

 

 ぶっちゃけ居ても居なくても全然構わないしな。

 挑発されているのかもしれんが、全然力は感じないしな。

 

「せやかてユウ!」

 

「せやかてもなんやても無い。実際実績が足りないのは確かだしな、それに俺一人のほうが楽でいいしな」

 

 ただの事実を伝えただけで、別に怒らすつもりはなかったのだがその言葉で男が青筋を立てる。

 

「吹くじゃねえか……おい、ユウとか言ったな」

 

「なんだ」

 

 そう言って振り向くと。

 

「こいつはよぉ、挨拶代わりだ!」

 

 突然殴りかかってきた。

 まじかよこいつ、チンパンより知能が低いのか?

 ギルド内の受付嬢の前で暴力沙汰とか信じられんほど短絡的すぎだろ。

 

 ……しかも拳が遅え。

 軽々とかわせるわこんなもん。

 

「うおっとっと、てめえ避けんじゃねえよ」

 

「バカ言うなよ。っつかいきなり殴りかかってくるとかモラルが足りてないんじゃないのか?」

 

「言わせておけば口ばかり、もう許さねえ!」

 

 激昂して更に拳を振り上げる。

 はあ、なんでこうなるのやら。

 

「また始まった……アンタ止めてきてよ」

 

「ああなると声を聞かないからな……」

 

 お前らも止めねえのかよ。ばかばっかかよここは!

 

「ああ! もう、止めるんや!! ……え?」

 

「な……」

 

 驚きの表情を見せたのは全員だった。

 

「どうした、あっけにとられたような顔をして。止められたのがそんな不思議か? 突き出してきた拳を普通に受け止めただけだが」

 

 アルトリウスも起動してないのに遅すぎだろ。

 受け止めた手も全然痛くねえし。

 

「こ、この……! くそ、離しやがれ!」

 

 この程度の握りも抜け出せんのか……本当に力がないんだなあ。

 

「この野郎が……どうせこのくそちんちくりんの女とデキてんだろ! 寄生で強くなって嬉しいかクソ野郎! こんな獣くせえ糞アマが良いっていうだああああああああああ!」

 

「……今なんて言った」

 

「あ、が……て、手が! い、痛え! は、離せ、離せー!」

 

「このアリスはな、俺に対して色々言ったが全部真摯に対応もしてくれたし、応援もしてくれてんだ。多少なりとも、俺は感謝してるんだよ」

 

 口調は独特だし、まだ仕事も数回程度しか受けていない。

 けれど、ちゃんと俺のことを考えて依頼とかを発行してくれていたり助言をしてくれていた。

 

 何より、今まで獣人って事で担当がつかなかったとも言っていた。

 

「人が気にしている事をな、悪口として言うのは許せねえんだよ」

 

(……マスター?)

 

(何か、言いたいことでも?)

 

(否定。否定。なんでもないです)

 

 冗談と本当に気にしている事を言うのはまた別だ。超えちゃいけないライン考えろ。

 

「あだだだだだだだ!」

 

 俺が握りしめた手が相手の拳を潰すように締め上げる。

 やがて座り込んでしまう。

 

「どうした……立たないのか。拳を振るっても良いんだぞ……」

 

 アルトリウスでも起動してやろうとしたその時だった。

 

「もうええ」

 

「アリス、良いのか?」

 

 止めたのはアリスだった。

 少しだけ寂しそうな顔をした後、笑顔を見せる。

 

「そう言ってくれて嬉しいけどなあ、これ以上やるとまずいやろ」

 

「先にやってきたのはこいつなんだが……ま、お前が良いなら良いさ」

 

 手を離してやる。

 右手を抑えてうずくまっている。

 ……そんな強く握ったか?

 ってかそんな俺握力あったかな。

 

「まったく……すまなかったね。流石に言っちゃいけない事を言っちまった」

 

「僕からも謝る。仲間が無礼を働いた……本当は止めるべきだったんだけどね」

 

「本当だよ。仲間って言うなら手綱ぐらい握っておけ」

 

「返す言葉もないねえ……」

 

 バツの悪い顔をして頭をかく女。

 

「悪いな、こいつ失恋してな、ちょっと機嫌が悪かったみたいなんだ」

 

「だからって暴力ふるって良いわけでも暴言吐いても良い訳ねえだろうが」

 

 理由にならんそんなのは。

 

「しかし、ガルを一蹴するとは、流石期待の新人と言われるだけはあるね」

 

 俺を見る男の目が少し変わる。

 一蹴って言うが、殴ってきた手を掴んで握りしめただけなんだがな。

 

「いや、全面的にこちらが悪かった。謝罪させて欲しい。すまなかった……それで、よければ一緒に依頼をこなさないか? その実力なら寄生ということもないだろうし」

 

 その提案に少し悩む。

 正直嫌な思いをして一緒に行くメリットは無いが……ちらりとアリスの方を見る。

 腕組みをして少し不機嫌そうな顔をしているが俺の視線に気づくと

 

「……迷惑をかけないって約束するんなら、ウチはええよ」

 

 と、色々言われたことを飲み込んでそう言った。

 アリスがそう言うなら、まあいいだろう。世話にはなってるしな。

 

「ちょっと待てや……」

 

 頷こうとする俺に飛んできたのは敵意の視線と低い声だ。

 ガル、とか呼ばれていたチンピラ。

 

「まだ俺は負けたわけじゃねえぞ!」

 

「ガル、いい加減にしな」

 

 流石に(いさ)める声が飛ぶが、うるせぇと一喝。

 

「撃ち抜け全てを、我が意志のままに飛べ!『鉄器の砲口(ガンガルド)』! 武想顕現(リアライズ)!!」

 

 詠唱とともに手に現れたのは黒光りする拳銃だ。

 だが俺はそれを見てこの世界にも銃があるのかと、そんな事思うぐらいにはこの世界に染まったらしい。

 現実世界だったらもっと恐れていただろうに。

 

「おい! 流石にそれは!」

 

「うるせぇ! 舐められっぱなしでいいのかよ! こんなガキによ!」

 

「む……」

 

 そこで黙るから駄目なんだよ……止めろや。

 

「はぁ……銃を抜くって事がどういう意味かわかってんのか?」

 

「ほお銃を知ってんのか。レアな武想なんだが、へへ、今なら謝るなら許してやらんでもねえぜ、頭を地面にこすりつけてなあ!」

 

 完全にチンピラじゃねえか。

 

「ちょっとまちーや! ギルド内での武想展開は禁止されてるんやで!」

 

「うっせんだよ糞が!」

 

 そう言って、その男は銃口をアリスに向ける。

 

 

 ───やっちまったな

 

「光羽」

 

 いつの間にか、詠唱もせずに現れた剣を想いのまま言葉と共に振るう。

 アルトリウスモードではないにもかかわらず、光の刃は銃先を両断する。

 


「…………は?」

 

「え? 武想を、切った……?」

 

「いや、そもそも、今のは、何だ……一言で、あの光の刃が、出た?」

【TIPS】

武想も消耗し、破損する。

多少壊れた程度であれば、しばらく使わないことで自動で修復されている。

この研ぎや修繕が無くなったことで武器屋は大幅に姿を消した。

とはいえ、予備の武器や副装備として別のものを使うこともあるため、消えたわけではない。

しかし、完全に武想が壊れた時はまるでなかったかのように消えてしまい、二度と出現しなくなる事も確認されている。

もっとも刀身が折れたりする程度ではなく、粉々にする程で無ければ問題はない。

それよりも武想が消える状況で最も多いのが───精神が壊れた場合である。

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