37話 消し飛べ
「……帰れ。そして戻れ。お前たちの奪われた心よ」
魔法が効いたのか、それとも俺の声に反応したのかわからない。
だが、悪魔達の目に光が戻った。
瞬間、ダルダダーンに襲いかかる悪魔達。
そりゃそうさ。今までどういう扱いを受けてきたか、容易に想像が付く。
であれば、襲うさ。お前をな。
「うーん。これは。まずいかな。悪魔。使えないや。【一斉送還】」
困ったようにそう言いながら魔法を発動する。
その言葉で悪魔達が消え去った。
……ま、やっぱりコレで終わるわけはないか。
俺が言わなくても襲われた時点で返されるだろうし、それなら気分が良くなる方でいいだろう。
「これで、お前の召喚は封じた。もっとも、洗脳やらを受けてない、お前を守ってくれるような奴がいれば、話は別だがな」
そんな皮肉に対してダルダダーンは笑っていった。
「きっといっぱいいる。そう思うよ。多分。でもまあ。厳しい事はかわり。ないかな。でも見逃したり。してくれるよね?」
「すると思うかよ……」
この期に及んでそんな言葉を吐く。
どういう思考回路をしているんだ。
「そう。残念。【召喚】。」
そう言って再び召喚をする。
だが、その場所が最悪だった。
「なれるとね。召喚位置もね。変動。出来るんだよ。これ。便利。」
そう、現れた悪魔はマキナの所に現れ、首の所に鎌を構えている。
「わかってるよね。言うより。行動。首。取るほうが。早い。と、思う。」
人質。そう言いたげにそう気だるそうに手を振る。
その一挙一足にぴくりと反応してしまう。
確かに、俺の魔法は二手かかる。
広域化と回帰。どうやっても、その行動を止められない。
くそ、目の前に現れるだけじゃねえのか。
無駄に技術使いやがって!
「さて。どうしようかな。ううん。この状態でも大丈夫だし。首。取れても大丈夫。なんじゃない。どうかな。」
「……少しでも傷付けてみろ。てめえ」
「殺す。かな。それとも倒す。痛めつける。叩きのめす。ぶちのめす。切り刻む。うん。よくある。よくある。」
……くそが。
このまま待っていても事態が好転するとは思えない。
ここは街の中。そして店の中だ。
誰かが来る可能性も否定できないが、かといって賭けに出るかは微妙な所だ。
そんな硬直した瞬間だった。
「……再起動完了。危害及び魔力を検知。収集します」
そんな声が後ろから響いた。
声に反応して後ろ見た瞬間、マキナの身体から伸びていたコードが触手のように悪魔に絡みつく。
声もあげずに悪魔はそのまま、消え去った。
そして。
「……部品精製。機体修復シークエンス開始……完了」
「は、ははは……これがヒトカタ。か。回復魔法でも出来ない。失った部位すらも取り戻す。生物とは思えない。これが。ヒトカタ。」
五体満足となったマキナが、そこに立っていた。
体の調子を確かめるように手をニギニギする動作は、まるで人間のようだが。
全身は白の金属で出来ていた。
こう、ターミネーター的なあれっぽいな。
「……生体部品精製。装着」
身体からゴムのように何かが出てくる。身体をそれで覆う。
「……完了」
…………いや、見た目は裸なんだ。
普通の人間みたいに。っていうか普通の少女みたい、というかそのものなんだが。
胸もあるし、肌も出来た。
……でもゴムみたいなものから出来たと思うと、その、なんというかね?
「装備精製……エネルギー残量無し。人格AI起動」
カクンと首を動かしたかと思うと、こちらを見据える。
見た目は少女だ。小学、いや中学ぐらいだろうか。
顔も髪も修復されたのか、見た目は完全に人間のようだ。
……そうなると犯罪的な絵になるんだが。
そうしてひとしきり辺りを見回した跡、口を開いた。
「…………はーだっる。つーか身体ばっきばっきじゃん。つら」
……?
…………?
え?
「いくら痛覚カットや再生が出来るからってやりすぎ。ったくもー」
「……」
「……」
「面白い。」
いや、あの。
なんだろう。コレジャナイ感。
「ええと、その、マキナ、であってる、よな?」
「は? 誰お前」
俺の怒りを返せ。
「チルってやつによぉ……マキナってやつをよぉ……助けてくれって言われたんだがぁ!?」
「あ、そーなの。ごめんごめん。サンキュー」
「あたし、I.O.I式特化型4号GUE-33456番AI搭載モデル人形です。よろぴこ」
よろぴこって。
よろぴこて。
「面白い。」
お前はそれだけか。
シリアスを返せ。
「……お前はマキナだよな?」
「そうだよーマキナちゃんでーす」
「なんでマキナって呼ばれてるんだ?」
「名前長いって言われて、じゃあデウスエクスマキナって呼んでって言ったらそうなった」
ああそう。
しかし、名称と言い機械仕掛けの神という名前といい。
……機械、だよな?
未来のアンドロイドみたいな感じだが。
いや、女の場合ガイノイドだったか?
……いやそんな事はもうどうでもいいか。
「まあ、いい。さっさと逃げるぞ」
「りょー」
軽すぎだろこいつ。
「おっと。だめだよ。流石に。【結界晄防壁】」
俺たちを取り囲むように、透明な壁が現れる。
「うーん。興味あるからね。もうちょっと。調べたい。」
クソが。
「光羽!」
っち、弾かれやがる。
……硬そうな壁だな。アグリシアでいけるか?
最悪ティルトニクスを使うしか無い、か。
しかし、やはり後の行動が……それに、オールベットは広範囲すぎる。
上に向けて撃ったとしても、被害が出そうだ。
正面のクソ野郎に打ちたいが、その先はあの奴隷とされた人達が居る。
幸い廊下は広かったし一直線だったし、アグリシアぐらいなら被害無しで行けそうだが。
……貫くことを祈るしかねえか。
そう思って魔法を発動させようとしたその時に声をかけたのはマキナだ。
「ふーん。ねねお兄さん」
「……なんだ?」
「脱出したいんだよね?」
「そりゃお前のことだろうが……」
「はは、確かに。チルの知り合いなんでしょ?んじゃ後お願いね」
何をするつもりだと思ったが。
「固定アンカー射出」
マキナの背中から二つの棒が伸びて地面に突き刺さる。
……何をするつもりだ。
「セーフティーワイヤー射出」
更に腹からワイヤーが射出される。
「脚部固定ボルトオン」
ガンっと音がして踵から杭のような物が出て地面を突き刺す。
おいおいおい。
「砲門開放。エネルギー転換開始。60%……80%……完了」
突き出した両手から手のひらがスライドして黒い砲口が覗く。
これ、やばいやつじゃ。
「セットアップクリア。システムオールグリーン。よくもやってくれたな変態クソサイコパス。
───消し飛べばぁ~か」
「【白亜守護陣】!!」
次に来るだろう衝撃と音に俺は耳を塞いだ。
瞬間、バシュウと言うレーザー音の様な音と共に俺のオールベットと似て非なる光線が発射される。
人一人を軽く飲み込むほどの巨大な光線だ。なんとか波を思い出させるような、アレだ。
白い光線はまっすぐに伸び、バリアのような透明で硬い壁を、まるで無いもののように軽く貫き
あのダルダダーンとかいうやつを飲み込んだ。
数秒の射出を終えると、マキナの身体からは白い煙が上がっていた。
「あとよろ」
「……あとよろじゃねえんだよ! おいっっあっつうううう!!!」
撃った後、ワイヤーや棒は収納されて倒れそうになるマキナを慌てて支えようとするが触れた瞬間めっちゃ熱い。
いやマジ熱い。やけどするわ!
「ふう……あっつ。やけどしてねえよな?」
「扱い酷くない?」
「うるせえいきなり自爆技撃ってあとよろじゃねえんだよ」
「それにしても、剣の平で支えるのはどうかとおもう」
熱さのあまり手を話しそうになったが倒させたら顔面から地面にキスしそうだったので、やむなく持っていた剣の平でマキナのわりと平たい所を抑えていた。
そのままゆっくりと下ろして剣を引き抜く。
「菜箸みたいだな……一本しかねえが」
「扱いの改善を要求するー」
「考えておく。とはいえ……狙ったのか?」
ダルダダーンを狙ったという意味もあるが、もう一つ。
あの光線は見事に他のやつを傷付けず、だが逃げ場がなくなるように撃たれていた。
「もち。生体反応は奥にあったからね。むやみに殺さないあたしまじ天使」
「俺はお前がもうよくわからんよ……で、ダルダダーンはどうなった?」
見た先にはダルダダーンは居なくなっていた。
正直光線で消し去ってくれた方が世界のため、と思ってしまうぐらいキモいやつだったが。
……まあそう思ってしまうぐらい俺も染まっちまったかもな。この世界に。
「キモ男は、多分逃げたかなー殺した感触なかったし」
「光線で感触も無いと思うが。所でお前ロボット三原則って知ってるか?」
「そんなカビカビの法則知らなーい」
知ってんじゃねえか。
ロボット三原則は簡単に言えば、人傷つけんなよ? 命令は聞けよ? でも自分の身は守れよというものだ。
「はぁ、しかし、なんとかなったか」
「あたしのおかげ、ぶい」
「お前地面に口付いてるのに器用にしゃべるな」
「あたしの口も名器なので」
「関係なくね?」
なんで唐突なシモネタをぶっこんでくるんだこいつは。
「まあいい、とりあえず、逃げるぞ」
「うーい。お姫様抱っこで頼むね」
「裸の灼熱少女をそんなので運べるか。捕まるか胸が焼けるわ」
「欲情で胸を焦がす女」
「お、良いもんが有るじゃねえか……よいしょっと」
剣を使って腹から持ち上げてそれに乗せる。
「……あの、これは?」
「リヤカーっぽいものだな。台車とも言うが」
「物みたいに運ぶとか酷くない?」
「むしろ適当だろ。誰か来る前にさっさと行くぞ」
そう言って台車をごろごろと転がす。
……微妙に油とか血が付いている当たり何を運んでたのか、想像するのが怖いが。
【TIPS】
ヒトカタは意味不明な言動を繰り返すことが多い。
それを把握できた者はおらず、どこか狂っていると考えられる。




