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36話 喋り方がうっとおしい!

 

「げほ、そ、そう言われましても……我々は何も悪いことはしていませんよ」

 

「何だとてめえ……」

 

 力がこもる。

 苦しそうに声を上げる男性だったが後ろの扉が開く。

 

「どうしました主任! あ、おい! その手を離しな!」

 

 現れたのは強面の男達。

 

「失せろ」

 

 この時、意識したわけではなかった。

 アルトリウスモードも起動したつもりはなかった。

 しかし、過剰なほど震え始める男達。俺の身体からは白い光が現れていた。

 

「っぐ、な、何をしている! はやく、助けろ!」

 

 ようやく、俺を敵と判断したのかそう指示を飛ばす。

 更に強く締めてもいいが、はっきり言って力の加減を、ミスりそうだ。

 

「へ、へへ……ちっとは腕に覚えがあるみたいがなあ」

 

 足を震わせながら言っても説得力がない。

 しかし、俺はそこで手を離す。

 

「……誰だ?」

 

「へぇ。わかるかい。なるほど。わかるかい。」

 

 奥から現れたのは病的に白い男だった。

 骸骨のようにやせ細り、顔もドクロのようだ。

 

「ああ。ぼくはね。ええと。なんだったか。」

 

 頭に手を回してくるくると回す。

 そして、思いついたような表情をしていった。

 

「ああ。そうそう。ぼくは。ダルダダーン。ただの。研究者さ。」

 

 そう自己紹介をする。

 へらへらと笑いながら。

 

 力は、感じない。

 けれども、なぜか、目が話せない奇妙な雰囲気をまとっている。

 

「うん。まあ。君にね。君をね。なんとかしないといけないんだ。特には理由は。あったかな。ええっと。そう。ぼくの研究所なんだ。ここ。ひとつだけど。いくつかの。」

 

 奇妙な話し方でそう伝える。

 単語単語で息をするからか、酷く聞き取りづらいが。

 

「ヒトカタ。うん。すごいよね。よくわからない。だから調べてるんだ。まあ。メインのついでに。だけどね。」

 

 自分で頷く。

 ……埒が明かないか。

 

「おい、このヒトカタは、マキナという名前であっているか?」

 

 一応そうきく。

 もし違ったとしても、放ってはおけないが。

 

「うん? ああ。そういえば。そんな名前かな。うんそうだ。書いてあるよ。そうメモに。」

 

 メモ、と言う割に何かを見た感じはない。

 だが、嘘ではない。

 なら、もう仕方ないか。

 

「闇は嘘に堕落し、光は真を語る。汝、真実を証明せよ。……来い『真と偽の境界剣ライズアンドトゥルース武想顕現(リアライズ)

 

 剣を取り出す。

 

「光羽」

 

 振った剣は光の刃が飛び出して、機械の少女、マキナを釣っていた鎖を破壊する。

 落下する身体を支えて、一度ゆっくり床に置く。

 

「おお。早いね。うん。エクレアと同じぐらいかな?」

 

「……知ってるのか」

 

「そりゃ。吸血女王の下僕だからね。勿論。知ってる。当然ね。」

 

 気持ち悪く笑いながらそう自慢げに話す。

 

「なら、このマキナがどういう存在か知ってるんじゃねえのか?」

 

 その問を投げると、不思議そうにいった。

 

「え。関係ないでしょ。それは吸血鬼じゃないし。別物でしょ。だから関係ないでしょ。」

 

 ……もういい。話しているとイライラする。

 

「悪いが……恨むなら自分の所業を恨め。光羽」

 

 光の刃を男に向かって放つ。

 一応は右腕だけを狙ったが、当たりどころでは、最悪死ぬかもしれない。

 しかし、だからなんだと思う俺も、居る。

 

 だが、その懸念は外れる事になった。

 

「【召喚(アーク)】。」

 

 突然現れた真っ黒な身体をした巨大な悪魔が腕を伸ばし、光羽を止めた。

 角と羽が生えていて、まさしく悪魔のような顔をしている。

 

「なんだ。お話は終わりか。んじゃ。後で話そうね。うん。久しぶりに話が出来る人だし。」

 

 襲われたというのに、のんきにそう話す。

 ……なんだ、横の悪魔は。

 

「ああ。これね。大悪魔。ええと。ザルホアだったか。隷属契約しているんだ。」

 

 隷属契約。確か、吸血城で少しだけ話が出たな。

 

「ぼくの命令に。従ってくれる。うん。便利だよ。悪魔は。好きじゃないけどね。うん。」

 

 ……ふざけた口調で簡単に呼び出したくせに、わりと強そうだ。

 なにせ光羽を受け止めて、傷はない。

 連打すれば、行けるか?

 

光羽蓮華(こうはれんげ)

 

 誰かに教わったわけでもなく、そう声を発していた。

 想いのままそう告げて連続で剣を振るうと光羽と同じ形の刃が連続で飛んでいく。

 

「【召喚(アーク)】。【召喚(アーク)】。」

 

 だが、その全ては防がれる。

 新たに現れた緑色の悪魔と灰色の悪魔。

 

「今日は。悪魔の日。そうしてる。紹介するよ。デルタとバルタだ。仲いいから。一緒。優しいね。ぼく。」

 

 ……更に召喚されたか。

 しかし、なぜか襲ってこない。

 そして何よりも。

 

「……目に光がないのは、その隷属契約のせいか?」

 

 そう、まるで人形のように動かない。

 目も、光がないように虚ろだ。

 

「だって。怖いよね。万が一が。だから。意思なんて。いらないよね。そのほうがさ。怖くない。」

 

「ああそうかよ……【軌跡を喰らえ、驕れるもの(アグリシア)】!」

 

 もう地下なんてしるか。

 上に向けて打てばなんとかなるだろ!

 そう言った考えでやや上に向かって、悪魔の上半身を狙うように打つ。

 

「【召喚(アーク)】。【召喚(アーク)】。【召喚(アーク)】。【召喚(アーク)】。」

 

 だが、悲鳴一つ上げずに新たに召喚された悪魔たちが光の龍の中に消えていく。

 

「【召喚(アーク)】。【召喚(アーク)】。【召喚(アーク)】。【召喚(アーク)】。【召喚(アーク)】。【召喚(アーク)】。」

 

 おい、お前。

 

「【召喚(アーク)】。【召喚(アーク)】。【召喚(アーク)】。【召喚(アーク)】。【召喚(アーク)】。【召喚(アーク)】。【召喚(アーク)】。【召喚(アーク)】。【召喚(アーク)】。【召喚(アーク)】。【召喚(アーク)】。【召喚(アーク)】。」

 

「止めろてめえ!!!」

 

 光の龍は大量に召喚される悪魔たちを喰らい尽くすが、限界が来たのかやがて消えてしまう。

 その間に、大量の悪魔たちは消え去っていた。

 その中には。

 

「え。何か。あったかな。」

 

「てめぇが召喚した悪魔達を盾に使って、何かじゃねえだろ」

 

 そう。魔法を使って防ぐわけではなかった。

 ただ、壁として。

 本当にただの壁として悪魔達を召喚していた。

 

 その中には、人間のような姿をしたものも居た。

 

「ああ。大丈夫。全部意思はないからね。うん。殺したとか。そういう罪悪感は。なくていいよ。掃除。みたいな。」

 

「そういう、ことじゃねえだろうが!」

 

 やったのは俺だ。

 だから糾弾するのは筋違いかもしれないが。

 まるでごみを捨てるように召喚するのは、別の問題だ。

 

「ふふ。もう少し。掃除しようか。【召喚(アーク)】。【召喚(アーク)】。【召喚(アーク)】。【召喚(アーク)】。」

 

 多種多様な悪魔達が出てくる。

 割と広い部屋では会ったが、大量の悪魔達によって俺も壁際まで下がらざるを得ない。

 

「もっと。出してもいいよ。でも。狭いから。うん。暑いよね。いっぱいいると。」

 

 ネジが外れている。

 そう思わざるを得ない。

 あるいは、直接的に言えば狂人。

 

「いくつでも。見せるよ。倒してくれれば。その分。どーぞ。」

 

 ……倒しても焼け石に水か。

 とはいえ、ティルトニクスは不味い。

 仮に、あのオールベットを使えばなんとかなるかもしれないが、街に被害がありすぎるだろう。

 その後、逃げれないしな。

 

 ならどうするか。

 

「さて。どうする。お話する? それとも。まだ。掃除する?」

 

「……そいつら、お前が隷属契約している悪魔なんだよな」

 

「そうだね。そう。あっているよ。結構。強靭。なんとかできそう? 数、抑える?」

 

「っは、いらねえ。なら……なんとかなるかもしれないな」

 

「全部吹き飛ばす? もっと。強い魔法。かな。どうかな。」

 

「いいや、違うさ。俺が使うのは」

 

 そう言って俺は意識を集中させる。

 それはシルヴに教えてもらったある魔法だ。

 はっきりいって使い所が難しい魔法。

 そして初めて使う魔法だからな。詠唱も必要と、効果を羅列すれば弱い。

 けれど、今はきっと効果的に現れるはずだ。

 

 俺の予想が正しければきっと。

 

「……我が力は皆のために、強くあれ、壮健であれ。幸あらんことを【皆に手を(ギフト)】」

 

 

 一瞬の光が俺を包み込む。

 

「ん。どんな魔法だろ。強化……。詠唱から。違うかな。広域化、かな。」

 

「当たりだよ。俺が次に使う魔法の範囲を広げる。本当は、強化とかを味方に広げたりする魔法らしいけどな」

 

「ふうん。それで、一気に倒す。ってことかな。なるほど。」

 

 頷くダルダダーン。

 だが俺はそれに首を振った。

 

「いいや、違うな。俺が使うのは……」

 

 頼む。

 効いてくれ。

 予想通りであれば、きっと。

 

 








 

「───【精神回帰(リバレース)】」

 

「? 聞いたこと無い。魔法。なんだろ。気になる。」

 

「……教えてやるよ。これはな。狂気や混乱、洗脳(・・)から認識操作まで全てを解除する魔法だ」

 

 その言葉に一瞬目を向く。

 そう、その顔が見たかった。

【TIPS】

魔法の範囲を広げるというのは難しい技術である。

それは本来単体を対象とした魔法を複数に変更させると言う魔法だからだ。

魔法構築の変更を成し遂げるにはセンスが必要であり、またそれを使うのであれば

そもそも多人数を対象としている魔法を使うほうが楽である。

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