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26話 ばーか!

投稿が遅くなりましてすみませんでした。

「警戒するのも無理はないが、これでも我は城の主。王である。人を見る目くらいは備わっているつもりである」

 

 自慢そうに言うシルヴだが、その言葉は正しい。

 あの威圧は、あの目は、現代日本において居ないはずの王を。本物の王を、俺にも感じさせるほどだった。

 

「なるほど、その問いに答える前に聞いておきたいんだが、何故鍛える事に? 別にシルヴがそうする必要はないだろう?」

 

「ふふ、王と言うのはな、磨かれていない原石を見つけると拾い上げたくなる生き物なのだよ」

 

 嘘は、無い。

 けれどまだ確認をする。

 

「それは純粋な好意からの申し出、って事でいいんだな?」

 

「無論である。それに関して報酬や見返りは求めんよ。……ああ、いや一つだけ、頼みがある」

 

 ここにも嘘は無い。少なくとも好意なのは間違いない。

 だが、頼みと言うのは一体。

 

 

 

「───気が向いたら良い。また、城に来てほしい。ここは少し、寂しい」

 

 ……嘘はなかった。

 

「エクレアさんや、もう一人メイドが居たと思うが」

 

「ああ、長き時を付き添ってくれた者だ。不満があるわけではないのだ。しかしな、この広い城には、我を含めた、その三人しかおらんのだ」

 

 城は、巨大だった。

 庭も奇麗で、噴水もあった。

 門戸を閉ざしているわけではない。

 エクレアさんも良い人だし、もう一人は知らないが、口調から深い親愛を持っている事は疑う余地はない。

 それでも、やはり。

 

 

 客人が、いないのだ。

 迎える者、歓待する者。

 

 

「我も含め、皆寂しがり屋でな。客人の話も聞きたいし、エクレアにも世話をさせてやる相手も欲しく、チル。もう一人のメイドの名だが、それの遊び相手もな。新しく人を迎えるというのも手だが、ルールの問題もあって中々うまくいかんのだ」

 

 寂しそうに笑うシルヴ。

 それに対して、ただ傍に仕えるエクレアさんの表情は変わらない。

 ただ、少しだけ、悲しそうにも見えた。

 

 

「……ふう、それが頼みか」

 

「ああ、そうだ。それ以外は望まんのである」

 

 なら、こう答えるしかあるまい。

 

 

「ばーっかじゃねえの!!??」

 

「「「「!?」」」」

 

 俺以外の四人が全員驚愕の表情を浮かべる。

 いや、もういいだろう。

 言ってしまおう。

 

「寂しいならそう言えや! 頼み事にするんじゃねえよ! それで来てもらって満足か? 違うだろうがよ! それに頼み事として言うならもっと欲張れや! 一日一回は来い位言えんのか!!」

 

「うわーバッサリ……」

 

「これがユウなんですよね……」

 

 二人はああ……みたいな顔をしているが、まだシルヴとエクレアさんはフリーズしている。

 もっと言いたい事いってやろう。

 

「人が来ない? もっと広報だせや、こんな美人二人が居る城なら絶対だれか来たいって言うわ。その相手の良し悪しはあるだろうが、来ないよりマシだろうが。多ければ選別してもいい。つまり! 全然! 広告が! 足りてねえんだよ!!! 100万ぐらい”吸血鬼の城 謎解きツアー”のビラ配れ!」

 

 はー……何を言い出すかと思えば寂しいとか。

 あほちゃう?

 そりゃ待ってて来るわけがねえだろうが。

 吸血鬼の城だぞ? お、やってんじゃーんのノリで入れるか!

 

「以上だ。何か?」

 

「……は、ははは。はははははははははははは!!!」

 

「あ、主?」

 

 フリーズから溶けたシルヴが大笑いをする。

 それを見て珍しくわたわたと慌てるエクレアさん。

 

「くくくくく、はははは、はーっはっはっは!!」

 

 三段笑いまでし始めて机をたたき始めたぞ。

 かつてないほどエクレアさんがわったわったしている。

 

「あー……久しぶりに大笑いしたぞ。なるほどな、言われるとおりである」

 

 シルヴの涙をぬぐうエクレアさん。

 大変甲斐甲斐しい。

 

「検討しておこう。流石に、いきなり出来る話ではないし、うまくいって何十人が来ても対応できんのであるからな」

 

「おう。そうしろ。……俺も頼みじゃなくても遊びに行ってやる」

 

「それは、大変嬉しい話であるな」

 

 涙を、ぬぐう。

 

「なら、遠慮なく遊びに来てくれ。さて、それとは別に、我が吸血女王が、全身全霊で鍛えてやるサービスが今はついてくるのだが、どうか?」

 

「良い誘い文句だ。勿論、そのサービスを受けさせてもらうぜ」

 

「ああ、任せるのである……笑いすぎて疲れたのでな、すまないが、訓練は後にして先に謎を見てくるがいいのである」

 

「……ああ、わかった。行くぞ、ティリアス、アルマダ」

 

「いいけど、ご主人様って、やっぱりご主人様だよね」

 

「ユウは、やはりユウでしたか」

 

「どういう意味だよ。俺は普通の事を言っただけだ」

 

 全く、人を何だと思っているのか。

 困ったものだ。こいつらには。

 

 そう言いながら部屋を出ていく俺達。

 部屋の中からは何も聞こえてこない。

 しかし、不思議と。

 

 先程よりも、扉が輝いているようにも見えた。





「所で、謎の場所ってどこか知っているか?」

 

 扉を出た後、俺がそんな事を言うと少し首をひねるのはアルマダ。

 

「多分、覚えているはず?」

 

「疑問形かよ……」

 

 不安はいつも感じているが、まあ今回は良いだろう。

 最悪、後で聞けばいいだけの話だ。

 本当ならエクレアさんが案内するはずだったのだろうが、扉は空かずに二人は部屋の中だ。

 

 話によればチルと呼ばれるメイド。恐らくはあの壺を割ったメイドだろう。

 そのメイドに聞くのもいいかもしれん。

 

「えっとー確かこっちー」

 

 そう言いながら走り出すアルマダ。

 

「走るんじゃねえよ。全く」

 

「……ユウ」

 

 と、そこで声をかけてきたのはティリアスだ。

 珍しく落ち込んだような、不安そうな顔を見せている。

 俺はそれを見て

 

「……今度は何をやらかした? 壺でも割ったか? 不埒な真似をして全身に文様が出たか?」

 

「違います! 私を何だと思っているんですか!!」

 

「ポンコツ」

 

「せ、せめて歯に衣を着せてほしかったですね……直球すぎて笑いも出ますよ」

 

 はははと乾いた笑いをするがお前そういうのは自分のポンコツを直してからいえ。

 

「じゃなくて。その、私の事です」

 

「ティリアスの事? なんかあったか?」

 

「シスラナ家であることや廃嫡された事ですよ」

 

 そういえばそんな話してたな。

 廃嫡ってあれだっけ。継承権を失うとかだっけ。

 勘当みたいな、親子の縁を切る奴だっけか。多分。

 

「はあ、それで?」

 

「それでって……あの、何か思う所とか無いんですか?」

 

「そう言われても、シスラナ家が何かしらねーし、廃嫡されたって聞いてもだから何だって感じだしなあ。ティリアスはティリアス。それだけだろ?」

 

 その言葉に驚いた様な表情を見せるが、俺からしてみればなんでかわからん。

 

「……シスラナ家と言うのは、ヒノトの国の御三家と呼ばれる内の一つです。御三家はそれぞれシスラナ家、ユメノミ家、ヒシギ家と言う三つの家柄があり、その当主達が揃えばヒノトの王。(すめらぎ)と呼ばれていますが、その皇にも意見できる程です」

 

 意見が出来るってのが、どれだけ凄いかわからんな。

 

「まず、絶対的に皇の言葉には従わなければなりません。そのため、命令権を覆すというのはその三人の当主が揃わぬ限りあり得ない。逆に言えば揃えば覆せる、それほどの力なのです」

 

「従わなければって、この城みたいなルールがあるのか?」

 

「いえ、強制力があるわけではありません。しかし、その国は皇を頂点として長く続いている国ですから、逆らうという事自体が不敬に当たるという、宗教の様なものですね」

 

 んー大統領とかそういう位置か?

 ヒノトって名前から日本の様だが、皇族とはまたちょっと違うのか?

 

「へえ、そうなんだ」

 

「あの、結構勇気を出して重大な事実を話しているのにその淡泊な反応はちょっと答えるんですが」

 

「そういわれても、ヒノトの国をあんま知らないし……あれだろ? ヒノトのお姫様とかそんな感じなんだろ? よくあるよくある」

 

「えぇ……いやよくある話じゃないですよ。それに姫って程では全くありません」

 

 姫様属性は無かったか。よくよく考えれば姫キャラは一人いたな。

 一応目の前を走っている子供が。

 

「まあさっきも言ったが今は立場なんて関係ないんだろ? んじゃそれでいいんじゃねえの?」

 

「はあ……ま、そうですね。全く、普通の人はこういった話をすると色々態度が変わるんですよ?」

 

「それは大変失礼致しましたお嬢様。今度お背中でもお流ししましょうか?」

 

「はあ、これですよ。全くもう……」

 

 そんな溜息を吐きながら軽く笑うティリアス。

 しかしヒノトか。なんか米とかありそうなところだしな。

 刀とか興味あるし、一度は行ってみたいところだ。

 

「マスター。私が居るのに違う武器に浮気は許されません」

 

「……そういえばお前喋れるんだったな。今まで話さなかったから存在自体忘れてたぞ」

 

「衝撃。マスターはトゥールーの事を軽く扱いすぎではないでしょうか?」

 

「というか、全体的に扱い軽いですよね私達」

 

「黙れ。一緒にするなポンコツ暴力乳鬼」

 

「!?」

 

 口悪……誰の影響を受けたのか。

 ショックを受けるティリアスを横目に階段を下りて扉を潜り、その中にある階段を更に降りていく。

 ダンジョンみたいな場所になってきたが、大丈夫か?

 

「あーあったあったー!」

 

 奥の方で声が聞こえるが、若干地下の所為か反響して少し耳が痛い。

 

「声を落とせ声を。んで、何を見つけたんだ?」

 

「これだよー」

 

 地下にも関わらず明るい。

 特に光源は見つからないのだが、全体的に明るくなっているのは魔法だろうか?

 

 そんな中、部屋の中心に置かれた一つの石碑。

 ……言い方悪いが墓石みたいだな。

 

「何々……」

 

 そこに書いてある文章に目を通す。

 こう書いてあった。

 

 

『歩き続ける僕ら 旅人と共に門出を祝って

 風と共に歩こう 夜の街をくぐって出よう

 大丈夫。きっと行けるさ。 僕と君ならどこまでも

 煌めく空は月と星 手を伸ばせばいつだって

 幽獄の塔を倒そう きっと空が奇麗に見える』

 

 

 ……ポエムか? それとも何かの歌詞か?

 謎って言われても、全然何のことかわからんぞ。

 

「さっぱりわからん。なんだこれ」

 

 視線を移す。

 アルマダは既に興味なさそうにしている。

 ティリアスは唸って何とか解こうとしているのか石碑をガン見だ。

 

「く、これは難題ですね。流石長年解けなかっただけはあります」

 

「ティリアス?」

 

「ちょっと待ってください……ここが、こうなって」

 

 駄目だ。またポンコツ化してやがる。

 

「ボクは知っているから戻ってお菓子食べてくるね」

 

 そう言って上に上がっていく。

 ……。

 

「どいつもこいつも自由人か!!」

 

 叫ぶ俺の声も聞こえないティリアスを置いて俺も戻ることにした。

 ぶっちゃけマジ解らん。もうちょい謎を解かせる文章にしろ。

 たぬきとか書いとくとかな。

【TIPS】

吸血女王シルヴァリア。

吸血鬼は気位が高いが、それを思わせない性格を持つ。

城を持っている者は少なく、また持っている者でも王と呼ばれる者は彼女しかいない。

それは強さの証であり高潔の証である。

故に、彼女は一人であった。そして二人になり、三人になった。そこで話は終わった。

 

 

しかし今、話の続きが始まる。

───とある日記より

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