25話 我は美しい!……なんてな
「この城に人が来ない理由。それはその禁書にあるのである」
「禁書……さっき禁書棚って言ってたな。それは、その時の悪戯って本だけでなくって事か?」
「うむ。我がバーバルディア大図書館にはそのほかにも幾つも禁書と呼ばれる魔導書があるのである」
「……なるほど、魔導書な」
ティリアスに視線を送る。
(読めば魔法の力が手に入ったり、何らかの魔法効果を手にしたり、単純に魔法が記載されている本です。危険なものだったりすると禁書と呼ばれます)
いいぞ、良く意図を組んだなティリアス。
こういう耳打ちをしてくれる察し力はあるんだがなあ。
「それらが危険だから来ないって事か?」
「いや、むしろ逆であるな。それを狙ってくる者の方が多いであろう」
「力を求めてって事か。ん、しかしそれなら逆に人が来るんじゃないのか?」
そこで苦々しい顔をするシルヴ。
エクレアさんもどことなく苦笑いを浮かべているようだ。
「……らんのである」
「ん? え? なんだって?」
「狙ってくる者がおらんのである……」
話が違うじゃねえか。どっちだよ。
「理由は明白なのだ。まずこの城のルール。それによって盗賊達は不埒な真似が出来んのである。そして何より」
遠い目をして、シルヴは言った。
「書庫の鍵を無くしてしまって誰も入れん、と言うのが広まってしまって……」
……はあ、まさかとは思ったが。
お前もポンコツ枠か。
「ち、ちがうのである! 無くしたのは我ではないのであるからして、そのような目はやめるのであーる! ちょ、本当だ! 我は無実なのだああああああ!!!」
叫ぶシルヴ。
……何かトラウマでもあるのかね。
誰かに強く言われたとか。
「まあ、でもわかった。鍵がなくて入れなくなっているから人が来ないって事だな」
「うむ……厳重な鍵がかかっていてな、我でも中に入れんのである。盗賊が開けてくれるならもう禁書の一つや二つぐらい持っていってくれていいかなって……」
追い詰められすぎだろ。
「しかし、その中でも決して持って行ってはならぬ本がある。それが、時の悪戯である。だからこそ、反応をしてしまったであるが」
禁書の中でもやべーやつって事か。
「ん、待て。そんな危ない本を知っているその人物と、それを読んだアルマダはどうなるんだ?」
処刑とかそんなやばい事なら不味いんだが。
「いや、どちらも問題は無い」
予想外に、そう言い放つ。
それは確信をもって言っていた。
「時の悪戯は特殊な本でな……魔導書もそうであるが、その本に適合した人物、適合者でないと効果を発揮しないのである。そして、もし二人が適合者である可能性は0だ」
「ふうん、それって見てわかるもんなのか?」
「いや、普通はわからん。しかし、時の悪戯に関しては別だ。恐らく絶対にわかるのであるからして」
「恐らく絶対って言葉がおかしいだろ」
軽く冗談交じりに応えるとシルヴもわかっていたのか微笑で返す。
「今まで適合した者は一人しかいないからな。故に我も人伝いにしか聞いたことがないのである。だが、話によると」
そう言って、言われた言葉は衝撃的な事だった。
「時を操る事が出来る、そう言われている」
「……それは、時間を戻したり進めたり止めたりできるのか?」
「恐らくは、であるがな」
まじかよ。ラスボスじゃねえか。
「ん? まて、それって逆にわからんだろう。時間を戻されてもわからんと思うが」
こう、時間が変わったという認識ができる様な魔眼が無いとわからんだろう。
変えられた時間軸が正規になるわけだし。
「む? ああそうか、時間系の魔法を知らんのであるな」
「は? 時間系の魔法? そんなやべーのが普通にあるのか?」
何この世界そんな危険なの?
時間止められたら死ぬじゃん。
「うむ、と言ってもそれほど強力なものではないがな。合っても体感時間を延ばしたり。物が劣化しにくいよう時間を抑えたりとそんなものだ」
十分では?
「時を止めるクラスの力になると適性が必要になるからな。数も少ないし、普通の魔法が使えなかったりするデメリットもあったりするのである」
十分では?
「まあ我がそうなのであるがな」
お前かい!!!!
「って事は時の悪戯を読んだのか?」
「まあ、な。しかし効果はなかった。我でも適合者ではなかったという事だな」
若干悔しそうにそういうシルヴだが時を止めれるという事はめっちゃ強いと思うんだが。
俺に適性があったりしねえかなあ……。
「つまりそれを超える力を手に入れるという事は、世界を手に入れる程の力になるという事だから、厳重に扱っているのである。危険視する理由はわかったかな?」
「まあ自在に時を戻したりできる奴には勝てんよな」
無限コンティニューは魔王も裏ボスも隠しボスも倒せるからな。
「さて、そうなると何故お主等がその本を欲しがるのか、と言う所なのであるが」
少しだけ眉を下げてそう言った。
ま、話を聞く限り危険物中の危険物だから仕方ないな。
「時の翁と言う奴に対して、何かヒントがないかと思ったんだが」
「時の翁? ……ふむ、中を全て見た我であるがその本にそんな記述はなかったであるな」
うーむ、外れ……
「…………ふうん、そうか。残念だ」
「役に立てなくてすまないであるな。とはいえ、観光と思って中を見てもらっても構わん。なんなら謎を解いても構わんぞ」
謎? ああ、そういえばルールの中の最後にあったっけか。
確か、謎を解いた物に主と城の権利を与えるとかあったな。
「それも面白いかもな。と言うかそんなルール作ってよかったのか? 下剋上的な心配とか」
「作ったのは我ではないのでな……昔からこの城に伝わる契約故に我でも手が出せん。変更や無効もな」
「なるほどな。その謎っていったい何なんだ?」
「興味があるなら地下に行くと良い。そこにある文章を読み解いた者が権利を手に入れる。もっとも、未だ解けた者がいないが……」
「結構な人数が挑戦してそうだが、それでも解けないのか?」
「うむ。遥か昔から伝わっており、それを隠しているわけでも無いのだが解けた者はいないのである。……そのことから二つ、いや三つの理由が考えられるがな」
解けない理由か。
「わかるであるか?」
ん? シルヴがなんとなく俺に答えを期待してそうな目をしてる。
まあ、思ったことをそのまま言ってみるか。
「そもそも解かせる気がない、答えがない謎か」
頷く。当たっていたようだ。
もう一つも当たるかな?
「特定の人物しか解けない。あるいは特定の物が必要か。その三つかな」
いわゆる家族とか身内しか知らないネタが入っているパターン。
または謎解きに必要な物、例えば暗号解読キーである何か、とかな。
「我も同じ予想であるが、ユウと言ったな。中々、頭の回転が速いではないか」
頷きながら褒める。
褒められてる、んだよな?
「まあともあれ見てみるのもよいだろう。ひょっとすると、この中に謎の適格者もいるかもしれんからな」
ウィンクしながらそう言うシルヴは激励のつもりだろうか?
「おっと、忘れていた。もし帰られる際はエクレアに言うのである。歩いて帰るのは無謀だからな」
「無謀ね、そういえば、この場所はどの辺なんだ?」
「確かレイヴェルトから来たのであるな。そこから大体、500kmぐらいだ」
500㎞ってどれぐらいだ……?
東京から京都がそれぐらいだった気がするが、まあかなり遠いな。
「それに危ない魔物が徘徊しているという話も合ってな」
おいフラグやめろ。
「へーでも大丈夫だよ! ここに襲ってきたりはしないんでしょ? 万一来てもボク達なら倒せるし!」
「はっはっは、この城を襲う度胸があれば寧ろ褒めたたえてやるのである!」
おい、マジでやめろって。
「ちなみに、どんな魔物なんですか?」
「確か……毒蜘蛛だと報告が来ておる」
視線をエクレアさんに向けると言葉を続ける。
「毒蜘蛛『ヴァルヴァドズ』そう呼ばれる魔物です」
「おお、そうであったな。まあ大した事はあるまい」
「強そうな名前だけど本当に大丈夫だよな? く、こんな筈では、とは言う展開は無いな?」
「大丈夫である。……ふむ、しかし、なるほど」
ん? 俺を見つめるシルヴ。
一体なんだ? 何か変な事を言ったか?
「ふーむなるほど。なあ、ユウよ」
そう前置きして、シルヴは言った。
その言葉に俺は、少し言葉を失ったが。
「我の薫陶。ありていにいえば、訓練を受けてみる気はないであるか?」
「……どういうつもりだ? 突然」
急な申し出に俺も戸惑う。
何故突然訓練を?
「うむ、我が見た所お主は強い力を持っている。しかし、自力と言うのか、そもそもの土台がそれほど鍛えられてないと見たのである」
……正解だ。
「この城にいる間は問題は無いだろうが、先の魔物。仮にあの毒蜘蛛を倒そうとすると手こずると思うぞ」
「一応、理由を聞いてもいいか?」
「お主の力、恐らく常時は使えないと見た。時間制限か、あるいは体力か。はっきり言って力を受け止める器がまだ未熟なのである。攻撃を交わすような相手は手こずると見たが、どうか?」
間違いは、ない。
素の力ではメタルラットすらも倒すのに時間がかかるし、アルトリウスモードは発動できるが長時間維持するのは疲れる。まだ時間は測った事は無いが、限界まで使えばモードも解けるだろう。
ティルトニクスに至っては使用するなって言われてるぐらいだからな。いざってときは使うだろうが……。
しかし見ただけでこれほどわかるものなのか?
少しばかり、女王を名乗る片鱗を感じた気がした。
【TIPS】
相性というのは存在する。
それは魔法の相性でもあるし、種族としての相性でもある。
例えば、人狼は吸血鬼に強い。吸血鬼としての回復能力阻害する力を持つからである。
とはいえ、必ずしもそれが負けになるわけではない。
時魔法? あ、いやそれはちょっと
───格好つかない教師より




