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24話 大事である

 階段を上った扉の先は巨大な机と椅子が用意されていた。

 まるでパーティー会場の様に色とりどりのお菓子と杯がおいてあり、少し圧倒される。

 

「わーお菓子がいっぱいあるー! あうっ!」

 

「この香り、ドミナリア産の紅茶ですね”!!」

 

 速攻で机に近づいた二人の頭を殴ると恨めしくこっちを見てくる。

 まじでお前ら自重しろよ。

 

「ふっふっふ、まるで親の様であるな。遠慮せずに座って食べるといい」

 

 そう言ってわざわざ椅子を引いてくれる。

 遠慮なく座るアルマダ。

 早速手を伸ばそうとして、一度こちらを見る。

 

「……ご好意に甘えて食べさせてもらおう」

 

 その言葉で笑顔になってお菓子を食べ始めるアルマダ。

 

「いや、本当済まない。礼儀を知らんらしくてな……」

 

 流石にホストが座るまではせめて食うのぐらいは待てよ! と心の中で叫ぶがそれを押し殺してそういうのが精いっぱいだった。

 

「元気があってよい。我が城に来るものも少なくなってきたので、むしろ微笑ましくて嬉しい限りである」

 

 聖人かよこの人は。

 

「って来るものが少ない?」

 

 不穏な事を言うなよ。

 この歓待でこの城主とメイド長だぞ。人が来ないわけないだろうが。

 

「うむ、やはり気になるか。しかし楽しい話にはならんのでな。まずは食べながらそちらの話を聞くとするのはどうであるか?」

 

 む、まあ気になるが後で話してくれるみたいなのでとりあえずは良しとしよう。

 あんまり詮索するのも悪いしな。

 

 そう言って、俺の分の椅子を引いてくれる。

 ありがたく座らせてもらった後、エクレアさんがシルヴの椅子を引く。

 

「ふむ、エクレアも着席させても構わないであるか?」

 

「ああ、勿論だ」

 

 ああ、こういう所は貴族っぽいな。

 確か使用人とは同席しないんだったか。しかし一瞬俺を見た後そう提案するところを見ると、ひょっとすると俺の反応を見て座らせるようにしたのか?

 

「全員揃ったようなので、それでは…………」

 

 そこで言葉が止まり、視線をエクレアに動かす。

 そっとエクレアさんが耳打ちをすると頷き。

 

「それではユウ殿、アルマダ殿、ティリアス殿の歓迎会を始めるのであーる!!」

 

 

 さて、そこから先は正直言いたくはない。

 お菓子を遠慮なく食べて、その後おかわりを要求する使い魔。

 色々な紅茶を飲み比べて、自分の目の前を杯で一杯にする鬼。

 

 俺はマナーにうるさいわけでもなく、テーブルマナー自体もほとんど知らない。

 だが、それでも、これは酷い!!!

 

「このチョコ美味しー! もっとちょーだい」

 

「これは良い紅茶ですね。ふむ、これはデトレル山の……」

 

 幸い穏やかな顔で嬉しそうにするシルヴと、追加のお菓子を持ってきてくれ世話をしてくれるエクレアさんに救われているが。

 正直、顔から火が出そうなほど恥ずかしい。

 遠慮とか謙虚って言葉を教え込む。そう俺は心に決めた。

 

「おや、ユウ殿はあまり食べていないようだが、口に合わなかったであるか?」

 

「あ、いやそんな事は無い。お菓子も紅茶も凄く美味しいさ」

 

 これは本当だ。普段コンビニのお菓子やペットボトルの紅茶しか飲んだことがない俺でも美味しいと感じれる程には高級なのだろう。

 

「ただ……気恥ずかしさでな……」

 

「はっはっは!! なるほどなるほど! 気にするな、と言っても気にしてしまうのであろう? であれば仕方ないのであるな!」

 

「お気持ちはお察し致します。勿論、私も気にしておりませんよ」

 

 心遣いが染みるぜ……。

 

 

 

 

「さて、食器も片付けたが……大丈夫であるか?」

 

 そう心配そうに声をかけるシルヴ。

 その目線は二人の大馬鹿に注がれている。

 

「角が、角が折れる……やめて、持って振り回さないで……」

 

「あた、あた、あたまが、あたまがあ……ああ、ほしがまわるー」

 

「二人ともちょっと夢の世界に旅立ったみたいだから、大丈夫だ」

 

「そ、そうであるか……いや、正直面白い見ものだったと言わざるをえないのであるが」

 

 俺が二人と折檻(おはなし)している時大爆笑だったものな。

 エクレアさんは何故か俺に同情する様な視線だったが。

 ……いや、なんか同類を見るような感じだったような?

 

「さてと、んじゃここに来た目的なんだが、バーバルディア大図書館って言う場所があるって聞いたが」


「うむ、確かにあるのである。本の閲覧が目的であるか?」

 

「ああ、その中にあるらしい時の悪戯、と言う本を見たい」

 

 

 

 

 

 

「───ちょっと詳しい話を聞かせてもらおうか」

 

 翠色に輝く瞳と、威圧を受けて俺は言葉を失った。いやそれだけでない。

 先程とはまるで違う、強者の威圧。

 そして、王としての覇気を感じさせ、俺は呼吸が出来なくなっていた。

 

 圧倒的な力の波動。それだけで、息が

 

「主」

 

「……失礼したのである。しかし、その本の名を知っている、と言うだけで看過出来ないのも事実である」

 

「っはあ、はあ!」

 

 瞳から光が消え、ようやく重圧から解放された俺は空気を取り込む。

 虎の尾を、踏んじまったか?

 あの重圧、アルトリウスモードなら耐えきれるか……いや、いきなり戦闘形態になるのはまずい。

 相手の印象も更に悪くなるだろうし、主の前で剣を抜くのは、無礼に値するに足りるだろう。

 

「幸いにも、無礼な行為であると判定はされていない。水に流すとするのはどうであるか? ……お互いな」

 

 

 お互い? とそこでようやく気付いた。

 

「それは、ユウ次第ですね」

 

「だね。ご主人様が良いなら、どっちでも良いよ」

 

 赤い目を光らせるアルマダと、横にいつの間にかいるティリアス。

 どうやら、心配してくれたのか、警戒しているみたいだ。

 

「先程とは違って、随分と勇ましい姿。良い仲間に恵まれたであるな」

 

「ああ、自慢の仲間(ばか)達だよ……」

 

 アルマダもティリアスも武器までは出していない。

 流石にまずいと感じたのか、それぐらいの知能があってよかった。

 

「素直に褒めてもよいのだぞ……? さて、まずはその本の名前をどこで知ったか、教えてもらうのである」

 

「…………」

 

「答えられぬのか?」

 

 少し目を細めるシルヴ。

 ここで、見た事を知っていたのはアルマダで、知っていたのはティリアスと言ってしまえば楽なのかもしれない。

 しかし、本当に言っていいのか?

 その場合、二人がどうなるか予測がつかない。

 

「ボクだよ。昔、ここで見た覚えがあるんだ。砂時計が書かれた本を」

 

「私は、その話を聞いて本の題名が時の悪戯と答えました」

 

 お前ら……。

 

「今更隠せないでしょ。誤魔化す方がむしろ変な想像をされて怖いと思うよ」

 

「同感です。私たちが知っているのは悪い理由ではない。であれば、問題無いはずです」

 

「ふー、そうだな。やましい事がなければ、問題ないな。……本当にないよな?」

 

「お前たちの信頼関係はどうなっているのか……ふむ、では重ねて問うのである。そこの悪魔の少女、いや七天魔公が一柱。【記憶融姫(ミッシング)】アルマダ」

 

「はーい、そのアルマダでーす」

 

 緊張感って知っているか?

 

「どうやって、我がバーバルディア大図書館。その奥にある閉ざされた扉の奥にある禁書棚の隠し部屋の封印された本を知っている」

 

 厳重すぎだろ、そんなやばい本なのか?

 

「えっとねー、教えてもらったの」

 

「……誰にだ?」

 

 緊張感が張り詰める中。

 

「えっとー、栗色をしたツインテールの子かな?」

 

「はいわかったじゃあ次に行こうか」

 

「ええええええ! ちょっと待てよ! 俺が言う立場じゃないけどそいつめっちゃ怪しくねえ!?」

 

 そんな隠し部屋の封印された本を知っているとはめちゃくちゃ怪しいが。

 

「…………そいつならありうるのである」

 

 一体誰だよそのツインテは。

 

「知った理由についてはわかった。では次に、そこな鬼の貴女、ティリアスよ」

 

「……そうね。話さないといけないですね。私がその本の名前を知っている理由は『金篇目書禄』を読んだからです」

 

「『金篇目書禄』!? ま、まさか其方は……」

 

「ええ、お察しの通りです」

 

「聞き覚えのある名前だとは思っていたが、つまり」

 

「私の本当の名前は、ティリアス・シスラナ。シスラナ家の廃嫡された、子供です」

 

「子供……?」

 

 あ、すいません。つい突っ込みたくなっただけなんで怖い目で睨まないでください。

 ていうか話についていけないんだけど。

 なんだよその、きんぺんもくしょろく? とやらとかシスラナ家とか。

 専門用語が多いのは嫌いなんだよ。

 

「なるほど。それならば、納得であるが……証明は出来る物はあるか?」

 

「私の固有武想は『アメノムラクモ』……武想顕現(リアライズ)してもよいのであれば、お見せしますよ」

 

「三種の神器か……いや、後学のため見てみたい。出してもらえるであるか?」

 

「わかりました。(あまね)く全てを切り払わん、来たれ『アメノムラクモ』武想顕現(リアライズ)

 

 そう言ったティリアスの手に刀が現れる。

 

「伍爪の龍、か。間違いないようであるな」

 

 龍? ああ、よく見れば柄の所に龍の彫り物があったな。

 うーむ、確かに爪が五つあるようだが、それがなんかあったか。

 んー、なんか引っかかるんだが思い出せん。

 

「ふー……いや済まなかったな。お主等の疑いは晴れた。非礼を詫びよう」

 

 一城の主はそう言いながら頭を下げる。

 

「私からも、謝罪申し上げます」

 

 合わせてエクレアさんも頭を下げる。

 ……まあ、むしろこんな珍妙な集団をよく歓迎してくれたものだとも思うしな。

 幸い怪我をしたわけでもないし。

 

「いや、疑いが晴れたならそれでいい。ちょっと肝を冷やしたがな……」

 

「すまなかったな。先の話で合った、人が居ない理由と少し重なるところがあって過敏になっていたのである」

 

 そういえば、確か人が来ないって言ってたな。

 

「その時の悪戯って本と、人が来ない理由が重なる? どういうことなんだ?」

 

「そうだな。お主らには話しておいてもいいだろう。その本を閲覧したいというならばなおさらである」

 

 椅子から立ち上がり、窓の方に歩いていくシルヴ。

 そして、薄いカーテンを少し開いて窓の外を見てから、こちらを振り向く。

 真剣な表情だ。

 外を気にしたって事は、何か居るのか? それか、スパイとか盗聴を警戒して……?

 

「その行動はなんなのー?」

 

「雰囲気づくりである」

 

 台無しだよ。

【TIPS】

魔導書、あるいは禁書と呼ばれる本は魔法で作り出した”魔法そのもの”である

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