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19話 違和感

「ふごふご言ってるんじゃないわよ。さっさと吐けって言ってるのよ……!」

 

 転移してみた光景は、まず地に付したガーラ。

 顔がでこぼこになっており、意識はなさそうだ。

 

 次に焼きまわしの様に馬乗りになっているティリアス。

 ガーラより酷い顔になっているクラウに対して何か言っているようだが、あれ喋れる顔じゃねえぞ……。

 

「」

 

「どうしたのご主人様。なんかすごい顔してるよ?」

 

 絶句って奴だな。

 いや、予想はしていたが本当にそうなっているとは思わなかった。

 

「黙ってちゃわからないわよ! さぁ、ユウをどこにやったの!?」

 

 ……そう言われると怒り辛ぇなあ。

 別にクラウやガーラに同情出来る奴じゃないし、一応俺の事を心配しているみたいだし。

 褒めるべきか叱るべきか、ううむ。

 

 とはいえ、とりあえず止めねえと。

 やべえ、また殴り始めた。おいおいおい、死ぬわあいつ。

 

「あー……そこまでにしておいてやれ、ティリアス」

 

「何!? 私を止める奴は何人たりとも…………!?」

 

 怖い形相をこちらに見せた後、俺の顔を認識したのか顔の険が取れていく。

 

「ユ、ユウ?」

 

「はいはい悠さんですよ。お前、止めに来た観客を殴り飛ばしてないだろうな……」

 

「え? あ? してないわよ、誰も止めなかったし」

 

 それでこの惨状になったのか。

 まあ、怒り狂った鬼なんて止めれんわな。

 

「ってそうじゃないわ! どこに行っていたの!? 急にいなくなったから心配したのよ。クラウが何かしたと思ってつい」

 

 ついラッシュをかましてしまったと。

 ……それは何時間前の話なんだろうか。聞くのが怖いわ。

 

 と、そこで取れたはずの顔の険が戻ってきた。

 

「……その女の子は?」

 

 あーなるほど。

 

「えっとな、あーこいつは」

 

「どうしたのご主人様?」

 

「ご主人様って……」

 

「お前…………」

 

 頭に?を浮かべるアルマダ。

 しまったな、ここでご主人様って呼ぶなって言っておくべきだったか。

 見ろ、段々修羅が背後に映り始めただろうが。

 

「色街にでも行ってたのかしら? そんな幼い子を……」

 

「違うわ馬鹿野郎!!」

 

 なんて勘違いをしやがる。

 

「違う……もしかして。なるほどね、わかったわ」

 

 片眉をひそめた後、納得したようにうなずく。

 一体何がわかったんだ迷探偵ティリアスは。

 

「ご主人様って呼ぶ、そして突然消えて現れた。これから推測できるのは一つ。……それがトゥールーちゃんね。まさか擬人化なんて聞いた事も無かったけど、ユウの事だし、なくはないわ。どう、完璧な推理でしょ?」

 

「すげえ発想したな……その発想はなかったわ」

 

 論理飛躍しすぎだろ。

 根拠がユウだしで終わらすところが凄いわ。

 

「全然違う、こいつは、まあ色々なんやかんやあって使い魔になった。宜しく」

 

「あ、マスターの使い魔アルマダだよー! 初めましてー!」

 

「あの、もうちょっと説明を……初めまして、ティリアスよ。宜しくね。アルマダちゃんね、ん、アルマダ?」

 

 あ、そういえばティリアスはアルマダの名前を知ってるんだっけか。

 ばれるかな、こいつが、なんだっけ? 七なんとかだって。

 ……いや待て待て。よくよく考えるとおかしいぞ。

 

「おい、おいアルマダ」

 

「ん、なーに? 内緒話? ねえ内緒話!?」

 

 耳元で囁く俺に対して何故か喜ぶアルマダ。

 あんま声出すな。見ろ、ティリアスの視線がまた厳しくなっただろうが。

 

「お前記憶無くなるんだろ、なんでお前の名前が知られているんだ」

 

「えー、まあ同じぐらいの力を持ってれば多少は対抗できるから、かなあ」

 

「それならお前と会話できる奴もいそうなんだが?」

 

「ぶー! ボク結構強いんだからね! そういう人は少ないし、それぐらい力を持ってる人だと大体偉かったり退治されそうになるかもで話しかけれないよ!」

 

 ああ、同じぐらいの力ってことは下手すれば自分を倒される可能性もあるわけか。

 ……ん、俺は?

 

「その理論だと俺はお前ぐらいの力を持ってる事になるんだが」

 

 めっちゃぼろ負けしたんだが?

 

「えーわかんないー。ユウだからじゃないの?」

 

 駄目だコイツ。コイツもユウだからで終わらせる奴か。

 知将タイプがいねえ……。

 

「内緒話はその辺で。色々突っ込みどころはありますが、まあ話は後にしましょう。それよりも、はい」

 

「ん、なんだ。まだ何かあった……か……」

 

 は?

 

 え? は?

 

「…………おい、これ」

 

「ちゃんと回収しておきましたよ。感謝してもいいんですよ」

 

 どや顔のティリアスだったがそれどころではない。

 いや、おかしいだろ。

 

 

 なんで青い鱗があるんだ(・・・・・・・・)!?

 

「これ、どこで?」

 

「どこって、それはユウから奪ったクラウからに決まってるでしょう?」

 

 まてまてまて、それはありえんだろ。

 手渡しされた青い鱗。その宝石の様な輝きは間違いなくアメジスタの鱗だ。

 

 しかし、それはおかしい。

 記憶を忘れる前、俺がアルマダと一緒に転移する前は確かにクラウもガーラも二人とも持っていなかったはずだ。

 いや、可能性としては持っていたが記憶を忘れていた、という事もあるか。

 

 ……試してみるか。

 

「なあティリアス。俺が消える前にクラウをどうするか聞いたこと覚えているか?」

 

「なんです急に。もちろん覚えてますよ。その直ぐ後に消えて、本当びっくりしたんですから」


「ならその前にクラウを殴った事を覚えてるか?勿論その直前で俺がいるときに、だ」

 

 これで過去に殴っていたとしても判定外のはずだ。

 その結果は。

 

「いえ、そんな事していませんよ?」

 

「…………そうか。ありがとうな」

 

 

───嘘だ(・・)

 

 確かにティリアスの記憶からは殴ったことを忘れている。だから本人は嘘のつもりはない。

 だが、実際はボコボコに殴っていた。

 つまり、この結果からわかるのは、記憶が消えていようが、本人がそう思っていようが、事実と異なるなら嘘と判定される事だ。

 

 

 となると、やはりおかしい。

 あの時、俺はクラウとガーラに鱗を持っているか聞いて、持っていないという事に対して嘘ではないと判断した。

 だから鱗は持っていないはずなのだ。少なくともあの時点では。

 

 しかし実際今手元には鱗がある。

 

「アルマダ。お前、鱗をクラウやガーラから奪ったり、もしくはその後戻したりなんてしてないよな?」

 

「え? 鱗? 鱗ってそれの事? ううん、知らないよー」

 

 嘘じゃ、ない。

 

「どうなってやがる……この鱗はどこで消えて、どうやって来たんだ……?」


「なんだかよくわかりませんが、この二人はどうするんですか?」

 

 指さすのはぐったりして動かないクラウとガーラだ。

 ……前より酷い顔になっているが、あれ顔治るのか?

 

「……まあ、もういい。鱗も戻ってきたし、あの様を見たらな、復讐する気も失せた」

 

「そうですか、まあ私もすっきりしましたし、良しとしましょう。……居なくなった子供を思うと、薄情かもしれませんが」

 

 まあ、やった事を考えれば大罪だろう。

 俺はティリアスの肩を叩く。

 

「気負うな。言っちゃなんだが、知らない人間の命まで背負うと、重みでつぶれるぞ。あいつらの事はもう忘れろ。そうやって、お前の価値を下げる様な、意味のある人間じゃないからな」

 

「ふふ、励ましてるの? でも、そうね。ありがとう」

 

「構わんさ、お前の言葉だ」

 

「え? どういう事? そんなこと言った?」

 

 言ったさ、覚えてはいないだろうがね。

 

「さて、しかし……これからどうするかね」

 

 目標であるクラウをボコる、鱗を取り戻すって事は完了した。

 ……正直次の目的はないんだよな。

 

「お前らはどうするんだ?」

 

「そうですね、特には何も」

 

「ボクもー特にないよー」

 

「俺が言うのもなんだが目的意識薄すぎだろ」

 

「だって、生きるのに目標は必要ありませんし」

 

 はー……これだよこいつらは。

 まあ、元の世界で特に目標無く生きていた俺が言える立場じゃないか……。

 殆ど惰性で学校に通って、これって目標ってものはなかったしな。

 

 ん、元の世界……ああ!

 



「そういえばお前ら翁って知ってるか?」

【TIPS】

この世界で人外、化物と呼ばれる者は少ない。

それは見た目の話ではなく、その能力があまりに逸脱している者を指すからである。

広い世界の中、多種多様な種族が存在するこの世界でそれだけの力を持つ存在は珍しい。

しかし誰もが知っている中でそう呼ばれる存在の一つが龍なのである。

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