表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/75

18話 使い魔

 ……それからどれぐらい経っただろうか。

 

 

「…………ここまでの力を持っているとは思わなかったよ。ユウ。凄いね」

 

 そう言って、空中から降りてきて俺の頭を撫でるのはアルマダ。

 それを跳ね除けるような力は俺には欠片も残っていない。

 

「ボクの魔法を、ううん、ボクを追い詰めた人間は初めてだ」

 

「はは、ありがとよ……追い詰めた、のかね。必死すぎてどうなったか全然わからねえよ」

 

 糸が切れた人形のように身体が言う事を聞かなくなった後、光はほどけるように消えた。

 そこまでは覚えている。しかしその後、赤い矢は飛んでこなかった。

 

「うん、ボクの魔法 <到達せしあか(オーダーズ・ユー)>は、君の魔法に負けた。そりゃもう、消え去ったさ」

 

「ああ、一応そこは、勝ったのか」

 

 どうやら、最後の激突は俺が勝ったらしい。

 しかし身体はぼろぼろの血まみれで、横に倒れた俺と傷一つない元気なアルマダ。

 

 実際の勝敗は明らかである。

 

「けど、高々1回分だろ。これをあと9回なんてやってられねえよ」

 

 そう、あと10回撃てるのが本当であれば、俺の力はその10分の1をしのいだに過ぎない。

 

「……これから、俺はどうなる?」

 

「そう、だね。勝ったものが、負けたものの言う事をなんでも聞く、だったよね」

 

「逆だ逆。俺はそれでもいいが」

 

 動くのは口ばかり。あ、いや一応目も動くか。

 ちらりと周りを視界だけで見てみれば、なるほど、俺はどうやら地面に仰向けで寝ているらしい。

 身体の白い鎧は消えているし、剣自体も消えていた。

 

「ああ! えっと……勝ったものが負けたものの、違う、負けたものが勝ったものに言う事を、じゃなくて……」

 

「ポンコツかよ……はあ、俺から言いたくはねえけど、負けたやつが、勝った奴の言う事を聞く、だ」

 

 どうなるか、わからない。

 けれど、まあ、そこまで悪い扱いはされない、はずだ。多分。きっと。

 

「あ、そうか。頭いいねユウ。うん、一応聞くけど……まだ、やるつもりはある?」

 

 そう言って俺の顔を上から覗き込む。

 くりくりした瞳が純粋な疑問を写しているあたり、皮肉や悪気があるわけではないだろう。

 本当思考回路は単純なのだろうなあ。

 

「あると思うかよ、この状況で。もう口しか動かねえ。……俺の負けだ」

 

 そう負けを認める。

 完敗だ。あの力をもってしても、負けた。

 

 めっっっっちゃ悔しいし恥ずかしいけどな!!

 

 しゃーない、切り替えていけ。

 まだ一日目でこれなら明日には倍の力になっている。

 その翌日は4倍。更に8倍と一週間経たずにアルマダに勝てるはずだ。うむ。

 しかし、なんでもいう事を聞く、か。

 

 俺のものになれ! みたいな事を言っていたがやはりそうなるのだろうか。

 

「ふうん、じゃあボクの勝ちだね! ……何か言いたいことはある?」

 

「ふむ? 言っていいのか。なら俺の命は助けてくれ。あと人を殺す様な命令は駄目だ。犯罪的な行為もだめだぞ。それとティリアスは関係ないので手を出すな。痛い事もNG、俺を傷つける事全般NGだぞ。拷問とかは勿論だが自爆特攻とか言葉攻めも含むからな。心に関する精神攻撃も同様だ。人質は心にダメージが行くから当然禁止。なんでもと言ったが節度は守れよ、俺をものにするなら衣食住は快適にすること、俺の意思は尊重すること、エッチな事は存分に許す。あ、お前だけな。それ以外は要相談。あとそれと」

 

「多いよ!? ええっと、ちょっとまって! メモするからもう一度……」

 

「律儀か!! はあ……まあ無茶な事言わなきゃいい。んで、要望は俺をものにすることかい?」

 

 こんな相手だから、どうにも悔しがるというか、負けたっていうか、そういう敗北感じゃないんだよな。

 これがクラウとかならもっとあがいていたと思うが。

 

「うーん、どうしようかなあ……」

 

 と、そこでむむむと悩み始める。

 おいやめろよ、やっぱり危ないから殺すね、見たいな事展開は困る。

 大人しく元の要求で満足していけ。

 

「うーんうーん……よし、決めた」

 

「マジで命だけは勘弁してください」

 

 二度目の死はやめてくれ。本当あれきついんだよ。寒気と恐怖が半端ねえ。

 なんか不思議な力でよみがえったみたいだが、勇者よろしく何度もコンティニューできるかはわからんし。

 

「殺すなんてそんな事はしないよ!! もう!」

 

「やったぜ」

 

 言質取った。

 

「口は動くんだよね? じゃあ……」

 

 鎌を置くアルマダ。

 何をするつもりだと思った時、上を向いている俺の視界に赤い光が現れる。

 これは、地面に魔法陣か?

 

「契約を此処(ここ)に結ぶ。望むは使い魔の契約。結ぶは縁。我が名はアルマダ。ユウ、契約に同意するって言ってね」

 

 使い魔ってなんだよ。

 イメージ的には監視とかにつかう小さな悪魔的な感じだが。

 

 あ、いや異世界に飛んだ奴が使い魔になる展開もあったな。

 まさか俺がそうなるとは思ってなかったが。

 

「それが勝者としてのお願いでいいな? 命令は一つだけだぞ?」

 

「キッチリしてるなあ……いいよ、それで。ボクも決めたから」

 

 苦笑しながらも笑顔でそう言う。

 ……ま、そうだな。この可愛い悪魔の使い魔になるのも、それも異世界生活だ。

 

「いいぜ、契約に同意する」

 

 すると、ひと際赤い光が強くなる。

 

 

「契約は結ばれた。……これからよろしくね

───ご主人様」

 

 そういうと、アルマダは顔を近づけてきて。

 

 

 俺の唇を自分の唇でふさいだ。

 

 

「!?」

 

 ちょま、俺ファーストキスなんですけど!

 あかん、二人の恋の歴史始まっちまう。

 

「ん……」

 

「!?!?」

 

 こ、こいつ俺の口内に浸食を!!

 や、やめろお! ぶっ飛ばすぞお!

 くそ動けないことをいいことに!

 

 っく、殺せ!

 

 

 

「ぷは……ふう…………もっかい」

 

「もっかいじゃねえよ!! なにすんだてめえ俺のファーストキスを結構なお点前で奪いやがってって……ん、あれご主人様?」

 

 衝撃で忘れかけていたが最後コイツなんていった。

 ご主人様って言わなかったか?

 あれ、おかしくね?

 

「うん。あ、マスターとかの方が良かった?」

 

「その枠は埋まっているから。ってなんでご主人様なんだよ。あの内容からして俺を使い魔にするんじゃねえのか?」

 

 すると頭をこてんと横に倒して、言った。

 

「違うよ? ボクが使い魔(・・・・・・)だよ。主人はユウ。だから、ご主人様」

 

「……なるほど?」

 

 逆だ逆。

 

「どうしてそうなった」

 

 わけわからん。

 

「なんで負けたやつの使い魔になってんだお前」

 

「えっとね、使い魔って力を制限されるんだよ。そこでボクは思いつきました。ボクが使い魔になれば、記憶を溶かす力も制限されて、みんなとお話しできるのではないか!ってね」

 

「はぁ……最初から誰かにそれやればよくね? 俺じゃなくてもよかったんじゃないか、まあ一般論でね?」

 

「駄目だよ! 使い魔は主人に逆らえないんだから変な奴の使い魔なんて絶対なりたくないんだからね! でもユウなら良いかなって……」

 

「俺とお前はほぼ初対面なんだがそれはいいんですかねえ……キスまでしやがって」

 

 そう言った俺に対して僅かに寂しそうな顔をした後に、悪戯が成功したような小悪魔的な顔を見せる。

 

「使い魔の契約にはお互いの体液が必要なんだよ」

 

「騙されんぞ。それ今流れている俺の血でよかったよな? 後口に舌入れる必要もないよな?」

 

「ボク知らなーい! あははー」

 

 くるくると身体を回しながらアルマダが答える。

 

「たく、負けた側がご主人様とか、予想もしてねえよ」

 

「……怒ってる?」

 

 不安そうな顔で見てくるアルマダを鼻で笑う。

 

「いや、使い魔にされるよりかは、ずっと楽しそうだ」

 

「……ねえねえご主人様」

 

「……重い」

 

「そ、そんな重くないよ!! もう!」

 

 俺の横たわった身体に、重ねるようにアルマダが身体を乗せる。

 実際そこまでは重くないが、弱っている俺では微妙にきつい。

 

「ご主人様」

 

「さっきからなんだよ」

 

 よほど気に入ったのかご主人様を連呼する。

 まあ気分的には悪くないのだがな!

 

 

 その時、小さな、けれどとても響く声でアルマダは気持ちを吐露した。

 

「───大事にしてね?」

 

 ……やれやれ。厄介な子供に、憑かれちまったようだ。

 家族がいない悲しみってやつは、俺にもわかるからな。

 ま、同類相哀れむってやつかね。

 

「仕方ねえな、けど、ちっと休むわ。俺を守れよ使い魔。起きたら元の場所に戻せ……お前じゃ説明できそうにねえからな」

 

 このまま瞬間移動で元の場所に戻ったらどうなるか、嫌な予感がするので俺が起きてからにするのはきっと英断だろう。

 本当はこんな場所じゃなく、ベッドか何かで眠りたいが疲労と眠気が半端ないのでやむなくここで寝る。

 

「はーい。おやすみ、ご主人様」

 

 そう言って意識が落ち始める。

 いやしかし、全くもって激動の一日だったぜ。

 

 龍と出会い、殺され、力を得て、復讐し、悪魔に出会い、使い魔にする。

 やれやれ、とんだ三文小説だ……ぜ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を覚まして数分。

 未だ俺は荒廃した大地にいた。

 理由は簡単だ。

 

「あのさあ……お前はよぉ! お前も痴女枠か!? 寝ている間にお前らはなんで人の身体をどうこうしようとするんだ! 男女逆なら即敗訴だぞおい!」

 

 お前ら、と言うのは勿論ティリアスとアルマダだ。

 

「こ、この体勢足痛い……」

 

「正座って言うんだ。お前はよく使うだろうから覚えておけ。素足に地面は痛いだろうが容赦はせんぞ」

 

 痴女の様な格好、そういやこいつやっぱ痴女枠だったわ。

 胸と股間を隠すだけの露出狂みたいな恰好のアルマダは当然足はむき出しだ。

 あ、靴は履いてるぞ。素足ってのは太もも的な意味だ。

 

 そこにこんなごつごつの地面に正座はそりゃ痛いだろうが、そうせざるを得ない。

 

「まず起きた時俺の口がべっとべとになってたのはお前のせいだな?」

 

「…………」

 

「おう目をそらすんじゃねえぞ」

 

「つい……魔が差して……」

 

「魔はお前だろうが。ったく、寝ている時に俺に悪戯禁止! わかったら復唱!」

 

「はい、寝ている時に悪戯しません……だから立ち上がらせて。足が、なんか、感覚が……」

 

「痺れって言うんだ。お前はよく味わうことになるから慣れておけ」

 

 たく! うちのメンバーは痴女だけか!

 ティリアス!(股間接触未遂) トゥールー!(自慰強要) アルマダ!(無断キス) どいつもこいつも!!

 ってかトゥールーの声も聞こえねえ。呼びかけても反応はねえし。

 まあいいか、剣だしゃ出てくるだろ。

 

 

「次は男を仲間にしねえとな……っと、もういい、さっさと元の場所に戻るぞ。……力制限されて出来ねえとかそんなオチはねえよな?」

 

 大丈夫!と大きな声を出しながら許可が出た瞬間立ち上がり、がくりと体勢を崩す。

 

「あ、足が……」

 

「ほれ、早くしろ。寝てしまったから結構時間が経っちまった。最悪の事態が起きているとまずい」

 

「最悪の事態?」

 

 まあこいつにはわからんだろうなあ。

 

「ティリアス、俺の近くにいたあの鬼の女だが、クラウ達をボコっているか、最悪は殺してるかもしれんからな……」

 

 記憶が消えていたし、今どうなっているのか正直怖え。

 そのあとすぐ移動したから、それ以上の影響はないと思いたいが……アルマダの方を見る。

 

「ふーん?」

 

 わかってねえな。アルマダに影響がどうなっているか聞いてもわからないや、で返ってきそうだ。

 であればさっさと戻る事が一番だ。

 アルマダの事は覚えていないだろうから、まあこのまま連れてっても大丈夫だろう。

 ……本当に大丈夫か?

 

「なあ、お前力を制限されてるって言ったよな? それは連れてっても記憶が消えねえってことでいいんだな?」

 

「うん、大丈夫。意図的にしない限りは記憶は溶け消えないよ!」

 

 意図的って所が凄い気になるが、まあ自動で発動しないならまだましか。

 その後、実は転移出来ないんじゃないかと言う懸念は外れて俺とアルマダは瞬間移動をした。

 ……わりと時間がかかったのは制限のせいか? コイツ絶対戻れる確証なく大丈夫って言っただろ。

【TIPS】

契約とは相互の同意がなければならない。

そしてそれが犯された時、破った者に強大な罰が下り、死に至ることもある。

それだけ契約というのは強力であり守るべきものである。


……ただし、一部の能力、魔法、力の差によっては一方的に行える事もある。

しかしそれは相手の意志を奪う、最悪の方法の一つである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ