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20話 吸血女王

「そういえばお前ら翁って知ってるか?」

 

 そうだよ、そういえば翁を殺せって言われてたんだった。

 ……なんで殺さなきゃならんのかわからんが。しかも本人からだし。

 自殺願望か? 理由はわからんが殺す、殺さないは置いておいて、取り合えず探し出すのは悪くない。

 

 

「翁?」

 

「おきなー?」

 

 二人して声を上げて考え始める。

 最初に口火を切ったのはアルマダだ。

 

「なんか聞いたことあるよーなないよーな……わかんない!」

 

「私はちょっと思い当たりはありませんね。竹取の翁とは違うの?」

 

 多分違うと思うぞ。

 しかし一人は別として知らんか。あいつ知名度ねえなあ。

 

 はーまた手掛かりゼロからですか。

 

 

「時間を間違えた異端。時の翁」

 

 

「うお! お、お前突然話しかけてくるなよ!」

 

 突然声が響く。

 

「あれ? ああ、この声がトゥールーですか」

 

「え? トゥールー?」

 

「今まで何も喋らんかったのに……ってお前ら声聞こえるの?」

 

 あれ、今まで声聞こえてなかったよな?

 俺だけに聞こえていたはずだが。

 

「聞こえますね、ああ、アルマダ。トゥールと言うのはユウの固有武想の人格みたいですよ」

 

「へーそうだったんだ。なるほど、これからも宜しくねトゥール!」

 

「肯定。初めまして」

 

 お、おう普通に話し始めたがお前剣出してねえのにどっから喋ってんだよ。声帯もねえだろ。

 

私のマスター(・・・・・・)共々宜しくお願い致します」

 

「…………ふぅん」

 

「…………へぇ」

 

 おや、おかしいな、何故か寒気がするな。

 って、そこじゃねえ。のんきに挨拶してる場合じゃない。

 

「おいトゥールー。お前今なんて言った? 時間を間違えた、とか。翁の事について何か知ってるのか?」

 

「否定。私もそれぐらいしか知識がありません」

 

「なんでそれは知ってるんだよ……」

 

「不明。言われて初めて解りました」

 

 使える様な使えないような微妙な奴だ。

 と言うかコイツ俺の剣、固有武想のくせに謎が多すぎるんだよなあ。

 能力について答えなかったり、途中で反応しなくなったり。

 

「あ、そうか時の間違いだ! 思い出したー!」

 

「今度はお前か、わかんないって言ってたのはまあ、置いておいて……何を思い出したんだ?」

 

 嬉しそうに跳ねるな跳ねるな。ってかこの翼にも誰も突っ込まないんだな。

 悪魔って普通にいる存在なのか?

 

「あのねー時の間違いって本に確かその時の翁って名前があった気がするよ!」

 

 それに反応したのはティリアスだ。

 

「時の間違い、ですか。ひょっとして灰色で砂時計の絵の表紙だったりしますか?」

 

「あ、そうそう! そんなのだったよー!」

 

「知っているのかティリアス」

 

「名前だけは。ただ、無くなったはずの禁書と……」

 

 また厄が深そうなレア物な単語を……。

 しかし、その翁が時の翁かわからんが、なんとなくそれっぽいな。

 間違いって単語が、不思議と引っかかる。はて、何故だろう。

 

「禁書、ねえ。普通の本屋とかには売ってそうにねえな」

 

「売ってたら即捕まりますよ……」

 

 呆れた顔をするティリアスだが俺はそんなこと知らん。

 あ、やれやれ見たいな顔しやがった。

 

「ったく、アルマダ。その内容は覚えて……なさそうだな?」

 

「うん!!」

 

「知ってた。んじゃ、その本どこで見たかは覚えてるか?」

 

「えーっと…………ちょっと待って思い出すから」

 

 こいつ自分の記憶も溶け消えてるんじゃねえのか……?

 頭に手を置いて唸り始める事数十秒。

 

 ぴこーんと頭に豆電球が灯った様な満面の笑顔で顔を上げる。

 

「そうだそうだ! あそこだ! バーバルディオ大図書館!」

 

「アルマダが4文字以上の単語を覚えているだと……? ってかその図書館はどこなんだよ」

 

 こいつにそれだけの記憶領域があったのか。

 てっきりバー何とか図書館ぐらいだと思ったが。

 

「むぅ、それぐらい覚えてるよ! つーん、もう場所は教えないから!」

 

 あ、へそ曲げやがった。

 子供かよ。いや子供だったわ。

 

 ちらりとティリアスの方を見る。

 首を振った、知らないらしい。トゥールー?

 

「不明」

 

 …………はー。

 

「アルマダ、場所を教えてくれ。頼む」

 

 腕を組んで顔をそらし目をつむるアルマダに向かって下手に出る。

 すると、片目を開いて、にやりと笑うと。

 

「じゃあちゅーして。ちゅー あいたっ!!」

 

「馬鹿なこと言ってないでさっさと話せ」

 

「むー……まあいいよ」

 

 と、意外な事に聞き分け良くそう言った。

 もっとぐずるかと思ったが。

 

「んとね、場所はね。吸血鬼の女王城! その中にある異空図書室。それが、バーバルディオ大図書館だよ」


 その場所に、俺は勿論聞き覚えはない。

 しかし、ティリアスの顔とその名前からして、とんでもなく面倒で、危険そうな事はひしひしと伝わった。


「吸血鬼の城、ねえ。おどろ恐ろしいイメージしか無いんだが、と言うかアルマダはなんでそれを知ってるんだよ」

 

 立ち話もなんだし、と言うティリアスの提案で一度ティリアスの家に戻ってきた俺達は床板がギシギシいう所に座りこみ話をしていた。

 それをおもしろそうに身体を揺らすアルマダに、やめろまじで床が抜けると言い含めてから話を振るとと動きを止めて話し始めた。

 

「えっとね、むかーしお城に行ったことがあって、その時に見たの」

 

「いつ、どこで、なぜ、だれが、どうしてあたりが全て抜けてるな。まあこの際細かい所は置いておいてだ、そこに行くにはどうすればいい? あの瞬間移動で行けるか?」

 

「無理ー、あの移動はマーキングしてるところしか行けないんだー。あ、ちなみにもうマーキングしてるところは無いよ。だからここ以外どこにもいけなーい」

 

 はあ、これだよ。痒い所どころか背中にも手が届かない。

 しかしそうなるとどうするかね。

 

「そうなると歩きなのか? そこまで行く乗り物とかあるのか?」

 

「流石に吸血鬼の城への直行便は無いんじゃない?」

 

 ティリアスが若干困り顔でそう言うが俺もそう思う。

 ……ないよな?

 

「んーでも歩いていくとすっごく遠いよ?」

 

「どれぐらい遠いんだ?」

 

「えっとねー……えっとねー……いっぱい」

 

「お前がポンコツなのはわかってたがこれ程とはな、はあ、質問を変えるか。数日で着くか?」

 

「無理ー」


「数十日?」

 

「うーん無理っぽい?」

 

 そうなると最低でも数か月か。流石にそれを歩くってのは現実的じゃねえな。

 とはいえ、ほかに目的もないが……

 

「あ! でもなんとかなるかも!」

 

「そういうのはなあ、早く言えよ!!」

 

 ぐりぐりと頭を強くこする。

 若干嬉しそうに痛い痛いと話すアルマダ。こいつドMかよ。

 

「えっとね、迎えに来てもらえば良いんだよーこっちから行けないから、向こうの人から迎えに来てもらえばいいんだよ、【共振通話】で呼べるはずだから!」

 

「……ちょっとまて翻訳するから」

 

「つまり、吸血女王の城にいる誰かに連絡をとって、こっちに来てもらった後瞬間移動か何かで移動する、という事ですね?」

 

 ティリアス、お前よくわかったな……。

 しかしアルマダは本当もう、子供だな。

 

「アルマダ、お前何歳?」

 

「内緒」

 

 こういう時だけ流暢かつ断定的に喋りやがって。

 女性に歳を聞くのはマナー違反? 知らんな、それはレディにしか通用せん。

 

「ちなみにティリアスは?」

 

「え”? ま、まあいいじゃないですかそんなことは大した問題じゃないですよ別に気にしてないですけど女性に歳を聞くのはよくないですよもう困りますねあはははは」

 

 焦りすぎだろ。だからそういうのはレディだけに通用するんだぞお前ら。

 ……まあ別にそこまで気になるわけじゃないからいいけどな。

 

「ふうん、30は超えてたりする?」

 

「ちょっと! そんな年に見えっ……危ない。確か貴方は嘘がわかるんですよね。そうやって段々絞っていこうとしているんでしょう!?」

 

 っち、こういう時にばかり勘のいい女だ。

 ま、別に遊びでやってるだけで別にそこまで気になってるわけじゃない。

 

「アルマダ、お前悪魔だし実は百歳とか超えているロリババアだったりするか?」

 

「超えてないよ!! ……嘘わかるんだよね。これ以上はぜえええええええったい答えないからね!!」

 

 先にアルマダの方を聞いておけばよかったか。


「ってかお前らそこまで気にする年齢じゃねえだろうが……だろ?」

 

「…………」

 

「…………」

 

 こいつら黙りやがった。なんて奴らだ。

 会話もしてくれないとか酷い仲間たちだぜ。

 

「はあわかったわかった。で、そいつと連絡を取って迎えに来てもらうって事で良いのか?」

 

「……うんそうだよ」

 

 警戒しながらそう答えるアルマダ。

 こいつらはどんだけ歳を気にしてるんだよ。

 全く、俺は全く気になっていないのに。

 

「それはすぐ来てもらえるもんなのか?」

 

「うーん、どうだろう。向こう次第かなあ、でも準備もあるだろうし少し時間がかかるかも?」

 

「ついでに、普通に行くわけだが本とかは見せてもらえる感じなのか?」

 

「気分次第、かなあ。機嫌が良ければ大丈夫かも? ごめんね、断言は出来ないや」

 

 うーむ、行っても見せてもらえない可能性があるのか。

 とはいえ、乗り込む程の動機ではないし、見せてもらえなかったらその時は観光って事でいいか。

 吸血鬼の城、なんては興味があるしな。

 

「わかった。んじゃそれまでは……どうするか。自由時間で良いか」

 

 そういえば今までがずっと行動しっぱなしで、自由な時間なんてなかったしな。

 町の中も見回ってないし。

 ……確かめたいこともやりたい事もあるしな。

 

「自由時間ですか、それなら私は服でも買いに行くわ。今着ている新作が出ているみたいだし」

 

 ほう、地味に女子力が高い事を。

 

「はーい、ボクは」

 

「お前は連絡を取る重要な係だろうが、終わってからだ、終わってから」

 

「えー……それが終わったら遊んでくれる?」

 

「ああ、存分に(ティリアスが)な」

 

 やったーと喜ぶアルマダ。

 これでさぼったりすることはないだろう。

 たまには飴もやらんとな。ククク……。

 

「なんか邪悪な笑いをしてませんか? ところでユウはどうするんですか?」

 

「失礼な事を言うな。俺は……ま、色々だ」

 

「そうですか。まあ目的があるなら良いですが……集合はここですか?」

 

「ん、まあとりあえずはここで良いだろう。日が落ちる頃に集合で。んじゃ解散」

 

 そういうとアルマダは何やら魔法陣を出現させて集中している。

 やはり飴が効いているな。

 ティリアスは……ベッドの下から何やら袋を取り出している。

 ああ、中に金が入っていたのか。

 

「あ、み、見ないでくださいよ! へそくりなんですから」

 

「お、おう……」

 

 何も言わないことにしよう。色々と。

 ……帰りに何か買っていってやるか。

 

「さてと、んじゃ俺はちょっと出てくる」

 

「はい、いってらっしゃい」

 

 帰ってきた声はティリアスだけだ。

 よほど集中しているらしく、アルマダは目を閉じてじっとしている。

 吉報を期待して俺は家を出る。

 

 さて、自由時間にしたい事は決まっている。

 お金稼ぎと力試しだ、であれば一石二鳥という事で。

 

「ギルド、行くかね。依頼ってのも気になってたしな」

 

 初めて異世界に来てから、まともな異世界生活な気がする。

 そんな事を思いながら俺はギルドへと向かった。

【TIPS】

 多種多様な種族がいる中、吸血鬼と呼ばれる種族の特徴はやはり名の通り吸血だろう。

 他者の血を吸って生きる種族、吸血鬼であるが、忌避するものはそれほど多くない。

 理由は吸血鬼が基本的に誇り高く、また他者の血を吸うという所から、種族に偏見がないからだろう。

 だからといって、怒りに触れていいものではない。死よりも恐ろしい目にあうだろう。

 ───吸血鬼マニア ダルダダーンの著書より

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