2.彼女の角はそうなのかそうでないのか
角の話をします。
ずっと書いてきました。ベルローズの角は敏感な部位です、と。
魔力を使いすぎると熱を持つ。それをルシアンが冷やしている。
一度暴走しかけたところをこれまたルシアンに止められ、その後、角には蒼い結晶まで残っている。
ここまでやっておいて、私は今まで一度も、
「ベルローズの角は性感帯です」
とは書いていません。
なぜなら作中では、あくまで「敏感な部位」だからです。
魔力の源泉でもある彼女の角は、ほいほい生え変わったりもしないし、切られたり削られたりしても感覚のない場所ではないのです。
というか少し横道に逸れますが、なぜ『異形』とされるような部位は性感帯として描かれることが多いのでしょうか?
角もそうだし、エルフの長いお耳然り、耳や尻尾や羽然り。
あんな、直接的に性的な部位を書かなくてもなんだかえっちになってしまうのは、けしからんと思うのですが。
お前が読んだり見たりしてるものがそうなだけだって?
そんなばかな。
……大事なことなので、もう一度言います。
作中では「敏感な部位」です。
作者の脳内では?
どう考えても、そうだと思うのです。
いや、だって。
ルシアンの手で角をさすさすされたら、そりゃ何かしら反応するはずです。
そういう相手に、そういう雰囲気のときにそういう感じで触られて、何も感じない場所であるはずがない。
むしろ何も感じないほうが私は「どういう身体構造なんだよ」と思う。
思ったっていいじゃないか。
ただちょっと真面目な話をすると。
ここで重要なのは、角そのものが単純に「触られたら気持ちいい場所」というだけではないんですよね。
ベルローズにとって角って、かなり特殊な場所。
魔女としての魔力の本流そのものに繋がっていて、熱を持つこともある。
暴走の痕跡が残っている場所でもある。
そして何より、彼女が自分の異形性を強く意識する場所でもある。
だから、誰かに無遠慮に触られるのは絶対に嫌だと思う。
「角が敏感だから嫌。触らないで」というだけじゃない。
「そこに触れるということは、私のかなり深いところまで踏み込むことになる」
という感覚なんじゃないかな。
だからルシアンなんですよ。
彼だけは、そこに触れることができる。
ルシアンは、角を異形だから珍しいとか、魔女らしくて美しいとか、そういう外側からの視線で見ていない。
普通にベルローズの身体の一部として見ている。
熱を持っていたら冷やすし、具合が悪そうなら触れて確かめる。
必要ならそっとなでなでする。
それだけ。それだけなんだけど!
この「それだけ」が、ベルローズにはたぶんものすごく大きい。
ヴィクトルが角に触れるときには、必ず白手袋をする。
そこにあるのは、異形のものへ直接触れないという明確な距離。
でもルシアンには、その距離がない。
彼にとっては角も髪も、手も頬も全部、彼女を構成するものでしかない。
だから私は、ルシアンが角を触るときって、単純に「敏感なところを触っている」というだけじゃなくて、
「ここもあんたの身体だろ」
くらいの気持ちで扱っているんじゃないかなと思っています。
そしてベルローズも、それが分かっているから拒まない。むしろ、ルシアンに触れられることだけは許している。
というところまで考えた結果。
作者としては、
「いや、これ絶対そこ性感帯だろ」
という結論に至りました。作中では言いません。
たぶん今後も言いませんが、でも私はそう思っています。
ここを読んでくださった方だけの秘密にしておいてください。
だって、魔力使いすぎると熱くなって、ルシアンの氷の魔力で冷やしてもらって、暴走しかけたところをルシアンに止めてもらって、今ではそこに蒼い結晶までできてるんですよ。
そして、その角をあのルシアンが大きな手でそっと撫でるんですよ。
……何も起きないほうが無理がない?
私はもう、そういうことにしています。
ただし、ベルローズ本人に聞いたら、
「何の話をしているの?」
って、ものすごく冷たい顔をされると思います。
じゃあこっちに、ってルシアンに聞いたら、
「知らねぇよ。あんたが勝手にそう思ってるだけだろ」
とか言いそうです。
でもたぶんルシアンは、ベルローズの角を撫でたときに彼女の反応がちょっと変わることは、とっくに知ってる。
そういうところだけは、異様に観察眼がいい男なのである。
というわけで、今後も作中では「敏感な部位」としてお送りいたします。
深夜の裏庭なので、このくらいの開き直りは許してください。




