癒し
気がつくと、目の前には木の天井が見えた。手足は縛られて、動けないが、辺りを見回すと、窓からは光があまり差さず、かわりに火を灯していた。壁にはヤギをモチーフにした刺繍が飾られ、古びた戸棚、その上には小物などが飾られていた。服装も、盗賊が着ているような布一枚で、赤いドレスや靴も見当たらなかった。ただ、後ろの方から煙が立っており、ヒノキを燃やした優しい香りが空間を包んでいた。何もできないので、ただ天井を見上げていると、しわくちゃの顔で、腰を曲げ、布に身にまとった一人の老婆が、湯呑を手にして、ドアからやってきた。
おやお目覚めかい?赤い爪のお嬢ちゃん。
ここはどこだ?誰を捕らえたのかわかっているのか?離してくれ。
おやおや、元気なことだとこねぇ。せっかくのお茶が冷めちゃうよ?
毒が入っているのか?
そんなわけないさ!強情っぱりだね!
ダミ声で怒鳴られたので、ペディは恐れをなした。
さぁお飲み。
ペディは顔を上げて、一口つけると、その酸っぱさと独特な木の香りに蒸せてしまった。
なんだ?私のお茶が飲めないってのかい?鼻をつまんででも飲み干しな!
言われるがままに、ぎゅっと目を閉じて、一気に飲み干した。鼻から通る茶の香りに、不快感を覚えたが、体を温めてくれた。
このまま拷問するのか?爪を剥がすのか?
お嬢ちゃん。心配しなくていいんだよ?ただ、今を受け入れなさい。
老婆はおもむろにペディの顔の脇に座ると、呪文を唱え始めた。その呪文がどういう意味を持つかは分からなかったが、老婆の出る低い声とともに、お香の香りも相まって、私を優しくつつみ込んでくれた。すると、目の前が鮮やかになり始めて、怖くなったが、老婆の今を受け入れろという言葉を思い出し、静かに目を閉じた。
急に目の前に、マルゲリータが裸の姿で現れた。おもむろに、彼女は、アルベルトらしき人物と、愛を交わしう姿へと変わったが、その束の間、ガチャンとギロチンにかけられた。何も言わずに、頭が落ちたが、それが目の前へと浮いてきた。彼女はじっとこちらを見つめると、その目が何重にも広がり、辺りを見回しても目が辺りを埋め尽くしていた。私はこの世のものとは思えない声で発狂し続けた。するとエレナが優しく包んでくれて、穏やかな愛に包まれた。
気づくと、天井が見えた。汗と涙でびっしょりだった。呼吸も荒くなっていた。今のは何だったのか分からないがペディは、どこか安らかな気分を覚えた。
おや?気づいたかい?
老婆は立ち上がり、ゆっくりと縄を解いてくれた。




