ヴァル国の悪役令嬢
翌朝、アルデン国の兵士と共に、ローゼリアへ向かった。身を整え、しばしギロティーニュの動きを警戒しつつ退屈な時を過ごした。ギロティーニュも迂闊にローゼリアに攻められないのは、ギロティーニュ北部の反抗勢力の存在や、ギロティーニュとローゼリアの間の穀倉地帯の存在がある。図体の大きい国を維持するためには、食糧問題は大きな課題なのであるので、畑を踏み荒らすことは容易にはできないわけだ。
いつものように、薔薇の紅茶を飲み、優雅な時を過ごしていると、汗臭く血や泥にまみれたエドガーが、部屋に転がり込んできた。
無礼だぞ!貴様。
失礼!たった今ヴァル国の女王、マルゲリータを捕らえてまいりました。
おぉ!よくやったぞ。
エドガーによれば、これまで沈黙を保ってきたアルデン国が、盆地の先の山奥に一気に攻め入り、ヴァル城を落としたというのだ。アルデンの兵士は山の地形に慣れているので、容易なことであった。
数日後、民衆の集まるローゼリア国の石造りの街の広場で、アルデン国のアルベルトとともにペディはギロチン台の脇に立っていた。アルベルトが後ろめたい表情を浮かべているのが気になった。
しばらくすると、兵士に両脇を抱えられ、手枷をはめられて、白く簡素な布に身をまとった、私と同じくらいの若くてかわいらしい姿の少女が登ってきた。その姿にペディも軽い動揺を見せたが、取り直した。髪は切られうなじが露わになり、足元には何も身につけておらず、黒いペディキュアが塗られているのみだった。死を象徴する黒い薔薇の色だ。
彼女は何の動揺も見せず、素直にギロチン台にかけられた。ペディは彼女の顔まで腰を下ろし、最後に何か言うことをないかい?と問うと、こちらではなくアルベルトの方へ向かい、こう呟いた。
裏切ったな。この下劣野郎。
ペディはその場で固まった。その瞬間、ギロチンの刃が落ちて、マルゲリータの首が赤い血を散らし、カゴへ吸い込まれていったのを目の前で見てしまった。興奮冷めやまぬ民衆の歓声の中、動揺で、その場で動けないでいると、アルベルトに肩を抱き抱えられた。その体にはむしろ冷たさを感じられた。
頭はカゴへ落ちてから髪の毛を掴まれ晒し台へ運ばれるまで、ジッとこちらを睨んでいた。赤い血に染められたワンピースを着たままの身体は、広場の背の高い十字架にくくりつけらた。頭はその足元の台に晒され、血が黒く染まるまで民衆の前に放置された。




