親衛隊
ペディはすっかり怪我が治り、久しぶりに王座に座ることができた。紫のドレスにヒールの靴を履く普段の女王陛下の姿だ。エレナが注ぐ薔薇の紅茶の香りも懐かしく思えた。いつもの落ち着きを取り戻し、優雅な時を過ごしていると、おもむろにドアが開いた。
エドガーか!
数名の兵士が入り整然と立つ。その前には見覚えのある上級士官が堂々と立っていた。
お前は!
女王陛下の親衛隊隊長ニコラ少佐であります。本日ご挨拶にあがりました!
ご苦労である。今後とも宜しく頼むぞ。
は!では、失礼します。
ニコラ少佐だけ残れ。
他の兵士は敬礼して立ち去り、ニコラだけが残った。
こうやって飄々と現れるところは、エドガーそっくりだな。
とんでもないです。
お主が私をおぶってくれたこと、感謝している。
光栄でございます。
そう緊張するな。親衛隊を務めるならば、今夜私と付き合わないか?
と、いいますのも?
お前も無骨者だな。今夜寝室で待っているのでぜひ来て頂きたいのだ。
・・・承知しました。
下がってよいぞ。
失礼します!
そう言って、ニコラは立ち去った。ペディはエレナとともに、クスクスと笑った。そして、夜になり、寝室で、普段のごとく本を読んでいると、ドアのノックとともに、ニコラが入ってきた。
遅かったではないか。
失礼しました。
ここでは本音を語りたいのだが、私は人々に清廉なる心を取り戻すローゼリア主義というのは、単なる象徴にすぎないのだと思うのだ。
!?
ペディはおもむろに靴を脱ぐと足の指をニコラに向けた。
足が疲れる。持っておくれ。
は、はい。
ニコラは膝をつきペディの足を持つ。爪は赤く輝いていた。
これが、ローゼリア主義の象徴なのだと言うのだが、むしろ人を恐怖に陥れる血塗られた象徴なのかもしれないのだ。
え?
状況的に、ヴァル国、アルデン国を治め、ギロティーニュと政略結婚し、北方を征伐すれば、被害は最小限で済む。
・・・・・
しかし、それでは北方の村々を破滅させることになる。さらに、ギロティーニュの領主共、アルベルトのような人間に囲まれて、領地の心配をし、そうやって悪役令嬢に成り下がるのが、下劣な生き方だと私は思う。
そこまで考えていらっしゃるのですか?
そうだ。そこでローゼリア主義の名のもとに、戦い、多くの血を流し、勝ち取らねばならぬものがあるのだ。親衛隊と言うからには最後まで付いてきてくれるな?
もちろんでございます!
では、この赤い爪、舐めてくれるな?




