ニコラ大尉
北方捜索の隊長に任命された茶色で長髪のニコラ大尉は、ヴァル地方に引き続き慣れない地形に悪戦苦闘していた。彼は森の中で、数名の兵士とともに、いつ奇襲をかけてくるか分からない蛮族に常に身構えていなければならなかったのだ。
ええい!やりにくい。このまま強行突破するのはどうなんだ!
危険です!大尉!奴らがいつどこで吹き矢を飛ばしてくるか分からないんですよ!
膠着状態でもどかしい中で、折れた大木に腰かけていると、連絡部隊から手紙が届いた。カイルからのものだ。それを見た大尉は、決心した。
手紙の内容によれば、陛下は生きているようだ。
みなが、小さく声を上げた。
もう一つ、一人で、ギロティーニュ北部のアジトに来いとのことだ。なので私一人で参る。皆は、なるべく補給基地を前進させるように努めてほしい。
一人で大丈夫でしょうか?
心配するな!私はヴァル地方制圧の前線で生き延びてきたのだ。
ニコラは、ただ一人で森へと進む。ギロティーニュ北部のアジトの場所はすでに抑えているが、詳しいところまでは分からない。ただひたすら森の道を進むと、迂闊にも、足元に仕掛けてあった縄に引っかかるとカランカランと森中から響いた。骨を吊るしてあり骨同士が当たって、敵の居場所を知らせる合図だ。ニコラは一目散に、頭をかがめてただ、走って森を走る。右から左から、矢が飛んできた。目の前に、ちょうどいい岩場を見つけたので、そこへ隠れると、一人の蛮族の少年が驚いた顔でこちらを警戒していた。
君、僕は何も悪さはしない。安心してくれ。
少年はただ頷いた。
一つ聞いていいかな。
うん。
君たちのアジトってどこにあるのかな?
お前やっぱり俺たちを狙ってんだ!
少年は走り出そうとしたので、ニコラは抑えつけた。
静かにしてくれ!捕虜ってわかるか?
少年は首を横に振る。
つまり私は、ただ女王様を返してほしいだけなんだ。
ニコラは少年に手紙を見せてやると、文字は読めない様子だったが、妙に納得してくれたようだった。そのため、少年はニコラを先導してくれた。ニコラは自分の運の良さに、はやる気持ちを抑えつつ、ついて行った。途中、土の方を指さした。
お前、もしかして埋めたのか!?
ここ落とし穴、注意して。
蛮族のあらゆる仕掛けに、驚嘆しつつも、この少年の素直さには、気分が悪いではなかった。途中、ポケットから何かを取って食べてるのを見たので、それは何だ?と尋ねると、一つくれた。それは強烈なニオイを放ち、気持ち悪くなったが、その少年の好意に甘んじて食べてみると、腐った肉の味がして、吐きそうになるのを何とかこらえた。その様子に、少年はくすくす笑っていた。
まったく変なもの食わせるなよ。
みんな、美味しいって言うよ?
そうかい。
小高い丘を抜けたり、洞窟をくぐり抜けたりで、全身汚れて、体力も消耗しきっていた。
一体いつになったら着くんだ。
もうすぐ。
少年の言葉を信用して、黙ってついていくと、茂みの奥に建物が見えた。少年はあそこ指さすと、颯爽と道の方まで出て走っていってしまった。
まったく、最後までエスコートしてほしいもんだよなぁ。
そうぼやくも、あの中にペディがいるとのことなので、誰もいないことを確認し、慎重にドアを開けると、奥の部屋に人がいるのを見つけた。すると、奥にいるカイルが人がいるのを察知したので、誰だ!と叫んだので答えた。
私は、ローゼリア兵だ。ペディ女王陛下を返していただこう!
こちらへ来ていただきたい。
罠ではないのだな。
ニコラは恐る恐る、その部屋に足を踏み入れると、顔にひどいあざのあるペディが寝込む姿を見た。
貴様ぁ!陛下に何をしたんだ。
すまない!だがペディは無事だ。
剣を抜こうとするニコラをカイルは制止した。
貴様!名を何と言う。
私は、ギロティーニュを打ち倒すべく立ち上がったリベル・エルヴァの首長カイルである。
あの反抗勢力か!
そうだ。
この手紙の通り、陛下を連れ帰らせていただく。あとは陛下次第だ。
あぁそうしてくれ。あと、ドレスも持ち帰ってくれ。
ニコラは、ペディの赤いドレスと靴を抱えつつ、怪我だらけのペディを背負った。
とんだご無礼を。
いいのだ。助けに来てくれただけでうれしいよ。
ニコラは、ペディの温かさに心惹かれるものを感じた。




