奴隷エレナ
ローゼリア国では、ペディがおらずとも、国は動かせた。エドガー大佐の存在のためだ。すでにアルデンとの軍事同盟も済ませている。エドガーは、ヴァル国の当主にアルデンの王族であるフェデリコが充てられた。彼は権力を振りかざすことに執着して、女子供問わず、ローゼリア主義に反する発言をした十数人をすでに処刑台に送っている。そうした恐怖政治を敷くことで、なんとかヴァル地方を治めようと努めた。ただ、ペディについての情報は何も得られなかった。一方、エドガーは、北方捜索に、若くして大尉となったニコラを充てた。
エレナは静かに王室の掃除をしながら、過去を振り返っていた。
ギロティーニュの奴隷時代、孤児で靴も履かせてもらえず、ただせっせと主の農作物の収穫をするだけだった。それが終われば、主の部屋の掃除などせっせとやって夜になれば屋根裏で寝るだけの日々だ。その土地もギロティーニュに接収されると家を追い出されてしまう。
路頭に迷った彼女は、ローゼリアの兵士に保護され、そのまま同い年のペディの世話係となった。そのとき靴も履かせてもらえ、綺麗な服を与えられた。それが何よりも嬉しかったのだ。さらに退屈なペディから植物の種類など様々な教養を得た。しばしば部屋を脱走したが、ある日、裏庭で植物観賞をしているのを発見し、一緒に観察したものだ。
エレナは、あの時と同様に近くにいるのではないか、あるわけもないことを夢想していた。ただ、無事にペディが帰ってくることを祈った。




