リベル・エルヴァ
カイルが無言で馬を走らせるから、ペディも遅れないように森の中を疾走していった。しばらく走っているとカイルが止まったので、ペディも彼の側に制止して、馬を降りた。目の前には大きな石碑が佇んでいた。
これは僕たちの村で死んでいった者たちが眠っている墓だ。
立派ではあるな。
そうだ、ペディ。あんたはこの村の名前、知っているか?
残念ながら、存じてはおらぬ。
エルヴァっていう。どういう意味かは知らないが、僕たちの村にもちゃんと血が通ってることを知ってほしいんだ。
・・・すまないことをしたな。
ペディは静かに墓の前に立ち、祈りを捧げた。カイルはそれをただ見ているだけだった。その後、再びカイルとともに馬を走らせる。しばらくすると、木造のしっかりした母屋に案内された。テーブルや椅子など備えられ、過ごしやすそうではあった。私は椅子に案内され、反対側にカイルが座る。
ここは我がリベル・エルヴァのアジトだ。
あなた、もしかして!
あぁ想像の通りギロティーニュの反抗勢力の親分をやっている。
ペディは、ギロティーニュ北部の反抗勢力の存在は知っていたが、蛮族出身の若い青年だとは思いもよらなかった。呆気にとられていると、急にドアが開き、簡素な鎧に身を包んだ屈強な兵士と思しき男性が上がり込んできた。汗と血の臭いが強く、顔をしかめてしまった。
よぉ。ん?女を連れこんでどうしたんだ。って、こいつは捕虜じゃないか!カイル!何勝手なことしてる。
大きな怒鳴り声にペディは縮こまったので、カイルはたしなめる。
おいおい、あんまり驚かせるんじゃないよ。今は交渉中なんだよ。
そんなこと言って、女を物色してるんだろう。
僕はそんなことはしないよ。
この兵士の失礼な態度に静かに苛立ちを見せたペディであったが、この男が迫ってきて、顔を近づけられたので、思わず席を立ってしまった。
おいやめろと言っているだろう。
カイルの一言に、兵士は渋々居直した。その後、カイルに向かって戦況報告を始めた。
人質の前で遠慮なく話すが、相手は物量が多すぎる。少しでも隙を作ると、すぐに大量の軍隊を引き連れて、こっちは逃げるのも精一杯だ。なんとか死人を出さないようにしてるが、逃げ遅れたものは手遅れだ。
だろうな。諜報部隊はどうだ。
あちらからは何の連絡もつかめない。やられちまったのかもしれない。
そんなものか、ゆっくり休んでくれよ。
あぁそうするよ。
兵士はこのアジトから立ち去っていった。
彼は?
あの男は、リベル・エルヴァの大隊長ルークだ。
なかなか頼もしそうな部下を持ってよいではないか。
堅物だがな?
ペディは、ルークという男と、エドガーを重ね合わせて、心のなかで微笑んだ。
では、本題に入りたいのだが、我がリベル・エルヴァと手を結んでくれないだろうか?
私は捕虜なのに順番が違くなくって?
確かにそうか。では、君を交渉材料に、この村を襲わないことを約束してはくれまいか?
それはあなたがたの理屈でしょう?勝手にやればよろしくて?もちろん私が直々に書簡を書いてもよいが。
確かにその通りだな。では、よろしく頼む。
ペディは、手紙に自分が蛮族の捕虜になっていることと、自分と引き換えに、村を襲わせないことを約束させる内容を書いた。もう一つ気を利かせて、一人で来るようにとも書いてやった。
これを郵便屋に差し出せば、ローゼリアに届くであろう。ただし、エルヴァの村を守るのはカイル自身であることを忘れるでないぞ。
もちろんだとも。
その後、正式な形で、こちらへ参ろう。それとあの赤いドレスの靴はどこにあるのだ?
心配ない。奥の部屋に掛けてあるよ。
それを聞いてペディは安心した。それに一通りの出来事も済み気持ちが楽になり、さらに、このカイルという男が頼もしく思えて、情にほだされてしまった。
目の前に捕虜の女がいるというのにお主こそ堅物ではないかのぅ。
ペディは、カイルの隣に腰掛け、靴を脱いで、足をカイルの膝下へ置いた。カイルは急に誘惑されて緊張を隠せないでいた。
お主、楽にしてくれ給えよ、ほらこの赤い爪、触ってごらん?
この足、柔らかい・・・。
ペディは、しばらくの間カイルを足でもて遊び、その後寝室へと吸い込まれていった。




