第48話
修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。
急激に悪くなる空気を何とか落ち着かせてくれたのはマザーさん、気のせいか、聖母のような微笑みの米神に青筋が浮いて見えるような気がします。
「なるほどな……」
長々と色々説明してくれたおかげで、レクス君の失言の影響が少しうやむやになったかもしれない。と同時に違和感は深まる。
「ヨーマさん、気になりますか?」
「ん、まぁね」
気になる気になる。もうこの依頼にきな臭さをぷんぷん感じるんだけど、それ以上に不機嫌そうなレクス君が気になるんだよね。また余計なことを言わなければいいんだけど。
「軟弱者の上に弱虫とか、お前メテシュさんの弱みを握ってるな!」
あー、そういう感じに受け取ったのね。でもそうはならないんだよ。
「何を言ってるんだ。寧ろ今にも縊り殺されそうだろ」
現在進行形でものすごく力強く首を絞められているからね、弱みを握るどころか命を握られているんです。ロナが首を絞めるメシュの腕を静かに抑えてくれてなかったら、いまごろ首が折れているところだ。
何だかんだロナもラロファなので身体能力が高い高い、スキル無しの弱者男性とはものが違うんだよ。……悲しい。
「たしかに」
ほら、緑髪の女の子はちゃんと理解してるじゃないか、すごく呆れた顔だよ。だからそろそろ離れようねメテシュお嬢様。
「しゃー」
「む、むむむ」
蛇君の呆れた声が聞こえると、不服そうに腕から力を抜いてくれたメシュ。その瞬間息苦しさが一気に改善する。気のせいか鼻の通りも良くなった気がする。これはまさか首絞め治療法? そんなわけないか、ナンシュもくすぐったいから首を無言で撫でないでほしい。
「ふぅ、苦しかった」
「ヨーマはスキルを持ってないんだ。敵意がないというならその辺も考えてほしい」
やだ!? 私の恥ずかしい秘密をそんな堂々とばらさないでロナさん! 秘密でも何でもないけどさ。あまり人様に公開するような情報でも無いじゃないかな? 今時調べればすぐわかるし、秘密にしていても、真実を知って後日申し訳なさそうに謝れられる事が多いのも、事実ではあるけど。
はぁ、軍学校時代によくありました。謝られても居た堪れなくなるから、それ以降は自分から言うようにしてたけどね。それはそれで、いろいろ問題が発生した……止めとこう。
「はっ! そんなの言い訳にならねぇし」
ならないらしい。
「いやなるやろ」
なるらしい。世界は広い、スキルのあるなしをまったく気にしない場所もあるのかもしれない。それはある意味、平等な世の中なのかもしれないな。
「そうですね。まだまだ勉強が必要なようです」
「ひっ!?」
さっきまで赤かった顔が蒼くなる。そんなにマザーさんのお勉強は辛いのだろうか? しかし彼らにとっても、スキルのあるなしは大きな問題のようで、レクス君以外は神妙な顔をしている。
昔からよく見る顔だ。あまり好きじゃない顔だ。しかしもうずっと昔に諦めた顔だ。どうしてもスキルのあるものから見ると、スキルの無い人間はそうした目で見ざるを得ないものらしい。ただ、見下されてゴミの様にみられるよりかは、マシなのだろう。
「良いですか? 一般にスキルを持たない人と持つ人では身体強度が3倍違います」
最低でもそのくらいかな。
「そんなに違うの?」
そんなに変わるんですよ。スキル持ちにとっては感覚的に解り辛いところがあるかもしれないけどね。そんなに見詰めないでください、驚いた目も可愛いですよ? 釣り目がちなお嬢さん。てか、この船の子はみんな容姿が整ってらっしゃる? 瞳の色がみんな同じオレンジ色だし、そういう種族なのだろうか。
「正直なところ、ヨーマさんを居住レベル2の独房に入れるのは大変危険でした。万が一気密に問題が出た場合確実に死んでいます」
え、あそこ2だったの? おかしいな、居住エリアでレベル2なんて実習艦には無かったけど、劣化かな。それとも実習艦仕様で頑丈にしてたのか……その辺調べたこと無いな。
「は!? で、でも気密に問題が出たらすぐ通路の扉が開くから……外に出ても十分室内に戻る余裕はあるだろ」
「ヨーマさんの様にスキルの無い人は宇宙空間で10秒程度しか持ちません。貴方の想定はどれくらいの時間が必要ですか?」
「はあ!? 普通10分ぐらい耐えられるだろ!」
10分か……超人レベルだな。高スキル複数保持者かそれとも種族適正か、少なくとも俺の気持ちは、分かってもらえそうにない。
「無理だろ」
「無理やろ」
「無理」
無理ですよね。でも貴女たち10分と言わずとも数分なら何とかなるんじゃないですか? 素っ裸の宇宙遊泳なって特殊性癖はまったくお勧めしませんけど、超人と呼ばれる種族の中には好んでやる人もいるらしいからね。そんな超人に憧れて素っ裸の宇宙遊泳に挑む人間は意外と多いらしい。
俺は絶対ごめんである。
「与圧服を着こんでいれば別だろうけど、素っ裸だぞ? 死ぬって」
「そんな、弱すぎ……」
「ひどくない?」
ひどくない? 超人に弱者の気持ちは理解出来ないと思うけど、だからってそんなストレートに貶されたら泣くぞ? 泣いて良いかな? とりあえず泣きそうになるので人の頭なでなでするのやめてもらえませんかメシュさん? 左肩はロナさんですね? 右肩はネフ=サンですか? ちょっと撫でる手がしっとりしてる気がする。
たぶん……振り向いたら涙が出ちゃう、でも泣けないので前を見る。だって男の子だから。
「貴方達が特殊だと何度も教えたでしょうに……そう言う事なんですヨーマさん」
「…………何となく理解したよ」
あれだ、この思わせぶりなマザーさんの言い方、そして全く一般人を理解してない感じ、生まれた時から超人的感覚が当たり前と言った言い回し、多分この子たちは超人化計画のフルカスタムベビーだ。
両親の遺伝子を効率よく調整し生み出されるデザイナーベビー技術、そこにスキルクローニング技術を融合させた現代のベーシックな人類製造技術デザインクローニング。宇宙時代を生きる人間にとっての最適解の一つに納得がいかず、さらにその先へと進められた超人化計画。
戦前の時代からいろいろ問題があって禁止されていた計画、それによって生み出されたのがフルカスタムベビーだ。
「いや、もう終わった事だろ! 問題はこれからの事だ」
「逃げたわね……」
スキル無しでも超人的能力を付与するために無数の遺伝子を繋ぎ合わせ改造し、さらに強化処理やスキルクローニングによって、最終的に超人を超えた超人を生み出す狂気の技術だ。成功例は非常に少ない。
その少ない成功例なのだろう。まぁだからと言ってあの仕打ちを許す気にはなれんのだが、心が狭いと笑いたければ笑えば良いと思う。事実として俺は弱いからね。しかし、そうなると彼らをあまり無碍にもできなくなるわけで、面倒極まりない。
「これからが大事なのは事実だろ! これからメテシュさんたちの依頼人に引き渡さないとお金貰えないんだから」
「まぁ、確かに」
「依頼人か」
それも問題だ。何というか、この子たちは本当に問題だらけである。さてどうしたものか、俺にとっての最適解はどこだろう。大人としての、ベラタス家と言う貴族としての、弱者としての複合的最適解はどれか。
いや、逃げず前を向いて新しい人生に挑むことを決めた俺の最適解だな。
「お父様の名前だった」
「うちはムアガの族長の名前だったかな」
二人の届け先は知人であると、それはまぁ問題あるけど問題ない。色々問題が出て来るであろうが、それは届け先の人が解決する問題で、俺には関係ない。冷たく聞こえるかもしれないけど、俺が横から首を突っ込む問題でもないのだ。
「……」
「そうか、問題だなぁ」
しかしこっちは問題である。大きく上を向けば困ったような顔のロナが首を横に振っている。知らない名前だったのだろう。それも貴族、大変問題である。俺にとって非常にめんどくさい話だが、ここでロナを、ラロファを助けないという選択肢は、俺には無い。
これは俺の個人的趣向ではなく義務と言う意味でだ。一度でも軍に席を置いた者は、この世界のために戦わねばならない。それが宇宙軍の最高規律である。守っている人間は少ない。でも俺はこれでも一応貴族の家の子、愛する家族のためにも守らないわけにもいかない。
「何が問題なんだよ! これ以上問題を増やすなよ!」
「噛みつくなぁ?」
問題抱えて突っ込んできたのは君らでしょうに? こっちはどちらかと言うと巻き込まれた側だぞ? 君らが突っ込んでこなけりゃ穏便な方法もあっただろうに。
「……ロナ救出の依頼人は貴族なんだよな?」
「あ? ああ、なんかすごく豪華な服着たやつだったな」
「お金持ってそうだったわね」
「実際に一番金払いが良かった」
貴族ってだいたいそういう風にみられるよね。実態は結構貧乏貴族多いんだけど、見栄っ張りが多いというか、見え張ってないと死ぬ生き物と言うか、見た目んじゃ実態は解らないんだよね。
しかし、まぁ? 彼らの話を聞く限り貴族で間違いはなさそうだ。軍だったらそんな偽装工作すること無いし、一般人が貴族の真似事してまでラロファを……とも思えない。どっちかと言えば軍人に成りすましての方があり得る。
んーー……頭がポヤポヤするし、周りから聞こえて来る音も反響して聴こえる。心臓の辺りが熱いし、お腹も痛熱い。回復寄りの設定に変えて短時間でも睡眠にあてないと不味いかな? 今のままでいい考えが出るとも、いや出てはいるんだけど、今の状態で実行するのは無理だよな。
はぁ、女の子が多いと姦しいというのか、レクス君単独でうるさいというか、どうしてこんなことになってるんだろう。家族に何も言わずに出たのは、やっぱ間違いだったかな。
いかがでしたでしょうか?
何やら問題が多そうですが、ヨーマは風邪っぴきの状態で活路を見出せるのでしょうか?作者は風邪っぴきの時に活路を見出した結果、栄養補給と水分補給のために、めんつゆを飲んでいたことがあります。
目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー




