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3 価値観の相違

登場人物

ジョウ:主人公。異星技術で蘇ったサイボーグ。

リンナ:異星種族アラマーマの少女。

 リンナが泣き止んだ頃、ジョウもなんとか顔を上げた。


「地球侵略をやらされてる、君らアラマーマ族だけど……残りは君だけなんだよな?」

「はい。機械奇虫(マシンバグ)達の制御や統率、改良のために、現地に出向いていました。けれど運悪く戦闘に巻き込まれて、一人ずつ命を落として……」


 リンナの目がまた涙で潤みだす。

 可哀想に思いつつ、ジョウは文化の違いを痛感していた。



 現地に出向いていた者達ことごとく、今のジョウのように小型のムシメカに己を移植していたという。

 そしてその小さい体を活かし、戦場に隠れ潜んでいたというのだ。

 そのため基本的に狙われはしない……というより気づかれないのだが、広範囲に大きな被害がでた時は巻き込まれてしまうし、そうなると破壊されてしまう。

 大した数もいなかったのにそうして一人ずつ「事故死」し、ついにリンナだけになったのだ。


 リンナはぐすぐすと鼻を鳴らした。


「ジョウさんの自爆に巻き込まれて命を落としたアミールさんは、私の養父同然でした。彼は常々、私に言っていました。『お前が死んだらアラマーマが滅びてしまう。私が倒されたら、地球人を引き込んで後継者にして戦わせろ』って……それで、アミールさんを倒したジョウさんにお願いしようと」

「君の養父さん酷いな! いや、君には優しいし、同胞に絶えて欲しくないのはわかるけど……俺から見たら鬼畜生(おにちくしょう)だぞ」


 自分が蘇生された理由を知って愕然とするジョウ。

 そしていくつか疑問も浮かぶ。


「俺を蘇生できるなら、なぜ死んだ同族を蘇生しないんだ?」

「できないんです。アラマーマ族はESPを持って産まれてくるんですが、クローニング処置だとなぜか再現されないので……」

「生まれつき皆が超能力者なのか! それは凄いな。でもそれぐらいは目を瞑って、超能力無しで再生すればいいんじゃないのか?」


 驚きながらも訊くジョウに、リンナはぶんぶんぶんと凄い勢いで首を振った。


「そんな! 親から貰ったESPを取り上げるなんて、酷い、酷過ぎます! そんな仕打ち、人の命への冒涜じゃないですか!」


(アラマーマ族の文化だとそうなるのか。多分、死んだ連中も同じ考えなんだろう。ムシメカに脳味噌の中身を移植するのは許されるのにな……)


 納得し難い物を感じるが、言葉では絶対に通じないようにも思うジョウ。

 文化の隔たりというヤツだ。

 よって別の質問に切り替える。



「脳移植するなら機械奇虫(マシンバグ)の中にでも入れておけば、事故死も減ったんじゃないのか? というかあれを乗り物に改造すれば移植さえいらないような……」

「あれは乗り物にできません。基本となる5大機能があるので」

「ほう?」


 地球侵略に使われている兵器の情報へ興味を持つジョウ。

 リンナは丁寧に説明した。


「採取・解析・模倣・流用・生産の5大機能です。敵地を破壊した後、周囲にある物を取り込んで持ち帰り、それを調べて、可能な限り自分達に装備できるよう改造し、それを反映させたうえで、敵地から得た資材やエネルギーで自分達を再生産するんです。この5大機能があるから最小限の制御で長期間の戦闘が可能なんですが、搭乗式に改造すると僅かなきっかけで操縦者を異物と認識し、排除して攻撃対象にしてしまうので……試験段階でそういう事故が多発したものですから、実戦ではやめておこうという事になりました」


「……使用そのものをやめようと思った奴はいなかったのか?」

「いませんでしたよ? 敵地へ送る人員と物資を最小限にして半自動で戦闘できるし、敵のESPに身を晒す事もない、人道的な兵器ですし……」

「人道的という単語の意味が地球とは違うようだな……」


 思わず呟くジョウ。

 しかしリンナは首を傾げるばかり。

 これもまた文化の隔たりだ。

 よって別の質問に切り替える。



「侵略されてる地球人の俺を蘇らせて、なんで味方してもらえると思うんだ?」


 訊かれたリンナはおずおずと、なぜか少し恥じらうように、ちょっとだけ嬉しそうに告げた。


「小型の機械体に脳移植する時、ジョウさんに改造を施して、私の細胞も入れてあるんです。だから私とジョウさんは、もう他人じゃないというか。親戚で、同じ一族で、血族としても繋がっている事になりますね」


(俺は脳味噌の中身もいじられているのか!)


 脳以外の全てを改造……ではなく、脳も含めて全て改造されていた。というか脳しか残っていないしそこも改造されていたというべきか。

 全身の100%を改造された、改造割合で言えばこれ以上は存在しない究極改造人間アルティメットサイボーグである。

 仰天するジョウの前で、リンナは少し照れる。


「あ、仕方なくですよ? 私達の移植技術はアラマーマ族用の物なので、地球人にそのまま使うと不具合を起こす可能性が高かったので……た、他意はないんです。血族の繋がりを無理に造るとか、そういうのじゃないんですってば」


 少し恥ずかしがってはいるが、異常な事や悪い事をしたとは絶対に思っていなかった。

 理解不可能。

 愕然とするジョウの唇から、呻きのような声が漏れる。


「だから、俺が、君を助ける、と……」


 リンナが不意にきょとんとする。

 彼女は驚いていた。


「え?……ジョウさん、同じ地球人のために命を投げ出していましたよね? 私達アラマーマでさえ、血族でなければそこまでしないのに……」

「命を投げ出したのは……成り行き半分だよ」


 それはジョウの正直な気持ちだ。結果的に自爆まで行ったが、最初からそのつもりでは無かった。

 しかしリンナは優しく微笑む。


「そうであっても、同じ人間を助けるためにできるだけの事をするのは、素敵な事です」


 ジョウも微かに笑った。

 笑顔なんていつぶりだろうか……。


 そこでまだ疑問が解決していない事に気づく。


「俺が君を助けるという話はどこで出たっけ?」

「え? 私とジョウさんはもう血族……」


「?」

「?」


 互いに、不思議そうに、不可解に思いながら見つめ合う二人。

 急にジョウは閃いた。


()()()()! もう血族だから!」

「ええ、そうですよね?」


 愕然とするジョウと、そんな反応に驚き戸惑うリンナ。


 同胞を大切にする。それは地球人もアラマーマ族も肯定的に考える事だ。

 ただそこにも文化的な隔たりはあった。

 厄介な話だ。

全身の99%を改造されたパーフェクトサイボーグ、というキャラを見て

その1%に何らかの補強を加えれば100%になるのでは?と閃いた。


よってこの作品では主人公をそうしてみた。

やってから思ったが、これはもう人間の細胞が材料の一部を担うアンドロイドではないのか。

まぁそれで何か困るかというと、特に何も困らんが。

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