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2 真相

視点は再び主人公へ戻る。

 ――西暦2030年――



 (じょう)は目を覚ました。

 急に目の前がパッと明るくなったのだ。


 すぐ目の前に少女がいた。

 歳は十代の中頃か、もう少し上か。

 大きな瞳に不安と心配の浮かべ、こちらを見つめていた。肩まで伸びたミディアムヘアで、大人しそうでなかなかに可愛らしい顔立ちだが……前髪の中に長い「触覚」が2本混じっている。頭には複眼状の髪飾りを2つつけていた。

 着ている服は女性看護師の物によく似ている。


(ここは……野戦病院?)


 だが大きな部屋にいるのは少女だけだし、壁も天井も金属製で、ダクトやケーブルがあちこちにある。

 そして壁際に大きく複雑な機械の操作盤が置いてあり、その側にある透明な円筒の中に(じょう)は立たされているのだ。

 円筒の前面は開いており、少女との間を遮る物は無い。


「お目覚めですね。具合はどうでしょう?」


 少女が見た目通りの、大人しそうで優しげな声で、心配も露わに話しかけてくる。


「痛い所は無いみたいだ」


 そう答えて(じょう)は気付いた。

 己の声がおかしい。まるで別人の声だ。

 自分の体を見下ろし、さらにおかしい事に気づいた。

 体格が変わっている……肌にフィットするタイツを着ている己の体は、どうも縮んでいるようなのだ。


「今の姿が気になりますよね。え、と……こうなっています」


 少女はそう言いながら、スマートフォンによく似た小さな板を取り出し、指先でタッチして操作する。

 すると(じょう)の眼前に大きな映像が出現した。


 前面が開いた透明な円筒の中に、中高生ぐらいの小柄な少年が立っている。

 肌にフィットするタイツを着ている少年は、側の少女をショートヘアにしたかのように、容姿が似通っていた。ボディラインの隠れる服を着れば性別がわからなくなるだろう。


 (じょう)が腕を動かすと、映像の少年も腕を動かす。

 驚いて仰け反ると少年も仰け反る。


 映像が自分を映している事に、(じょう)はすぐに気が付いた。


「なんなんだ、これ……整形? でも体格まで変わるって、なんで?」

「そ、それは……そのボディを作成する時に、あなたの細胞だけじゃなくて、私の物も混ぜたので……」


 おずおずと。少女はちょっと言い難そうだった。

 そこでやっと(じょう)は気付いた。少女の言葉が日本語でない事と、自分が会話型翻訳機を身に着けていない事に。



 ピラミッドから発掘された技術を流用し、翻訳機の性能は劇的に向上した。

 無線イヤホンに言語への自動変換機能が追加され、ほとんどの国の言語を設定された言語に変換してくれるようになったのである。別の国の人間同士が互いに自分の母国語で話すだけで会話が成立するのだ。


 しかし(じょう)は今それを持っていない。なのに少女との会話に不自由していないのだ。

 呆然と呟くように訊く。


「君は誰で、ここはどこなんだ?」


 ようやく本題に入った(じょう)へ、少女は恐々と答えた。


「ここは立方体(キューブ)の一つです。私はリンナ。地球の攻撃を担当する侵略者の、最後の一人になってしまいました……」


 そう言いながら、少女――リンナは涙ぐんでぐすりとベソをかいた。



 ――隣の部屋――



 (じょう)が目覚めた「製作室」の隣室は一回り小さかったが、壁際の大きなモニター近くにテーブルと椅子があった。

 そこに案内され、(じょう)は次々と衝撃的な話を聞く。


「俺が『死んで』から10年経っているなんて……」

「いろいろと処理が必要でして」


 呆然とする(じょう)の対面でリンナは恐縮するばかり。


「俺は再生処理を施されて蘇生したけど、この体でさえクローニングとバイオ改造技術で造った『別物』だなんて……」

「それは、その、これからのために……」


 呆然とする(じょう)の対面でリンナは身を縮めるばかり。


「俺の『本体』が()()だなんて……」


 そう言うと(じょう)は机に突っ伏した。

 その後頭部に細長いスリットが開き、そこから出てくる虫が一匹。金属製の丸い甲虫である。

 そいつは体を巡らせて周囲を覗うと、またすぐ後頭部へ入って行った。

 スリットが閉じると、()()()()()()()()は再び身を起こす。


 (じょう)の本体は甲虫型の小さなメカであり、その中に元の脳が入っているのだ。


「体を換装できるので便利だと思いますし、その形は私達の故郷では縁起の良さの象徴みたいな物で……」


 リンナは必死に訴えるばかり。目は逸らしながら。

 (じょう)は途方にくれる。


「その故郷も地球と同じく、円盤から技術を貰って、5年後に『敵』を送られ、負けて壊滅して、ある程度の戦果をあげていた者達が次の『敵』役……地球への侵略に使われていたなんて……」

「地球に連れてこられた人達もみんな戦いで命を落として、残るは私だけです……」


 半べそだったリンナが、ついに涙をこぼして泣きだした。



 地球人にとってずっと謎だった、侵略側の意図。

 それを知った唯一の地球人・(じょう)は頭を抱えて苦悩する。


「元締めやってる『アリスィロピア』とかいう連中も、元はどこかの星の住人だったけど、惑星を星系ごと捕食する超生物に故郷を破壊されたんで、そいつに勝てる軍団を結成するために、あちこちの星へ技術と開発期間を与えては攻撃しかけて、一定水準の戦闘力を得たかどうかテストしているなんて……」

「侵略に勝てればストレート合格なんですけど、負けたら次の侵略に使われて、そこで勝てれば補欠合格。侵略側でも負けたら落第で廃棄です」


 丁寧に教えてくれるリンナの前で、(じょう)は頭を抱える。


「本人ら的には必死なんだろうけどな! だからってどんだけ傲慢で迷惑なんだよ! そいつらの故郷が滅んだのは何かの天罰なんじゃねぇのかぁ!?」


 地球人の誰も知らない、星を越えた侵略劇の発端。

 それを知った唯一の地球人・(じょう)は産まれてから今までで間違いなく一番憤っていた。

 だが腹立たしい事に、そいつらは宇宙のどこかにいて、地球での戦いが終わったと本人達基準で判断するまで、寄り付きさえしないのだ。多分、今も別の星に同じ迷惑かけに行っている最中なのである。


 そしてさらに、リンナは耳よりな情報を教えてくれた。

 泣きながら。


「私達アラマーマ族は戦いに敗れ、残った人口は戦前の10%に満たない数まで減りました。故郷の惑星シデタルは、次の侵略に物資が必要とかで資源を根こそぎ掘り出され、生き残りが食べていくのさえ途方にくれる状態にされました。今でも故郷のアラマーマ族が生き残っているのかどうか……私にもわかりません」


 負ければ地球も同じ目にあう事は、容易に想像がついた。

 テーブルに突っ伏すようにして呟く(じょう)


「こんな理不尽な事が世の中に有っていいのか……」


 ともかくこの日、村雨(むらさめ)(じょう)は脳以外の全てを改造……というより製造された、この星で唯一の異星技術エイリアンテクノロジー改造人間(サイボーグ)・ジョウとして目覚めた。

侵略者側の真相を長々と引っ張らず最序盤で明かす事にした。

「なぜ遠い別の星まで侵略しに来たのか」


この作品の答え:どうしても打倒したい敵がいるので採算度外視して戦力になりそうな種族をかき集めている。

なお前線で戦わされている連中は無理やりやらされているので嫌も応も無い。

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