28 総力戦
登場人物
ジョウ:主人公。異星技術で蘇ったサイボーグ。
リンナ:異星種族アラマーマの少女。
ファン:旧ベトナム領の中年傭兵。乗機は防御型の盾持ち装備【ディフェンダー】。
萌萌:旧中国領海南地方の女大校。乗機は近接型の槍装備【ランサー】。
エロール:シンガポール軍の兵士。右目をサイボーグ化している。乗機は狙撃装備の【スナイパー】。
ラビ:マレーシア軍の兵士。乗機は奇襲・強襲装備の【アンブッシャー】。
トンボのような4枚の翅。
背中に長身の砲。後頭部には自在に動く辮髪のような尾、その先には鋭利なハサミ。
そして両腕で握る巨大な刀。
重なり合った、鎧のような全身の装甲。
2身合体3武装の体は、FDより頭一つ、一回り大きい。
その高い位置にある頭から、合体ミミックは周囲の「敵」を見渡していた。
『ここは俺に任せて立方体を破壊してくれ。中枢断裂弾があればできる筈だ』
味方小隊に通信を送るジョウ。
ベトナム傭兵のファンから声が返ってくる。
『異議ありだ。それだと各個撃破される危険がある。今ここで、全員でこいつを仕留めるべきだ』
『賛成だ。ジョウがやられたら誰もコイツに勝てないぜ』
マレーシア兵のラビも同意した。
その時……合体ミミックの砲が光弾を撃ち込んできた!
慌てて避けるジョウ達。光弾は山林の木に当たって大爆発を起こす。FDであれ食らっていい威力ではなかった。
『会議はここまでだ! やるぞ!』
シンガポールの狙撃兵エロールが叫び、同時に乗機【スナイパー】のライフルを撃った。
撃ち込まれる光弾を、しかし合体ミミックは無造作に片腕で弾き飛ばす。
だがそこへ別の光弾が飛んできた。上空へ飛んだライズィンザンがタイミングを合わせて撃ち込んだのだ。
回避不可能なタイミングで撃たれた弾は、合体ミミックの肩口に命中!
しかし――敵は一瞬仰け反りはしたが、すぐに姿勢を戻すと、翅を広げて空へ飛んできた。
一瞬で距離を詰めると後頭部の尾を振り回し、先端のハサミでライズィンザンを狙う。
肉薄されたジョウは機体で回し蹴りを放った。【ドラゴンフライ】に白兵戦の武器は無いが、それを体術で補う。
交錯する攻撃!
敵を蹴飛ばしたものの、ライズィンザンの装甲をハサミが掠めた。装甲がざっくり切り裂かれる。
ここまでの攻防で判明した敵データがモニターに表示された。
(出力、速度、耐久性、全てあっちか! まぁそうだろうが!)
空で体勢を整え、ジョウは敵の攻撃に備えた。
だが合体ミミックは山林へと降下してゆく。
(あの蹴りぐらいで?)
追撃してこない事を不思議に思うジョウの見ている前で、合体ミミックは山林へ砲を撃ち込んだ。
放たれた光弾は途中ではじけ、雨となって地上へ降り注ぐ。宙へ攻撃しようと見上げていた大東亜共栄圏の小隊を無数の光線が襲った!
次々と被弾し、火を吹くFD。
『アイヤー!』
旧中国の女兵士・萌萌が倒れる機体の中で悲鳴をあげる。
『いかん、みんなこっちへ!』
ベトナムの傭兵ファンが呼びかけ、自機の大きな盾に皆を避難させようとした。
だがその眼前に合体ミミックが降り立つ。
ファンの【ディフェンダー】が慌ててマシンガンを構えるが、先に敵の太刀が一閃した。
盾が両断され、ファン機は側の大木に叩きつけられた。
(あいつ、攻撃目標を選んでいるのか!)
ジョウは理解した。
これまでの機械奇虫は近くの敵、または目立つ敵から攻撃していたが、合体ミミックは違う。
戦闘力の低い敵を先に攻撃し、数を減らす事を優先しているのだ。
急いでミミックを撃つジョウ。
それに反応してミミックは空へ飛び、砲を撃ち返して来た。
空中で撃ち合いになり、互いに光弾を避け合う。
戦闘用ボディの補助があるぶん、射撃の精度ではジョウの方が上だ。
だがボディの補助があるジョウと、単純に速度で上回る合体ミミックでは、回避性能はほぼ五分。
そして出力と耐久性は明らかにミミック側が上なのだ。
総じてジョウのライズィンザンが不利……しかし味方は蹴散らされており、援護は無い。
ミミックにライズィンザンの射撃が当たった。
胸部装甲が焼け焦げ煙をあげるが、敵はすぐに体勢を立て直す。
ほぼ同時にライズィンザンを敵の射撃が掠めた。
身をひねって直撃はまぬがれたが、それにも関わらず胸部装甲が削れて弾け飛ぶ。
(ジリ貧か。通じるかわからんが、奥の手を切るしかない)
ジョウがそう考え、ライズィンザンが敵に突っ込もうと身構えた。
その時。
『ジョウさん! 装備を持って来ました! 【スコーピオン】と【ビートル】です』
通信機からリンナの声が届いた。
『なんだって!?』
驚くジョウは地上を見る。
光線の雨で焼き払われた地上を、トレーラーが6本脚で器用に歩いていた。
当然、それは合体ミミックにも見えた。
弱い敵から優先して攻撃する行動パターンゆえに、砲身がトレーラーに向く。
光弾が地上へ撃たれた。
敵新兵器に味方も新兵器!
多脚トレーラー。
その真価は次話で。




