七 最前線ニ異常アリ
登場人物
山和望斗:大東亜共栄圏連合軍長官。元日本の自衛官。
ファン:旧ベトナム領の中年傭兵。乗機は防御型の盾持ち装備【ディフェンダー】。
萌萌:旧中国領海南地方の女大校。乗機は近接型の槍装備【ランサー】。
エロール:シンガポール軍の兵士。右目をサイボーグ化している。乗機は狙撃装備の【スナイパー】。
ラビ:マレーシア軍の兵士。乗機は奇襲・強襲装備の【アンブッシャー】。
ジョウ達が日本にいる間に、次の立方体制圧作戦が開始された。
目標は朝鮮半島の中央近くにある山間部の物。
大東亜共栄圏の連合軍は半島東岸から上陸を開始した。
――旧韓国領・三陟の町跡――
進行ルートの都合で選ばれた上陸地点は、機械奇虫によって破壊された無人の廃墟。
かつての港に軍艦が次々とFDと兵士達を下ろす。
軍艦の一つで山和長官に副官が報告していた。
「準備は終わりました。現地の軍とジョウを待つ状態です」
旧大韓民国政府の後継を名乗る組織は現地に1つしか無かったので、そこと連絡を取って交渉した結果、いくらか援軍を派兵される事になっていた。
ジョウとリンナには迎えの船を出してある。既にここへ向かっている筈だ。
「ライズィンザンも整備してあるな?」
「もちろんです!」
長官の問いに副官は断言する。
ジョウ達はライズィンザンとトレーラーを大東亜共栄圏へ預けていた。
内部のダメージは日本へたつ前にリンナが修理したので、共栄圏の工場が行ったのは装甲の補修とエネルギーの補給だけだ。だがリンナに頼まれた事は完璧にやったと、工場からは自信をもって報告されていた。
その機体も装備もトレーラーも既に上陸させてある。
合流すれば作戦開始だ。
日本から異星人の兵器を遠ざけ、大陸内部への道を1つ増やすための。
だがしかし。
軍が待機している廃墟で、突然、複数の爆発が起こった!
「なんだー!?」
驚愕する長官は見た。
炎の中で蠢く機械の巨虫どもの影を。
――廃墟内――
廃墟内には多数のテントが張られ、中では兵士達が待機していた。
当然、大東亜共栄圏の兵達だが、今回はそうでない者もいる。
「いいか! あくまで共同作戦だ、我が正統中華人民共和国政府海南支部を部下扱いするんじゃないぞ!」
(お客様扱いでもお望みかね……)
周囲の兵に声をあげる女兵士は馮萌萌。
その後ろで溜息をつくのは旧ベトナム領でプレデターを営むファン。
立方体制圧の実績から、東南アジアの他組織や現地人から大東亜共栄圏の作戦に志願する傭兵が現れだした。組織の実績作りや、自分達の地元へ派兵される事を期待して。
「なんか隣は騒がしいな」
「同じテントでなければどうでもいい。遊んでいられる時間ももうすぐ終わりだ」
女兵士の声が響き、隣のテントでは二人の兵士が呆れていた。
彼らは共栄圏の連合軍人、マレーシア軍のラビと、シンガポール軍のエロールである。
二人が他愛ない言葉を交わした、その直後。
爆音が響き渡り、テントが震えた!
驚き立ち上がるエロール。
「まさか……?」
「あんたの言う通り、すぐ終わっちまったぜ!」
隣でラビも立ち上がった。
――軍艦の1つ・艦橋――
「機械奇虫の奇襲だと!?」
「比較的小型の群れが……!」
山和長官にそう報告する兵士は肩口を負傷し、手当もせずに傷を押さえている。
機械奇虫も多種多様で、そのサイズも様々だ。最小クラスには40~50cmほどで窓から侵入してくるような物まである。
今回奇襲したのは大半が1~3m程度の群れで、上陸前に現地調査した探索班達から隠れてあらかじめ潜んでいたようだった。
「現地部隊はどうした!?」
長官は叫ぶ。
奇襲された部隊が立て直すのは簡単な事ではない。この地の、旧大韓民国政府後継組織の部隊が救援してくれれば一早く巻き返す事ができるのだが……。
通信機を担当していた兵士が長官へと振り向いた。焦りと恐怖にひきつった顔で。
「現地部隊も交戦中……こちら同様、奇襲を受けているようです」
――廃墟内――
兵士達には既に多数の犠牲者が出ていた。
銃声と悲鳴と血が絶える事なく響く廃墟で、ファンがマシンガンを撃ちながら忌々しさで舌打ちする。
「クソッ、FDに乗る事もできないとは!」
「アイヤー! 救ってー!」
拳銃をめくら撃ちしながら逃げ回る萌萌。
全身金属の機械奇虫は小型でも頑丈で、口径の小さな銃ではなかなか破壊できない。だがFDを待機させてある場所に行こうにも、既に陣内に潜り込まれている状況では簡単にいかなかった。
そしてFDに乗れた兵士も、乱戦の中に巨大な火器を撃つわけにいかず、周囲の群れへ対処する事しかできない。そうして手間取る間にも生身の兵士達が狩られてゆく。
廃屋の壁を背に、萌萌が追い詰められた。クマほどの大きさの金属トビムシが周囲を囲み、牙を剥いている。その中には犠牲者の血を滴らせている物もあった。
萌萌は弾の切れた銃の引き金を半狂乱で引き続ける、が……
爆音とともに金属虫が1匹、粉々になって吹き飛んだ。
萌萌が「えっ?」と呟くと、さらに1匹が。
「はぁ?」と呟くとまた1匹が。
呆けて「どういう事?」と呟くと、凄まじい勢いで飛び込んで来た物が、金属虫どもをまとめて撥ね飛ばした。
メカニカルな灰色の大型バイクに跨る黒い金属の塊。
黒いボディに銀の肩当てと脛当て。
赤く鋭い目が、ブゥン……と低い音を唸らせ光る。
屈強な男の体格でありながら、生身の肌などどこにも一片たりとも覗いていなかった。冷たい金属の、剣呑な塊である。
その片手には大型の銃。バイクの後ろにはぎゅっと目をつぶってリンナがしがみついていた。
「だ……誰?」
呆然とする萌萌に目もくれず、ジョウは周囲で無数に群れる金属虫どもへ赤いカメラアイを向ける。
『機械奇虫、多数確認……破壊』
ロボット兵器のある世界だからロボットが強ければいいかというとそうではない話。
GUンダム00で対人殺傷用の屋内用マシンが多数放り込まれているのを見て「こっちの方はいずれ現実でも実用化されるんだろうな」と思った。




