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23 地獄の影、深い闇を裂く

登場人物

ジョウ:主人公。異星技術で蘇ったサイボーグ。

リンナ:異星種族アラマーマの少女。

 バイクの後部からリンナが急いで降りた。

 ジョウは周囲で無数に群れる金属虫どもへ、戦闘用ボディの赤いカメラアイを向ける。


機械奇虫(マシンバグ)、多数確認……破壊』



 銃を抜くジョウ。専用銃デストロイショットが幾度も火を吹いた。光線(ビーム)の球弾が撃ち込まれ、一撃ごとに金属虫を1機、文字通り粉々にして吹き飛ばす。

 虫どもは殺到してきたが、ジョウの射撃は目標をセンサーで感知してから発射まで1000分の1秒で行う事が可能だ。最速で連射すれば数任せの接近であろうと寄せ付けはしない。

 世界最小の光線(ビーム)兵器は、殺人機械の群れを次々と破壊した。


 砕け、吹き飛ぶ機械奇虫(マシンバグ)の群れ。ジョウの周囲は残骸が広がり沈黙する。

 だがまだ陣内には無数の敵機が蠢いていた。カメラアイが視界内の、その外は頭部内のレーダーが機械奇虫(マシンバグ)どもを捕捉する。

 ジョウはバイクを走らせた。


 呆然と立ち尽くす萌萌(モンモン)にリンナが遠慮がちな声をかける。


「あの……大丈夫ですか?」



 ジョウはバイクで走る。敵の群れへ、止まる事なく。

 本当にそのまま止まらず突っ込み、機械奇虫(マシンバグ)()ね飛ばし、()(つぶ)した。そうしてなおバイクは急激に加速する。


 専用バイク・グレイクロウもまた武器である。乗り物としても使える武器である。

 重力バランサーを備え、時速512kmであらゆる悪路を走破するが、これは副次的な性能に過ぎない。

 ジョウはフルスロットルでグレイクロウを走らせた。この状態では細かい操縦はできない――ほぼ直進のみだ。だが速度は秒速512mに達し、激突した物を粉砕しながら前進する。重力バランサーも本来はこの衝撃で転倒や進路変更をしないがための装置に過ぎない。

 専用バイク・グレイクロウは自走する超合金の凶器なのだ。


 無数の破片が宙に舞った。グレイクロウに接触して粉々に砕け散った、進路に存在した敵機のなれの果てである。

 移動と攻撃を兼ねられるなら兼ねない道理は無い。走行すなわち破壊だ。



 ジョウはブレーキをかけた。機械奇虫(マシンバグ)のいる範囲の端まで来たからだ。

 しかしバイクが停まるや、進路外にいた敵機が殺到してきた。雪崩のごとき群れに呑み込まれるジョウ。

 一瞬後、金属虫どもが吹き飛んだ。降り注ぐ破片の中、ジョウは自ら敵の群れへとバイクから跳ぶ。それに飛びついた金属虫が、牙を突き立てるや、逆に砕けて散った。


 ジョウの黒いボディには、地球でいう爆発反応装甲(リアクティブアーマー)に近い設計思想があった。装甲各所に高周波振動を起こす小さなポイントが設けられ、外向きに衝撃を発生させて敵からの接触を妨害する機能があるのだ。

 その威力は超合金の塊を破砕するに十分であり、捕縛を試みた敵を破壊する事で脱出を容易にする。敵を破壊する事で防御するという機構である。

 多少のエネルギーを消費する事、バイクに乗っていると車体にもダメージを与える事等から、常時使用していられる機能ではないが……近接格闘においては絶大な威力を発揮するのだ。

 防御と攻撃を兼ねられるなら兼ねない道理は無い。己の被弾も敵破壊だ。


 無論、敵が組み付くのを待っているわけもない。手の届く至近距離に機械奇虫(マシンバグ)がいれば文字通り叩き潰す。

 その体から繰り出すパンチ力、実に16t。

 素手で攻撃できるに越した事など無い。接触しても破壊だ。


 そうしながらもデストロイショットを抜き撃ちし、銃撃で絶え間なく金属虫どもを吹き飛ばした。

 敵を蹴散らしながら前進するジョウ。その前方では常に敵が砕け散り、周囲では潰される。後方……通り過ぎた後に動く物は無い。

 だが彼の行く先に、一際大きな金属虫が家屋を崩しながら現れた。体長は10mに達し、戦車に脚が生えて歩いているサイズである。

 その機械奇虫(マシンバグ)は大顎を開け、熱線を吐いた。


 熱線を浴びせられたアスファルトが焼け砕ける。しかしその超高熱の中、ジョウは微動だにしていなかった。

 砕けた地を蹴って宙へ跳ぶ。上空でデストロイショットを構えて敵機へ撃った。

 銃撃を浴び、金属虫の装甲が割れる。

 そこへ向けて、黒い矢のごとく急降下キックを見舞うジョウ。金属のボディが足から突き刺さり、巨体を貫通した!


 32tのキック力。

 64mの跳躍力。

 装甲の衝撃発生ポイントを応用しての方向制御と空中加速。

 それらを駆使した跳び蹴り【ドラゴンロード】は96tの打撃で敵を砕き貫く。全能力を駆使しての渾身の破壊だ。


 爆発!

 超合金の破片舞う爆炎は天高く昇り、真下に着地していたジョウを容赦なく吞み込んだ。

 だがしかし。

 黒い体は炎の中から金属の足音とともに歩き、出てくる。

 赤いカメラアイが次の敵を探し――全てを破壊し尽くした事を確認した。


 戦闘用ボディの歩みがようやく止まった。



 大東亜共栄圏の兵士達は半ば呆然としたまま、遠巻きに恐々とジョウを眺めるだけだ。

 しかしその輪の隙間からリンナが駆け寄って来る。


「ジョウさん! ライズィンザンは無事でした。これから調整しますね」


 朗らかに言う彼女へ頷くジョウ。

 この地へは立方体(キューブ)の破壊に来たのだ。戦いは終わっていない。

1000分の1秒で撃たないとRO山昇竜覇を打たれたら自称最強の拳で成す術なく砕かれてしまう。

ジョウの射撃速度はそこから決めた。

いずれ100000分の1秒に強化する必要があるだろう。そうでないとアスガルドででかいツラできないからな。

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