18 すれ違いは想うが故に
登場人物
ジョウ:主人公。異星技術で蘇ったサイボーグ。
リンナ:異星種族アラマーマの少女。
全く同型の機械奇虫……2機のカブトムシに前後を挟まれたライズィンザン。
操縦席のパネルにセットされたメカ甲虫の中でジョウは忌々しさと焦りを感じた。
(複数いるのか……!)
前方のカブトムシが光線を連射する。距離の近さもあり、回避するのにジョウは手一杯になった。
そこへ後方のカブトムシが光線で焼かれるにも構わず突進し、ライズィンザンに三本角を突き立てる!
ギリギリで直撃は避けたが、翅が貫かれて離脱できなくなってしまった。
すると三本の角が激しい放電を始めた! ライズィンザンの全身を高電力が駆け巡り、至る所で火花が散る。
電撃は操縦席にいるジョウの、メカ甲虫の本体も人造体も容赦なく焼いた。
さらに前方のカブトムシは光線を撃ち続ける――後方のカブトムシに巻き添えを食らわせながら。
この2機はライズィンザンを破壊できれば、互いがどうなろうと構いはしないのだ。
何発もの光線を受け、ライズィンザンの装甲があちこち砕ける。
(こ、ここまで、か?)
ダメージでロクにまとまらない思考の中、ジョウに諦めが浮かんでいた。
敵に撃破された友軍FDの残骸が周囲に散らばっている……それが見えた。操縦者には命を落とした者も少なくなかろう。かつてはジョウもそうだったのだ。
(元々、もう死んでる人間だった。こんなもんだったんだ。どうせ俺なんか……)
だがしかし。
ライズィンザンを捕えているカブトムシの頭部で爆発が起こった。
光線が撃ちこまれたのだ。
それで破壊される装甲ではないが、衝撃で角が揺れ、貫かれていたライズィンザンの翅が解放された。
『早く体勢を立て直せ。この地の立方体だけは破壊してもらないと困る』
その声とともに爆発が前方カブトムシの装甲表面で起こる。光線を連射していたカブトムシだったが、横から撃たれて射撃を外した。
攻撃が途切れた刹那、反射的にジョウは自機に地を蹴らせた。カブトムシの間からようやく逃れるライズィンザン。
『もたもたするな! 故郷を取り戻せるかどうか、この戦に賭けている人間がいるんだ!』
そう叫んでさらに援護射撃を撃ち込むFDが一機……狙撃用のライフルを構えた【スナイパー】と呼ばれる装備タイプ。
通信を送るその声は、昨夜のエロールという青年だった。
彼は彼自身の事を言っているのだと、ジョウは察した。
だがその【スナイパー】にカブトムシが反撃の光線を撃ち込む。
次の照準を合わせていたFDには回避などできず、まともに食らって片足が吹っ飛んだ。
(なんとか、しないと……)
そう思いつつも、思考も動作も未だダメージでふらつくジョウ。
『ジョウさん! 逃げて!』
通信機から悲鳴じみた声が届いた。
(リンナ?)
自動兵器が地球人口の過半数を殺害するまでメンテナンスを続けていた異邦人の少女が、泣き声で訴え、懇願していた。
『逃げてください! お願いですからぁ!』
なぜ己が生きているのか。
(この娘が、拾ってくれたんだった……!)
金属の、虫の形をした、機械の中で。
ジョウは思い出した。
次の瞬間、意識がはっきりした。
ジョウは通信を送り返す。
『訊きたい事がある。こいつらを倒したら戻るから、その時に』
『え!? でも、そんな、ダメ! やめて!』
リンナが拒絶の言葉を口にするのはこれが初めてだ。
お互いそんな事に気づく余裕は無かったが。
気づかないままジョウは言った。
『待っててくれ』
一方的である。
懇願を受け入れなかった。
拒絶を無視した。
そして己と一体化している巨大な体を動かした。
戦闘を続行するために。
ライズィンザンが脇に抱えた砲身を構えた。
2機のカブトムシが攻撃態勢に反応する。照準をスナイパーから切替え、体の向きを変えた。
その一瞬に、ライズィンザンは光弾を撃ち込んだ。
敵2機の間へ。
光弾は2機の中間で爆ぜ、光線を全方向に拡散放射する。【ドラゴンフライ】最大の火力がカブトムシの装甲に突き刺さった。
それでも装甲は耐えた。焼かれ穿たれながらも機能停止にまでは至らない。
だがダメージはあったし、無数の光線に貫かれて身動きはできない。
その光線の間を、全速力で、ライズィンザンが飛んだ。
己の放った光線であちこちを焼きながら。
そして敵機の片方へ、突き刺すかのように、脇に抱えた砲身を突き付けた。
銃口の位置は――敵機の光線発射口。
そこにある半透明のレンズは光線を通すのだ。
ライズィンザンが光線を撃ち込んだ。
カブトムシが内側から破裂する!
装甲の隙間から爆炎が噴き出し、周囲を呑み込んだ。
至近距離のライズィンザンもその中――
片足を失った【スナイパー】の操縦席で愕然とするエロール。
『カミカゼか!? バカな……』
しかし爆炎の中からライズィンザンが転がり出てきた。
追加装甲でもあった【ドラゴンフライ】装備がボトボトと壊れて落ちる。だがその中の、ライズィンザン本体は、焦げも亀裂も損傷もあれど、まだ戦闘可能なコンディションを保っていた。
捨て身ではない。
追加装甲を犠牲にして勝ったのだ。
『まず1機!』
叫び残る敵機へ向き直るジョウ。
だがその敵機は既に光線の発射体勢に入っている。
ライズィンザンは丸腰。
『いかん!』
慌ててライフルを撃とうとしたが、エロールの射撃は間に合わなかった。
ロボットで戦うなら激戦で部品が壊れる描写はあって当然なければならぬ。




