17 開戦、脅威の出現
登場人物
ジョウ:主人公。異星技術で蘇ったサイボーグ。
リンナ:異星種族アラマーマの少女。
――大東亜共栄圏軍部・インドネシア・スマトラ島基地――
他の部隊ととも海上を移動し、ジョウ達はマレー半島最寄りの基地へ入った。
ジョウとリンナ、ライズィンザンやトレーラーの設備……それらには機密扱いの部分も多いので、同基地内でも他の部隊とは別の建物で過ごす。
(いよいよ明日、次の立方体へ切り込むか……)
そう考えながら廊下の窓から外を眺めるジョウ。外は夜、ただ中庭があるだけだ。しばしそこに佇み、何とはなしに考える。
(機械奇虫から土地を取り返して……その次……次はどこなんだろうな。2つ目を潰しても残り126基か。100以上……先は、長いな……)
ふと窓ガラスに映る人影に気づいた。いつの間にか背後に兵士がいたのだ。
驚いて振り向くと、その兵士は静かに声をかけてきた。
「初めまして。エロールだ。よろしくな」
まだ若い青年である。特徴的なのはその左目で、義眼になっている――それも金属枠に円形のレンズが嵌められた機械式のスコープだ。
サイボーグ技術が実用化された世界ではあるが、ここまで露骨な人工器官を付けている者は珍しい。
「あ、ああ。ジョウだ、よろしく」
気圧されながら挨拶を返すジョウ。
それを値踏みするように見つめ、青年――エロールは尋ねた。
「……一応訊くが、大丈夫なんだろうな?」
「何が?」
「戦の直前だというのに集中できていないだろう」
ジョウは一瞬言葉に詰まる。相手の言う通りだからだ。
しかしそれを自覚すると、ジョウは相手の視線に鋭い目を返した。
「色々あるが、今から切り替える」
それで納得してもらえたのかどうか――ジョウにはわからなかったが、エロールは言い争う事なく微かに頷く。
「そうか。頼むぞ。この作戦に希望をかけている者もいる事を忘れるな」
そう言うと彼は背を向けて去ってゆく。
それを見送り、彼が廊下を曲がって視界から消えると、ジョウは自分の頬を両掌で叩いた。
(今は目の前の仕事だぞ)
自分にそう言い聞かせて。
――マレー半島南部山中――
海を渡り上陸する大東亜共栄圏の軍。かつてのマレーシア首都・クアラルンプールは大陸の他の都市と同じく、半壊した集落となっていた。
そこから北上して山中に入り、すぐ。軍の部隊は機械奇虫の群れと遭遇。戦闘に入った。
森の中で襲いかかってきたのはやたら前足の長い甲虫型。腕の先には瞬間的に大きな電力を流す機能があり、機械類を容易にショートさせる事ができた。
それを大きな盾を持つ【ディフェンダー】型のFDが食い止め、後ろから様々な近接・射撃装備の味方機が援護する。軍のFDは連携でもって敵の数に対抗した。
だが敵にも援護射撃はあった。頭部に大きな光線砲を搭載したツノゼミ型の機械奇虫が、樹上からFD達を撃ったのだ。
森の中を光線が迸り、火花を散らす。が――
その砲台どもをさらに高高度から撃ち抜く光弾が次々と放たれる。
上空を飛ぶ【ドラゴンフライ】装備のライズィンザンからだ。ある程度敵の数を減らすと、急降下して森の中へ着地。消去装置を起動させる。
ライズィンザンが着地する度、その周囲は機械奇虫の群れが煙をあげて沈黙する空白地帯となった。
ツノゼミどもも空へ飛んで迎撃しようとするが、射程・破壊力・飛行速度の全てで上回るライズィンザンには敵わず、唯一上回る頭数も軍のFDからの支援射撃により有効打には繋がらなかった。
(いける、何も問題は無い。そうだ……ある筈が無いんだ)
味方からの援護が多いので、予想以上に有利に展開する戦局。それにジョウは安心を覚えていた。
安心しようとしていた……のかもしれないが。
(次はどこを抑える? 味方が立方体へ直進できる地点か……)
ジョウがそう考えた直後。
『ウギャァアー!』
通信機から悲鳴が響いた。
『リンナ、さっきの悲鳴はどこだ!?』
『い、今送ります』
慌てて訊いたジョウに、後方で守られたトレーラーからリンナが情報を送信してくる。
操縦席内のモニターに周辺MAPが映り、その一点でマーカーが点灯した。メカ甲虫の姿で前面パネルに収まっている今のジョウからもそれは見える。
マーカー地点へジョウは機体を飛ばした。
森の中でほぼ壊滅しているFD小隊。残るは1機、それを追い詰めているのは1機の機械奇虫。
しかしサイズが他の倍ぐらいある、三本角のカブトムシ型だった。
のしのしと残る1機に迫るカブトムシへ、ジョウは上空から光弾を撃ち込む。狙い過たず命中。
だが光弾は装甲表面で弾かれた!
(硬い! ならば……)
他の敵影が無い事を確認し、ジョウは機体を急降下させて着地する。
間髪入れず、即座に消去装置を起動させた。
これが長時間、あるいは連続で起動させられるならば。或いはもっと効果範囲が広ければ。この消去装置だけで全てカタがつくのだが。
しかし起動させれば近距離にいる機械奇虫も巣も立方体も全て回路が焼き切れて無力化される、切り札である事は間違いない。
大きく硬い三本角カブトムシは、確かにこの効果範囲内にいた。
そしてカブトムシは――消去装置が起動したよりも明らかに後に、角の間にある発光機器から光線を撃ち込んできた!
予想外の攻撃をまともに食らい、ライズィンザンは肩口を撃ち抜かれる。
『なにィ!?』
吹っ飛ぶ機体の中で面喰うジョウ。
すぐにリンナから通信が入った。
『ジョウさん! その機械奇虫は消去装置に耐性があります!』
(こいつら、こっちに合わせて進化したってのか!)
驚愕するジョウは、いったん空へ逃れて仕切りなおそうとした。
しかし翅を広げた直後、今後は背中が撃たれる!
『がっ!?』
激震する操縦席で、ジョウはライズィンザンのレーダーと視界でなんとか現状を把握した。
全く同型のカブトムシが、後ろの木陰から増援として現れたのだ。
(2機いるのか……!)
悪いな、この作品の主人公もちょくちょくピンチに陥るんだ。
自分が書くとすぐこういう物になるわい。




