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15 姪

登場人物

ジョウ:主人公。異星技術で蘇ったサイボーグ。

リンナ:異星種族アラマーマの少女。

 教えられた施設にあらかじめ連絡を入れ、ジョウ達はそこへ向かった。

 施設に到着すると、若い職員が出迎えてくれた……恐縮しながら。


「すみません、伝えはしたんですが、その、外出したみたいで……」


 気まずい中、それでもジョウ達は案内された小部屋でテーブルについて待った。

 スマホで最近のニュースなど見ながら、待つこと小一時間。


 怒る職員に連れられ、悪びれる様子なく「こんちわー」と適当な挨拶をしながら、肩までの髪をツインテールに縛った女の子が入ってきた。

 面倒くさそうにジョウの対面に座る。


「君達が私の親戚?」

「うん、まぁ……」


 正直、ジョウは戸惑っていた。

 姉の娘、怜美(れみ)。会った事はあるが、それはこの子が赤子の時に数回だ。目の前の少女は既に13歳、10年以上前の印象があるかといえば、わからないとしか言いようがない。

 姉に似ているかと言えば……顔だけは面影がある、気がする程度。


 何か困っているなら力になれるかと思ってきてみたが、怜美(れみ)の態度は完全に人をナメた物だった。

 そんな彼女がジョウに訊く。


「私の引き取り先なの?」

「俺達も日本に来たばかりで、まだ住所が決まってなくて。親戚の子がいると聞いたから、ちょっと見に来たんだけど……」


 そう言うジョウに、怜美(れみ)は白けた笑いを見せる。


「あ、そう。見たければどうぞ」


「施設ではよくしてもらってる?」


 もしや今の境遇に問題でもあるのかとジョウは訊いてみた。

 すると怜美(れみ)はへらへらしながら肩を竦めた。


「普通かな。ギスギスしていつも誰かがケンカしてる所だし」

「それが普通なんですか?」


 リンナが戸惑いながら訊くと、怜美(れみ)は初めてジョウ達の目を覗き込むように窺った。


「余裕無いからね、どこも。世の中全部そうでしょ。君達の家だって、好きで故郷を離れたわけじゃないんでしょ」


 質問してはいたが、怜美(れみ)は確信してもいた。

 リンナは少し気圧されて、ちらちらとジョウを窺う。


「まぁ、それは……でも、そんな時だから、身内では助け合った方がいいんじゃないかと思いまして。ね? ジョウさん?」


 そんなリンナを見て「ふーん」と疑わしそうに呟く怜美(れみ)


「さん、付けか。兄妹でもないんだね」

「あ、あ、あ、それは……」


 慌てるリンナはしどろもどろになる。

 その横で何と答えた物か考えるジョウに、怜美(れみ)はニヤリと笑った。


「なんか訳あり? じゃあ私なんかを抱えてる余裕無いでしょ。こんなのにお構いなく」


「何かしんどい目にあってる?」


 ジョウは訊く。やはり何か、怜美(れみ)には心に圧しかかっている物でもあるんじゃないかと。

 すると彼女はあっさりと認めた。


「あってなきゃこんな施設にいないって」


 そしてニンマリと笑う。

 可愛らしい少女に相応しくない、どこか歪んだ笑顔だった。


「私、ちょっとしたお金はもってた筈なんだよね。父さんと母さんが残してくれた貯金」


 帰って来るつもりだったであろう姉夫婦だが、結果的にその貯金は、怜美(れみ)への遺産になった。

 しかし……


「無いんだって。全然。すっからかん。おかしいよね……父さんと母さんから私を預かって、この施設に入れてくれた親戚なら何か知ってそうじゃない?」


 そこで怜美(れみ)はクスクスと笑う。

 どこかやるせない、嫌な笑い方だった。


「私をここに預けた後、すぐに遠くへ引っ越したんだって。一応、メールで聞いてみたんだけど。すぐにアドレス変えられて、何年経っても返事が無いんだな、これが」


 その親戚の仕業かどうかはわからない。

 仮にそうだったとして、姉夫婦の貯金にどうやって手を出したのかもわからない。

 ただそんな事は怜美(れみ)に何の意味も無かった。


「私の事ならお構いなく。どうにでもなればいいよ。どうせいつか虫に食われちゃうんだし」


 せせら笑う怜美(れみ)を、側の職員も困り果てた目で眺めている。いつもこんな態度であろう事は容易に窺えた。


「なるほど、そんな状況だったか。でも悲観的になってもヤケになっても状況が良くなるわけじゃないし……」


 だからどうするか一緒に考えよう……と、ジョウは提案するつもりだった。


「はは、戦わなきゃ現実と……てヤツ?」


 だが怜美(れみ)は白けた笑みを差し挟む。


「そんな殊勝な気持ちは忘れちゃったよ。父さんも母さんも一生懸命働いてた筈なのに、ダメな時は何をやってもダメだったじゃない。世の中そんなもんでしょ。必死になってもムダじゃん」


 そう言うと彼女は立ち上がった。


「ばいばい。お元気で」


 一方的に言って怜美(れみ)は部屋を出ていく。

 職員は「ちょっと、ちょっと!」と止めようとしたが、構う事なく。


 リンナがジョウへ振り返り、困惑した目を向けてくるが、ジョウにもどうしていいのかわからなかった。

真面目にやっていくのがバカバカしくなる状況というのは有るものだ。

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