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14 日本到着

登場人物

ジョウ:主人公。異星技術で蘇ったサイボーグ。

リンナ:異星種族アラマーマの少女。

 ――日本の空港――



 ジョウとリンナは飛行機から降りた。ジョウは人造ボディの中に入った状態で。


 トレーラーとライズィンザンは大東亜共栄圏の支部に預けてある。不安はあったが、戦闘用のFDを積んで日本の道路を走るには特別な許可が必要になるし、大きなトレーラーでは日本の道路は走り難い。

 そんなわけで多少の不安は我慢し、二人は大東亜共栄圏の基地にトレーラーもライズィンザンも置いてきた。2人がいない間に思う存分調べたい……という山和(さんわ)長官の思惑をわかってはいたが。


 よって長官に手配してもらった航空便で日本に来たのである。

 ジョウは空港から外の街並みを眺めた。


「やっと着いたか……」


 10年間意識を失っていたので、体感的には日本から離れて1年も経っていないのだが、妙に懐かしく感じる。

 とはいえ空港の周囲に住んでいたわけではないので、見える光景に馴染みは無い。ただ看板や店舗の文字が日本語というだけで、やはり「帰ってきた」という思いは湧き出てくるのだ。


「情報としては知っていましたが、襲われる心配なく皆が暮らしていますね」


 リンナも興味深そうに街並みを眺める。

 フライト前にいた町も同じぐらいには平和だったが、大東亜共栄圏の支部に監視の中で直行したのでゆっくり眺めている暇など無かったのだ。


「とりあえず身元の証明をできるようにするか」


 ジョウの手には山和(さんわ)長官から渡された、クリアファイルに入った手続き用紙が数枚。

 大東亜共栄圏が二人の身元を保証するという証明書で、これを空港で提出すれば、ジョウは元々の戸籍を認められるし、リンナも――ちょっとややこしい立場ではあるが――身元を得る事ができるのだ。



 ――約一時間後――



 手続きを済ませ、二人は駅に向かった。ジョウはマイナンバーカードを、リンナは新しく貰った身元の証明書を手にして。

 結局リンナは旧ベトナム領の難民という事になり、日本への渡航・移住への許可を正式に受けた扱いになった。

 クリアファイルの中の書類を見つめ、リンナが目を輝かせる。


「これで私も地球人ですね!」

「ああ、日本で暮らせるよ」


 そう言うジョウに、リンナは満面の笑顔でうんうんと頷く。

 そうしてジョウに訊いてきた。


「これからどこへ行くんです? ジョウさんの家ですか?」

「もうとっくに俺の家じゃなくなっているだろうな……まぁ一応見に行ってみるか」


 海外へ行く前に住んでいた賃貸アパートへ、ジョウは向かう事にした。



 ――かつての住居――



 アパートはスーパーマーケットになり、買い物客が出入りしていた。老いた管理人が適当なチェーン店に土地ごと売り飛ばしたようだ。

 ジョウの住んでいた部屋は、文字通り消えて無くなっていた。


「10年経ってるんだもんな……」


 スーパーの片隅で項垂(うなだ)れるジョウ。

 リンナが労わるように声をかけた。


「気を落とさないでください。二人で住む場所を見つけましょう。今は大東亜共栄圏の日本支部に行ってみたらどうでしょうか?」


 日本に来る前、山和(さんわ)長官は「話は通しておくから、日本支部を寝泊りする拠点として使って良い」と二人に告げていた。

 リンナの勧めに頷きつつ、ジョウは出口へ向かう。


「その前に1つだけ寄りたい。姉夫婦がね……隣の市に住んでるんだ」



 ――元姉夫婦の家――



 いざ着いてみると、小ぢんまりとした一軒家には別の表札がついていた。


「別人の家になってる!?」


 衝撃を受けるジョウ。リンナはおろおろするばかりだ。

 そんな二人に後ろから声がかかる。


「ウチに何か?」


 慌てて振り向くと、見知らぬ初老のおじさんが立っていた。

 彼に詰め寄るようにジョウが訊く。


「ここに住んでいた二条(にじょう)という一家を知りませんか!?」

「あー……その人達かどうか知らんけど、ウチが買う前に住んでいた家族なら、大陸で事故にあったそうで。まぁ役所で聞いてみなさい」


 気まずそうにそう言うと、おじさんは家に入っていった。



 ――区役所――



「10年ぶりにわいてきた親戚」などという不審者に何か教えてくれるのか……そんなジョウの心配は杞憂に終わった。

 窓口で尋ねると、別室に通され、担当だというおばさんが書類を持ってきて、事細かに話してくれたのだ。



 5年以上前、仕事で大陸に出張した旦那さんが、機械奇虫(マシンバグ)の襲撃に会い行方不明になった事。

 それを捜索に行った奥さん……ジョウの姉もまた機械奇虫(マシンバグ)との戦闘に巻き込まれ、行方不明になった事。

 夫婦には一人娘がいて、短期という約束で親戚に預けられていたが、その親戚により今は施設にいる事。



 担当のおばさんは期待をこめてジョウに訊いた。


「君は親戚なのよね? 君の家は引き取ってあげられない? ご両親に相談してあげてくれないかな」


 機械奇虫(マシンバグ)との戦いが15年に渡り、地球の人口が最盛期の4割になろうというこの世界。身寄りの無い子を受け入れる施設も十分とは言い難かった。

 外宇宙からの技術で、手軽で高性能な翻訳機やFDが実用化された事もあり、仕事で海外へ行き現地で事故に遭う者は後を絶たない。日本本土が平和でも、機械奇虫(マシンバグ)の脅威と無関係でいられる筈も無いのだ。


「まぁ顔ぐらい見てあげて」


 口籠るジョウに担当のおばさんは娘――ジョウの姪・怜美(れみ)がいる施設の場所を教えた。

親族がいる事は以前ジョウが言っていた通り。

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