四 謎多キ吉報
登場人物
山和望斗:大東亜共栄圏連合軍長官。元日本の自衛官。
――大東亜共栄圏軍部・マレーシア・ボルネオ島基地――
「立方体の制圧に成功しただとぅ!? なんでそんな事ができる!?」
調査班からの報告が届き、山和長官は驚愕して叫んだ。
各地で調査班が向かっては壊滅、生き残りから僅かな情報を集めていた今までは何だったのか。その情報の積み重ねがついに実ったとでもいうのか。
それにしたって調査が成功したという報告が来るべきであって、いきなり制圧とはどういう事なのか。そもそも制圧とはどういう状態なのか。
あまりに疑問が多くて魚みたいに口をパクパクさせている長官に、部下は手元の端末を見ながら告げた。
「現地で新型FDに遭遇。その機体が無力化に成功したとの事。また立方体が停止すると周囲の巣も全て停止しました。立方体の調査と資材の回収のため追加の部隊を出すよう要請が出ていますが、許可されますか?」
「そ、それは許可する! しかしその、謎の新型はどうした!? 追跡はどこまでできた?」
大慌てする長官。
謎の新型……日本製の新FDかと疑われていた機体。これまで人類が敗れるだけだった立方体を制圧する程の力を持つなどと、敵だろうが味方だろうが放ってはおけない。一刻も早く何者か突き止めねば。
大げさではなく、人類の行く末に大きな影響を及ぼす存在だ。
焦り詰め寄る長官に、部下はちょっと身を引きながら手元の端末を見て告げた。
「追跡というか……調査隊の要求を了解し、旧ベトナム領のハイフォンまで同行してくれました。現在、そこで待機中です」
「えっこっちに投降したのか!?」
仰天する長官。
謎の強大な新戦力、などと現れてそんなに物分かりがいいなんて事があるのか。姿を消したり、こちらにも攻撃したり、思わせぶりなセリフを尊大な態度で吐いたりしないのか。
混乱する長官に、部下は頭を振りながら手元の端末を見て告げた。
「投降ではなく同行です。あちらから、責任のある人に会って話がしたいと要求が……」
「操縦者とコンタクトしているのか! どんな奴だ!」
思わず訊く長官。
敵か味方かわからない謎の人物なのにやけにあっさり会えそうだ。仮面をかぶって何度も現れたり去ったりはしないらしい。時代は変わるものだ。
食いつく長官に、部下は疑わしい目で手元の端末を見て告げた。
「日本人・ジョウ=ムラサメと名乗り、出自不明の少女を連れています」
正直嘘臭い。正体不明の人物が同行している所とかが余計に。
長官はそう感じ、疑いの目で確認する。
「本人が名乗っている人物は実在したか?」
「はい。10年前にMIA……戦闘中に行方不明になった、傭兵です」
「それがどういう経緯で謎のFDに? そのFDはどこで造られた?」
「本人が語った経緯はこちらに」
部下がプリントした紙を差し出した。ジョウが語った内容をまとめた物である。
戦闘中、敵に追い詰められやむなく自爆。
目を覚ました時、旧ベトナム領の国境近くでトレーラーの中だった。新型FDはその中にあった物、同行者の少女・リンナは自分と同じ所でほぼ同時に目覚めた人物。
10年間の記憶が非常に断片的に、極僅かに有る。どこかの施設の部屋の中の光景、クローン再生という言葉が妙に焼き付いている。
自分の外見が10年前と全く別人になっているので、何らかの改造処置を受けたと思っている。
リンナには異星の知識がいくらかある。逆に身元に繋がる記憶は全く無い。
何をしていいのかわからないので、とりあえず人里に出た。
機械奇虫の巣を制圧した後、立方体への対処法もなんとなくわかったのでやってみた。
「……これが全て本当だと仮定しても、何もわからんのと同じだな。どこかの組織が対立方体に造ったクローン人間をなんらかの理由で捨てたとでもいうのか?」
額を抑える長官。
なお改造人間技術が実用化されたこの時代にも、人間一人をクローン技術で造った公的な記録は無い……金に糸目をつけなければ技術的には可能と言われてはいるが。
悩む彼へ、さらに部下が告げた。
「ジョウは日本への渡航を希望しています」
「……よし、私が会おう」
決断する長官。
ジョウという人物の言葉を信じたわけではないが、立方体を制圧した以上、放っておくわけにはいかない。
どう考えても機械奇虫との戦いを左右する人物である。人類の存亡を左右しかねない。
それほど重大な相手なのだ。人づてではなく己が自ら会ってどんな人物なのか確かめてみないと、何も決断が下せない……山和長官はそう考えたのだ。
なおジョウ達にくっついて来た馮萌萌大校は面倒くさいので追い返された。
彼女は「我が国への領土侵犯を正統政府として抗議する!」と怒鳴っていたが、今はそれどころでは無いのだ。
第三者から見た主人公。




