表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
12/38

三 進マヌ調査

登場人物

山和望斗:大東亜共栄圏連合軍長官。元日本の自衛官。

 ――大東亜共栄圏軍部・マレーシア・ボルネオ島基地――



 その日も山和(さんわ)望斗(ぼうと)長官は部下からの報告書を見て歯軋りしていた。


「ええい、またぞろ下らん事ばかり喚きおって……」


 1つ目は国内の世論、その一部。

 この未曾有の危機に乗じ「軍が権力欲を露わにし過ぎている。大東亜共栄圏はその最たる物」……そう主張する者が後を絶たないらしい。

 長官は歯軋りした。


「そんな事は機械奇虫(マシンバグ)相手の勝ち目が少しでも見えてからにしろ。こいつらの脳味噌は虫未満か」


 2つ目は大陸やそこの半島にある政府……の正統後継を名乗る組織、そのいくつかからの抗議文。

 内容は「我が政権の許可なく上陸し、大東亜共栄圏連合軍が活動する事はまことに不本意。これは中心となっている日本の時代錯誤な侵略行為の一旦ではないかと深く憂慮している。過去の過ちを今すぐ深く悔いて猛省せよ」……というもの。

 長官は歯軋りした。


「同じような文面ばかり飽きもせず……低能組織同士でコピペでも回してるのか」


 3つ目……それを見て長官は驚いた。


「日本の新型機が大陸で活動していた!?」

「旧ベトナム領です。ご存じありませんか?」


 尋ねる中華民国人の副官は窺うような目を向ける。

 日本人の長官が日本の兵器について知らない、という事があるのだろうか?

 しかし山和(さんわ)長官は首を振って否定した。


「全く知らん。まぁ各国軍事機密を全部さらせ、などという約束は無いからな。日本が新型を開発しても、大東亜共栄圏軍部所属の私に教える義務は無い。無いが……」


 そこまで言うと山和(さんわ)長官は不満げに唸る。

 祖国が自分に隠し事をしているとなれば面白いわけがない。


「日本政府に問い合わせるか。公式に、明るみに出して問えば黙殺はできまい」


「しかしまだ秘密にしているなら、それなりに理由があるのでは? 実用化のメドが立っていないとか……」

「それに旧ラオス領との国境近い山中ですよ? 新型のテストにしたって、なぜそんな所で? 誤報という可能性も高いと判断します」


 部下達が少し慌てて意見する。

 部屋には日本人の部下もいたが、彼は情報そのものに懐疑的だった。

 それらの言葉を聞いてしばし考える山和(さんわ)長官。


「よし、未確認新型機の情報を集めるのだ。日本ではなく、大陸で生き残っている後継組織か何かかもしれないからな。どこかに質問を投げるにしろ、ある程度の事は把握してからだ」


 後継組織……それは現地の政府の後継者を自称する組織の事だ。

 大陸の全ての国家は壊滅したが「我らこそ前政府の正当な生き残りである」と称する集団は各地に存在する。元大国ならそれが1つや2つではない――中華人民共和国の自称後継組織などは10以上ある。

 どれが本当に正当な政府なのか判断するのは非常に難しい問題であり、大東亜共栄圏軍部の立方体(キューブ)破壊作戦を遅らせる理由の一つになっていた。


 指示に部下達が(うなず)くと、山和(さんわ)長官の目が鋭くなった。


「今はあくまで立方体(キューブ)破壊作戦の下地を固める事を第一とする。マレーシアの状況はどうだ?」


 山和(さんわ)長官がこの地にいるのは、攻撃目標候補の立方体(キューブ)の1つがマレー半島にあるからだ。

 海岸線からの距離、現地の地形、周囲の情勢等から候補はいくつかに絞られているが、この地の立方体(キューブ)が最有力とされていた。


「現地のプレデター達に接触し、資材確保は進んでいます」


 部屋にいた部下の一人がはきはきと答える。

 現地人達の協力の有無は大きいし、攻撃作戦実行のためFDは大量に要る。情報収集と協力の取り付けと並行して、資材の購入も必要不可欠だった。


「うむ。最寄り立方体(キューブ)周辺の調査は?」


 順調らしい報告を聞いて山和(さんわ)長官の機嫌が上向いた。

 彼へ部下の一人がはきはきと答える。


「調査隊、壊滅。生き残った者は帰還しました」

「またか……表向き『調査()成功』という事にしておけ」


 一転、がっくり肩を落とす山和(さんわ)長官。

 立方体(キューブ)の周囲を調査すれば、当然、うようよと徘徊している機械奇虫(マシンバグ)どもとの遭遇は避けられない。

 こっちの調査は遅々として進まないようだ。被害が大きくなれば別の候補地へ目標を移す事も考えねばならない。


 ……まぁ同時進行で調査させている各地も、似たような状況だったが。


 それでも各調査は成功という事に、表向きはなっていた。

 どんな装備でどこまで接近し、どんな機械奇虫(マシンバグ)とどんな武装で戦ってどのぐらい有効だったか、それらのデータは生き残りがいる限り持ち帰ってくるからだ。

 ハードルを低くする事が柔軟な成功の秘訣である。


「一ヶ所ぐらいは本当に成功する調査班が出てくれんものか……」


 額を抑えながら祈るように呟く山和(さんわ)長官。


 その頃、(じょう)とリンナはインドシナ半島の付け根ぐらいにいた。

徘徊している少数のマシンバグなら現地人がロボットで小隊を組んで勝つ事もできる……が、敵の巣に近づいたり大規模な襲撃をされたら軍隊でも勝てないというパワーバランス。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ