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8 捕食者たち

登場人物

ジョウ:主人公。異星技術で蘇ったサイボーグ。

リンナ:異星種族アラマーマの少女。

 ――旧ハノイ市近くの川辺――



 かつてはべトナム有数の都市近郊も、今では半分ほどが砕け、崩れ、無残な姿を晒していた。この地もまた異星兵器の攻撃を受けたのである。

 それでもまだ人々は生き残っていたし……今や、彼ら自らが敵を追い求めていた。


 数機のFDに案内され、ジョウ達のトレーラーが町に着く。

 指示された空き地に駐車し、ジョウとリンナが車から降りると、FDの操縦者達も機体から降りてきた。

 そのリーダー、ファンはジョウ達を見て驚く。


「若いな! まだ子供……あ、いや、失礼……君たちは兄妹かな、二人だけか? 苦労しただろう」

「ああ。けれど世界中がこんな有様だから」


 ジョウとリンナの外見は地球人でいえば10代の半ば程度だ。ジョウの使っている人造ボディにリンナの遺伝子も入っているので、容姿も似ている。

 だから兄妹と思われてもおかしな話ではない。

 しかしリンナはジョウの後ろで、一人嬉しそうに微笑んでいた。頭の触覚と複眼は帽子で隠しているので、見た目は地球人の少女そのものである。


「そうだな。ゆっくりしていってくれ、ジョウ。君は命の恩人だ」

「あ、いや、日本へ帰りたいので。できれば食料を分けてもらえれば、と」


 ファンに頼むジョウ。命の恩人と言われながらも低姿勢で。

 農業にしろ牧畜にしろ、場所も時間も必要になる。機械奇虫(マシンバグ)の闊歩する大陸では、そのどちらもなかなか割くことはできない。

 この状況下で、大陸では食料の価値が跳ね上がり、とても貴重な物になっているのだ。


 しかしファンは笑いながら頷く。


「ああ、もちろんだ。今回の稼ぎはジョウ達のおかげだ、全部持っていかれても文句は言えない所だからな」


 稼ぎ。彼らは機械奇虫(マシンバグ)の残骸を大量に回収していた。

 精錬や資源採掘などなかなかできない大陸で、それらを日常的に行っている場所がある。円盤が落とした立方体(キューブ)だ。

 そこで製造される機械奇虫(マシンバグ)は、各種金属や石炭・石油・発電機・光線(ビーム)兵器用のエネルギー装備を体内に持っている。それを撃破すれば残骸から回収可能だ。

 機械奇虫(マシンバグ)に人類が追い詰められているといっても、兵器と数と戦い方次第で倒す事はできる。


 追い詰められれば人間は食べるために何でもやる。困窮した大陸の住人には、FDに乗って機械奇虫(マシンバグ)を狩る者達が現れた。

 それらの数が増すと、島国から金属やエネルギー資源を買いに来る者達さえ現れだした。

 いつしか機械奇虫(マシンバグ)を狩る者達は『プレデター』と呼ばれ、新たな職業として定着していた。



 ファン達はトレーラーに食料を積み込むのも手伝ってくれた。

 箱を車に入れ、男の一人が訊いてくる。


「大東亜共栄圏は大陸の奪還を始めたのか?」

「いや、全然。そういうわけじゃない」


 ジョウの答えに男は「そうか……」と肩を落とす。

 人間の大規模な反撃作戦が始まった事を、新型機を見て期待したのだろう。

 食料を積みながら、ジョウは己の専用機を横目に眺めた。


 ライズィンザン。

 アラマーマ族の技術をFDに落とし込んだ、この世にたった1機の機体。

 ここから日本に帰るまで、そしてその後、地球を地球人の手に取り戻すまで……こいつが頼りだ。


 その機体の各部をリンナが点検している。

 その手には工具箱……見た目は地球の物とそう変わらない。中の工具も、地球のどのメーカーの物でもないというだけで特別奇妙に見える物は無い。

 そんな工具箱一つあれば、リンナは巨大な人間型兵器の整備や修理をほぼ完璧にこなす事ができる。流石に大きなパーツを持ち上げる時はジョウが手伝うが、機械や配線の修理や設置は地球人の熟練工が裸足で逃げ出す速度と精度でやってのける。



 リンナの超能力。それは金属分子制御という物だった。

 彼女は触れている金属の特性や品質が「目に見える」ように理解できるし、分子の結合や密度を調整する事もできる。

 焼け焦げた装甲板を雑巾で拭くと綺麗に修繕でき、亀裂をライターみたいな小さな火で炙ると溶接できてしまう。複雑に食い込みあった残骸をペンチで軽く引っ張れば分解でき、太く長いネジにドライバーを当てるや最奥まで緩みなく締める――その光景を見た時、ジョウは心底驚愕したものだった。


 彼女が住んでいた立方体(キューブ)には大掛かりなマニュピレーターや加工機械もあったし、ジョウも色々と意見は出したが、だからと言って完全な新型機を試験期間含めて1週間で組み上げるというのは地球なら考えられない事だ。

 それもリンナの超能力があればこそできたのである。

 地球に派遣されたアラマーマ族が、なぜリンナを最後の一人として残したのか……その理由はいくつかあるのだろうが、その1つをジョウは理解した。



 機体の点検をしているリンナの表情はいきいきとしており、元気で明るい。

 これが本来の彼女なのだ……ジョウはそう思う。


(この子が生きていける場所も見つけなくちゃな……)

ヒット作のせいで言葉の印象が変わる、という事は「ジョーズ」「エイリアン」等でもあった事。

この作品ではあえて「プレデター」という語を本来の意味で使っておいた。

パクらずにヒット作による印象の強さを利用する、ちょっとした小細工だ。

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