section.49_威力偵察
第一回 威力偵察
出撃部隊 都市外活動専任特殊部隊
ハンドラー小隊
ウィペット小隊
「流石に師団となるとドローン対策も豪勢ですね」
レヴィナスは目標に近付けていたドローンの信号がロストしたのを確認し舌打ちをした。
索敵・通信用の飛行型ドローンである以上、低出力のレーザー兵器でも容易く撃ち落とせてしまう。だとしても⋯⋯
「一定距離に近付いたドローンは問答無用で落とされますね。検知方法はともかく、おそらく自動迎撃なのは間違いないでしょう」
「ウィペット1よりハンドラー1。時間切れだ。目標から迎撃が出てきた。戦車3」
「ハンドラー1了解しました。ハンドラー2、ハンドラー3。置き土産は?」
メイアからの通信に、レヴィナスはドローンのオペレートを終了し機体の操縦に切り替える。
「ハンドラー2。コンテナは空です」
「ハンドラー3。同じく空です」
置き土産とは対戦車地雷と地上センサーだ。目標観測と足止めを行うためのものだ。
「ハンドラー隊、撤退します。追跡の情報は聞いていましたね」
「「了解」」
「さて、今日のミサイルコンテナは特別製です」
レヴィナスのMⅢレックスが後退しつつ、背負うミサイルコンテナから一回り小さいコンテナを射出した。
地面に転がったコンテナは外装が足のように地面に展開する。中から出てきたミサイルが天に向かって垂直に立ち上がった。
「本当は自分で撃ちたいんですけどね」
MⅢレックスはミサイルコンテナをパージし、踵を返す。ハンドラー2、ハンドラー3のMⅢレックスを追うように速度を上げた。
「ウィペット1よりウィペット隊全機へ。ハンドラー隊を援護する。通信はレーザー通信のみに限定。戦車を一撃で落とせとは言わない。捕捉されるなよ」
「ウィペット2。了解」
「ウィペット3。了解」
ウィペット隊のMⅢクーガーは、ハンドラー隊よりさらに後方で長距離砲撃用の砲身の長い重機関砲を構えていた。
長距離射撃に特化したウィペット隊のMⅢクーガーの頭部は改造されており、一際大きい望遠カメラが搭載されていた。砲を構えずとも望遠カメラで敵機の観測ができる。
そして、メイアの操るMⅢクーガーの持つ砲のみ中口径砲となっていた。他の機体と異なり一脚を地に突き立てる。衝撃に耐えるため、ホバーエンジンの出力は最低値に。
「光学迷彩とは厄介だな」
完全に姿を消すような芸当ができるようなものではない。だが、敵部隊の存在は確認できても、軍事衛星どころか遠隔からの視認でも編成の詳細な把握が困難だ。
「だが、出てきてくれれば鴨撃ちだ」
3機のMⅢクーガーの砲が火を吹いた。
望遠カメラの真ん中に映っていた戦車の横面に風穴が空いた。
「撃墜1!」
「流石です」
「世辞はいい。移動だ。ハンドラー隊と合流。撤退する」
即座にホバーエンジンを戦闘出力まで引き上げ、機体を跳躍させることで初速を稼ぎ即座に位置を変える。
先ほどまでメイアたちがいた位置にワンテンポ遅れて砲弾が炸裂した。
「⋯⋯この瞬間はいつも慣れない」
「生を実感しちゃいますね」
「お前はなんでそんなに前向きなんだ」
部下達の軽口を聞き流しながら、メイアはアイアスの衛星通信でレヴィナスへと通信を繋いぐ。
「ウィペット1よりハンドラー1へ。合流地点の指示を頼む」
「ハンドラー1。了解。座標データを送るわね。チャーター機も手配済みですよ」
レヴィナスから座標が送られて来た。
タイミングを見計らったように、レヴィナスがばら撒いたセントリーミサイルポッドから光が空に飛び立った。
放たれた光はそれぞれが空中で1つから4つ、8つと数を増やして指定座標へと振り注ぐ。
だが、途中でミサイルが空中で爆ぜた。
「⋯⋯7⋯⋯いえ8割ほどでしょうが。迎撃されていますね。ドローンを撃ち落とせるのですから当然といえば当然ですが」
「なら、次からは砲撃だな」
迎撃対策を考えるのであれば、メイアが扱うような弾速と威力が両立された中口径砲か。MⅢで扱うとなると足を止める必要があり、戦車の主砲では空輸ができず足の遅さがネックとなる。
大口径砲の使用を考えるなら古典的な大質量の運動エネルギー弾頭でないと空中で迎撃されてしまう。
今どき、後者の大口径砲となると弾速の問題もあり榴弾砲が主流だ。必然的に前者の選択となるだろう。
「メイア、映像データを記録しておいてください。詳細は解析していただきましょう」
「まだ作戦中だぞ」
「もう帰るだけですし、いいでしょう?」
「お前は仮にも副隊長だろう」
「副隊長をお前呼ばわりですかメイア?」
迎えの輸送ヘリを見上げつつ、メイア・シトウェル中尉はため息をついた。
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第四回 威力偵察
出撃部隊 都市外活動専任特殊部隊
シェパード小隊
セッター小隊
「セッター1より全機へ!敵部隊の観測ドローンを確認!砲撃中止!砲撃中止!セッター3が食われた!足を止めると死ぬぞ!」
セッター1より叫び声に近い警告が部隊に告げられた。今まで確認されなかったカルコサ都市軍の観測ドローンが確認された。
度重なる嫌がらせに業を煮やしたようだ。
「シェパード1。了解した!観測ドローンの座標と高度を求む!支援する」
「こちらセッター1!座標を送る!こちらは幸運なマヌケの回収に向かう。セッター1よりセッター2!観測手!」
「セッター2。了解!」
どうやら被弾した味方はコクピットブロックのエジェクターが作動したようだ。クレアは内心で安堵の息を吐いた。
「シェパード1よりシェパード全機へ!聞いていたな!やることはいつもと変わらない!ただ⋯⋯自分達の地雷を踏むなよ!コンテナパージ!」
「シェパード2。了解!」
「シェパード3。了解!」
地雷と地上センサーのコンテナを投棄し、MⅢレプスのホバーエンジン出力を最大にする。跳躍と滑走を繰り返す事で標準を絞らせない。
機体を走らせたまま、シェパード小隊のMⅢレプスは機関砲と多弾倉砲を上空に向ける。弾倉は散弾に設定する。
「照準不要!指定ポイントへ弾幕を張れ!弾をケチるなよ!」
空に向かって雨のように砲弾が放たれた、
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第六回 威力偵察
出撃部隊 都市外活動専任特殊部隊
ドーベル小隊
アルビオン・バイオニクス実験部隊アルケミスト
「オメガ1よりオメガ2から4へ。観測ドローンの殲滅を最優先。オメガ1は観測手を務めます」
「オメガ2。レーザー通信の感度良好。了解した」
「オメガ3。りょうかーい」
「オメガ4。了解でありまーす」
MⅢアルテミスの存在は主戦闘まで隠匿する方針となった。そのため、ニコルは今回の威力偵察で最も後方の位置に降下された。
セナとルナはMⅢファング。セレスはアイアス都市軍所有のMⅢジャガーを借り受けて出撃している。
肩関節部に背負う置き土産のコンテナはそのままだ。
だが、射撃武器は積まず肩関節部の対人機関銃に代わり全自動迎撃レーザーと、腕部に手動の迎撃レーザーを装備していた。
「オメガ1よりドーベル1へ。目標座標を送信しました」
「ドーベル1。了解した。ドーベル1からドーベル隊各機へ。レールガン展開。砲撃用意」
「ドーベル2。了解しました」
「ドーベル3。了解」
ジャックが指揮を執るドーベル小隊のMⅢレックスが正面装甲を上下に開口し、レールガンの砲身を露出させる。
前衛の企業連合のMⅢ小隊はすでに空に赤い照準レーザーを踊らせ、空から煙が上がっていた。空に展開していたカルコサ都市軍のドローンが焼かれているのだ。
カルコサ都市軍の砲撃もそちらに集中するが、戦闘速度による回避運動で逃げに徹するMⅢに砲弾の雨が追い付けていない。
「ヤッバいですね⋯⋯。あれ、あの女の子達がやってるんスか?」
「俺の妹より小さかったのにな⋯⋯」
「あんな形でも企業連合の戦闘用の人造人間ということだ。後れを取るな。戦闘速度を維持しつつ砲撃開始」
MⅢレックスのレールガンが指定座標に向かいプラズマと共に亜光速の砲弾を吐き出す。
レールガンにも反動はあるが中口径砲ほどではない。ホバーエンジンが戦闘出力のままのため、MⅢレックスは後方に滑りながらも砲撃を繰り返した。
「全く。光学迷彩なんてMⅢアルテミスのレーザーかナパームで焼けば良くないか?」
そんな砲撃の光景を横目にセレスは愚痴を漏らす。出力は調整したものの、MⅢジャガーでは油断をするとMⅢファングに置いていかれかねない。幸い俊敏性は機体が軽いMⅢジャガーの方が上だ。
「相手が目論見通りに動いている以上、過度な刺激は悪手になりかねません」
「理屈は分かるんだがな」
幸い、予想通りにカルコサの師団から補給路を維持する部隊が別れてくれた。
領土の広い都市国家アイアスに侵攻するとなると必然的にそうなる事は、バルドゥルというアイアスの中佐も予想していた。
「物量は脅威ですが、それに任せて相手が雑に動いてくれているんです。油断していてもらいましょう」
「物量が脅威⋯⋯企業連合の僕達が言うことか?」
都市国家の経済圏⋯⋯領土はその都市の人口や経済能力によって建造時に定められた。
収容人数の多い都市国家アイアスの領土は半径600kmに及び、対して旧都市を利用しております収容人数の少ない都市国家カルコサの領土は半径300km未満だ。
そのため、アルビオン・バイオニクスの都市外施設はアイアス領土内にあるものの、距離的には都市国家アイアスと都市国家カルコサの距離に大きな差はなかったりする。わずかにカルコサが遠い程度だ。
ただ、領土の広さと軍事力と経済力が比例するわけではない。旧時代の建造物の観光と奴隷売買、奴隷制経済で資源以外でも外資を得る都市国家カルコサは、規模以上に潤っているようだった。
「中央大陸の7割以上に影響力を持つアルメニア・エレクトロニクスと西方大陸を独占するフェデラル・エンジニアリングに比べると、暗黒大陸が主軸のアルビオン・バイオニクスにも同じ事は言えるんですよ?」
ただし、企業連合としては経済圏の広さが物を言う。比較的新興のアルビオン・バイオニクスとジパング・インダストリーはMⅢ製造の老舗とも言える2社には劣っているので他人事ではない。
「僕達姉妹の数が増えれば逆転できるさ」
「はい。なので今回も頼りにしています」
「セレス姉、ニコル君と話したいだけでしょ」
「ニコル君にはラピスちゃんがいるから駄目だよ?」
「⋯⋯お前達は作戦に集中しろ」
過度に緊張するよりはマシだろうか。ニコルは苦笑いを零しながらため息を零した。
「オメガ1より各機。置き土産の残数が僅かです」
「ドーベル1。了解。ドーベル1よりドーベル隊各機へ。砲撃終了。撤退するぞ」
足の遅いMⅢレックスが先行して撤退準備に入った。僅かに後れて、置き土産のコンテナが空になる。
「あっち、華があっていいっすね。いい匂いしそう」
「子供相手に何言ってるんだ」
「⋯⋯黙って走れ」
ジャックは未成年相手に危うい軽口を叩く部下を黙らせた。




