section.38_少年のアルバム
「ニコル君のアルバムを作ってみたんだよ!」
今日の教養学習を始めようというタイミング。
白髪の少女は突然そんなことを言い出した。
光沢紙でできたB5サイズの薄い冊子⋯⋯アルバムを誇らしげに掲げている。
そんな少女よりも一回り以上は幼い金髪の少年は、半ば呆れた様子でため息をついた。
「そんなことより今日の勉強を⋯⋯」
「ちょっと!?もう少し興味持ってよ!?」
無視して学習用のノートとモバイル端末を操作し出す少年に少女は愕然とする。
「大事なんだよ!思い出って!何より、かわいいニコル君をこうして形にして保存しておけるんだからね」
「⋯⋯なんだか処分した方がいい気がしてきました」
アルバムに頬擦りをしつつ語る少女に身の危険を感じた少年はアルバムを奪おうとするが、そもそも身長で負けている少女相手に奪えるはずはなかった。
「まだまだ、ニコル君ではお姉さんにかなわないよ」
「くっ⋯⋯」
流石に9歳の少年と、15歳の少女では勝負にならない。
少女にしがみついてよじ登れば届かなくもないが、無邪気にそんなことができるほど少年も幼くはなく⋯⋯。すでに、異性と密着することに羞恥心を覚える程度にはマセていた。
「まぁ、私のモバイルに元データがあるからこれを処分した所で意味ないよ?」
「じゃあなんですぐに渡してくれないんですか」
「スキンシップ?」
この白髪の少女だけでなく、その姉や母親も含めて少々奇行に走るきらいがある。
おおよほその被害者は金髪の少年か、面倒を見てくれている眼帯の青年だった。
「私としては奪おうとして抱き着いてくるくらいの期待はしてたよ?」
「そこまで子供じゃないです」
それでも少女からしたらまだまだ子供である。ストリートチルドレンで栄養失調だった少年は同年代よりも身長が低かった。
「あ、私ちょっとお花摘み」
「はいはいトイレですね」
「デリカシー」
白髪の少女は少年の頭を軽く叩くと席を立った。
それを見送った少年はため息をつくと何となしに、少女が自慢していたアルバムを開いてみた。
いつの間に撮っていたのだろう。
連れてこられたばかりの頃、逃げようとして眼帯の青年⋯⋯この頃はまだ少年だった。彼に野良猫を捕まえるように抱え上げられていた時の写真だ。一緒に写っている銀髪の少女は彼女の姉だ。
この時、白髪の少女は10歳前後のはずだ。
こんな時から撮りだめしていたのか。
金髪の少年の寝顔やら、食事をしている時やら、身に覚えのない写真が多数あった。
少年は呆れつつページをめくっていく。
すると、少年が銀髪の少女に追い掛けられている写真があった。確か一緒に入浴させられることに羞恥心を感じ始めて逃げ出した時だった。
銀髪の少女の裸体、その後ろ姿が写ってしまっている。金髪の少年と共に、少年を捕らえた眼帯の少年も顔を真っ赤にして狼狽えている様子がしっかり写っていた。
金髪の少年は無言でアルバムを閉じた。
長いため息をつく。
すっくと少年は立ち上がった。
「セラさん!!」
「うわあ!?ニコル君なに!?トイレ行きたくなった?もうちょっと待って」
「この写真!シーラさんやラルスさんの許可とってるんですか!?」
「え!?シーラ姉も同じもの持ってるけど!?待って!?トイレの前来ないで!音聞こえちゃう!!」
色々と問題のある写真が含まれていたが、そのアルバムは少年の部屋の本棚に仕舞われている。




