神と人が寄り添う時
「ハーティルティア様っ!わたしっ!わたしっ!『女神』の力を取り戻したようですっ!」
リリスは『女神化』した自分の姿を見て、喜びの涙を流していた。
「おめでとう、リリス。あなたが『女神化』したことで、またひとつ『デスティウルス』に対する対抗戦力が増えたわ」
「はいっ!私も全力でお供させていただきます!」
「さて、これで『準備』は整った訳だし、取り返しがつかなくなる前に『邪神デスティウルス』を滅ぼしに行くわよ!」
ハーティの言葉に全員が頷いた。
「ハーティルティア様、あの時『デスティウルス』の黒い霧は南の方角へ去っていきました。おそらく、『サウスポイント』へ向かっていると思われます。ですから、すぐにでも追った方がよろしいかと」
「『サウスポイント』ってなんなの?」
クラリスはリリスの言う聞き慣れない単語に首を傾げた。
「今まで『女神教』を信仰していなかったクラリスには馴染みが無いかもしれませんが、『サウスポイント』とは『女神教』において、この世界に満ちている全てのエーテルが生み出される場所とされている地点です」
「その『サウスポイント』は『南の最果ての地』にあるとされていますが、今までその地に辿り着いたものは誰もいません。おそらく『デスティウルス』はいち早く力をつけるために『サウスポイント』で直接エーテルを喰らおうとしているのでしょう」
ユナの説明に続いて、リリスが『サウスポイント』について補足説明をした。
「でも、この世界における『南の最果ての地』といえば、その場所はきっと海よね?今のところ、この大陸の最南端より南については何も分かってないけど、少なくとも何か陸地があることはなさそうだし」
「だとしたら、すぐにでも空路で向かわないといけないわね」
「じゃあ、早速出発ね。距離がどれだけあるか分からないからユナは『プラタナ』に乗るとして・・リリスは『女神化』して飛ぶことはできるのかしら?」
「はい、それは可能です」
「ちょっと待ってくれ!ハーティ!」
ハーティが『サウスポイント』に向かう手段を考えていると、マクスウェルが突如声をあげた。
「私達の事を忘れてはいないか?私達『女神同盟軍』も『デスティウルス』討伐に参加させてもらうぞ!」
「だ、だめよ!そんなの危険すぎるわ!」
マクスウェルの言葉にハーティはひどく狼狽えた。
そんなハーティの手をマクスウェルは優しく包み込んだ。
「ハーティ、私達が何のためにここまでやってきたと思っているんだい?さっき君にも言ったが、私・・いや『私達』は君の力になりたいんだ!」
「マクスウェル・・」
「確かに私達は君や君の仲間達のように何か特別な力がある訳ではない。だけど、それでも何かの役に立ちたいんだ。君がこの世界を大切にしているように、私達にとってもこの世界はかけがえのないものだ。だから、私達にもこの世界を護らせてほしい!」
ハーティに向けられるマクスウェルの眼差しには、確かな決意が感じられた。
「・・・ふう、わかったわ。じゃあマクスウェル、お願い。あなたも私の力になってもらえる?」
「もちろんだとも!」
ハーティの言葉を聞いたマクスウェルはハーティを強く抱きしめようとする。
ヒュン!
しかし、そのマクスウェルの動きは、目の前を横切る何かによって阻まれた。
「無礼をお許しください、マクスウェル殿下。目の前に羽虫がおりましたゆえ・・」
マクスウェルが声の元へ目を向けると、そこには上段蹴りを終えたままの姿勢で静止するユナがいた。
「ほう?ユナには羽虫が見えたのか?私には見えなかったが」
「ええ、見えましたとも。確かに大きな羽虫が」
ユナはしれっとしながら優雅に振り上げた足を下ろした。
「あ、あなた!『イルティア王国』の王族であるマクスウェル様になんという・・あまりにも不敬だわ!」
その様子を見ていたフィオナが、顔を真っ赤にしながら怒りを露わにしていた。
「構わないよ、フィオナ嬢。ユナが私に対して厳しいのは今に始まった事じゃない。強いて言うなら、主人への愛が重すぎるだけだ」
「ですが・・・」
「それにユナは『女神ハーティルティア』に認められた正当な『聖騎士』だ。『聖女』であるリリス様と同じく、『イルティア王国』では王族であっても敬わないといけない存在だ。だからユナの態度は決して不敬ではない」
「・・マクスウェル様がそう仰るなら・・」
マクスウェルの言葉を聞いて、フィオナは渋々納得したようであった。
「とにかくだ、『デスティウルス』は待ってはくれないだろう。だからすぐにでも出発しよう」
「『イルティア・レ・イーレ』に搭載できない二機の人工女神は、申し訳ないが『飛翔魔導』で追従してもらいたい。聖女様とハーティ、ユナは自分でも飛べるだろうが、折角だから私達の艦に乗艦してほしい」
「わかったわ」
「わかりました」
「私は元々乗ってきましたしね」
三人の返事を聞いて、マクスウェルは満足そうに微笑んだ。
「・・・どうやら到着したようだな」
ゴォォォォォォ!!
ちょうどその時、王宮の上空から凄まじい轟音が響き渡り、ハーティたちの視界に影が落ちた。
「「「!!!」」」
その異変に気づいたハーティ達が空を見上げると、皆が一様に目を見開いた。
「空飛ぶ・・・船!?」
「あんな大きなものが飛ぶと言うのですか!?」
「これは・・あたしにも予想以上の代物ね」
「これを・・人間が作ったというの・・!?」
「これを見れば、『デスティウルス』に対抗しうる戦力と言われても納得できそうであるな」
頭上で浮かぶ巨大な船体に搭載された推進器によって、地上には激しい風が吹き荒んでいた。
そして、その嵐によって暴れる美しい金髪を自分の手で押さえこみながら、マクスウェルは得意げに笑った。
「これが、我々人類が生み出した『対邪神用決戦兵器』、女神ハーティルティアに連なる『女神同盟軍』の総旗艦・・飛行魔導神殿『イルティア・レ・イーレ』だ!」




