メルティーナ・リバイヴ
キィィィン・・・。
ハーティ達と和解したナラトスと二アールは『白銀の剣』のメンバーとして行動を共にする事になった。
そこで『ヨークスカ』で潜伏していた宿から『白銀の剣』の拠点へと生活の場を移す為に、一同は早速拠点まで飛翔魔導で蜻蛉返りしていた。
因みに、クラリスは最後まで『プラタナ』で帰ると聞かなかった為、ユナに荷物のように抱えられて帰る羽目になった。
「へえ、流石天下の『一級冒険者』様ね。いいところに住んでいるじゃない」
二アールは眼下に見えるハーティ達の拠点を眺めながら、自分を横抱きにしているナラトスの胸元に顔を埋めた。
「二、二アールよ・・そんなにくっつく必要があるのか?」
「ナラトス様・・私、高いところが苦手なのです。すりすり」
「ひぃぃぃ!あなた、さっきまで平然としていたでしょうが!怖いのはあたしの方よ!」
「ふん!根性ないわね!きゃあ!こわいですラナトスさまぁー!」
「こんの色ボケ女が!」
「そろそろ降下しますよ!喋ると舌を噛みますよ」
「ちょっ!まっ!ユナ!ひぃぃぃ!」
クラリスの叫び声と共に一同は中庭の駐機場へ着陸した。
「はぁはぁ・・絶対に自分が飛ぶ為の乗り物を作ってやるわ・・」
漸く地に足着いて肩で息をしながらクラリスがぼやいていると、マルコと侍従がハーティ達の元へとやってきた。
「おかえりなさいませ」
「ただいまマルコ!そうそう!今日から新しいパーティメンバーが二人増えたのよ!この屋敷で一緒に暮らすからよろしくね!」
「かしこまりました、わたくし当邸の執事長である『マルコ』と申します。御用がありましたら何なりとお申し付けください」
「私は『二アール・フォン・ソフィミア』よ。一応は元帝国貴族よ。まあ家は捨てたようなものだから、あまり畏まらないでね」
「私は名を『ナラトス』と言う。よろしく頼む」
三人が互いに挨拶を終えると、クラリスは何かを思い出したかのように掌を叩いた。
「あっ!そうだ!二アールに見せたい物があるのよ!付いてきて!」
クラリスはそう言うと、スタスタと研究施設のある建物へと歩き出した。
「うん?」
二アールは首を傾げながらもそれについて行く。
その二人を見てハーティとユナは顔を見合わせて微笑んだ。
スタスタ・・。
「随分大きな建物ね、魔導具の研究設備があるみたいだけど・・・」
そして、しばらく歩いたクラリス達は研究施設にある格納庫の一角で歩みを止めた。
「見せたかったのはこれよ!二アールの『大切な物』でしょ?いつか再会した時のために私が修復しておいたのよ!」
「っ!これは!?」
二アールはクラリスが見せた物を見て、思わず瞳を潤ませた。
「・・『メルティーナ』!」
二アールの視線の先には、ハンガーに固定された漆黒の魔導機甲があった。
「これは二アールが作った機体だから、なるべくあなたの思想に基づいて修復したわ。ただ、躯体の素材は魔導銀から神白銀に変えさせてもらったけどね。そのままだと機体色が白銀色になっちゃうから、わざわざ帝国出身の技術者に元々の黒色へ全塗装してもらったのよ!」
「え!?神白銀!?あの空想の素材!?へ!?」
「二アールは『メルティーナ』が無事であった事、神白銀が実在した事に驚きを隠せないようであった」
「あたしの『プラタナ』の動力はハーティが錬金した神白銀製の発導機からマナを供給するのよ」
「どうりであんな馬鹿みたいな出力が出るわけだわ・・」
「なんか理解してるよ!すごい!」
研究者同士の二人が理解しあっているのに対してハーティは感心していた。
「ただ、『メルティーナ』にあたしの『プラティウム・マギフォーミュラ・マナ・ジェネレーター』を積むのはあなたのプライドが許さないだろうから、この機体のマナ供給方法は別の形を取ったわ!」
「・・それで胴体部分は以前と少し違うデザインなのね。でも、前回は『黒の魔導結晶』があったから『メルティーナ』は動いたのよ?それを無くしてどうやってマナを供給するのよ?」
二アールの質問に対して、クラリスは『チッチッチ』と舌を鳴らしながら指を立てた。
「言ったでしょ?『あなたの思想に基づいた』って。まあ、実物を見たほうが早いわ。ちょうどテストもしたかったしね。じゃあ二アール、ナラトス!ついてきて!」
「私もか?」
「当たり前よ!」
そう言うと、クラリスはスタスタと『メルティーナ』のハンガーに歩み寄ると、備え付けられたタラップを登って機体の背面へ近づいた。
「「うん?」」
二アールとナラトスの二人は首を傾げながらもそれについて行った。
「じゃあ開けるわよ!」
二人が自分に追いついた事を確認すると、クラリスは『メルティーナ』背面ハッチの近くにある小さな魔導式に触れてマナを込めた。
パァァァ・・。
クラリスが触れた部分の魔導式がマナによって光り出すと、その光がハッチ同士の合わせ目へと伝わっていく。
バッシュウ・・・!
そして、空気が漏れるような音を鳴らしながら重々しいハッチが開いた。
ウィィィン・・・。
ハッチが開き切ると、続いてコクピットと思わしき空間から外部に向かって操縦座席が丸ごとせり出してきた。
それを見た二アールは驚愕に目を見開いた。
「っつ!?『複座式』ですって!?」
二アールが言うように、その操縦座席は縦並びに二席が一体となって連なっており、前の座席は今までの『メルティーナ』同様にスポーツバイクのようなセパレートレバーの前傾姿勢タイプとなっており、後部座席は通常の着座姿勢で座る椅子のようになっていた。
「『メルティーナ』はあなた達が『人造ゴーレム』の時に用いた技術を応用したわ。つまり、前の座席に座る操縦者が主に機体を操作して、後部座席に座る人間が生成したマナから機体の動力を賄うってわけ」
「元々はいつも生身で戦うユナが後ろに乗ってマナを供給するつもりだったのよ?」
「え!?初耳なのですが・・・」
どうやら、ユナは本人の知らぬ間に『メルティーナ』の動力源にされる予定であったようだ。
「ユナはあなたたちが獣人に施した方法と同じような形で人工的に『潜在する膨大なマナ出力』を活用できるようにした人間だからね」
クラリスの言葉を聞いた二アールとナラトスは顔を見合わせた。
「「ということは・・・」」
その様子を見たクラリスは『ふんっ!』と得意げに鼻を鳴らした。
「そうよ!ナラトス、あなたにはこの人工女神『メルティーナ・リバイヴ』の『動力源』になってもらうわ!」
そう言いながら、クラリスはナラトスを指さした。




