黒の実力
「・・・成程、私が後部座席に乗って『メルティーナ』へマナを供給するということだな?」
「そうよ!」
「・・・確かにナラトスは私たちの味方になったとは言え『邪神』であることに変わりはない。『邪神』であり『浄化魔導』が使えない以上、どれだけ人間離れしたマナ出力があったとしても同じ『邪神』に対しては有効な攻撃を行うことが出来ない・・」
「それならいっそ、その力を『メルティーナ』の動力に使ったら良いってことね!さすがクラリス!名案だわ!」
ハーティはそう言いがらクラリスを褒めた。
「ナ・・ナラトス様と一緒に戦うことができるのですね・・」
そして、ニアールはナラトスと『メルティーナ』に搭乗して戦うと聞いて頬を染めた。
「言っておくけど密室だからってイチャついたら駄目よ!」
「ななな・・・なにを言うのよ!クラリス!!」
クラリスに茶化された二アールは羞恥で頬を染めていた。
「っく!なんだか、あなたの乙女じみた顔を見たら無性に悔しいわ!!」
「・・ねえねえ!折角だし、『メルティーナ』の動作テストをしてみたら?これから『邪神』との戦いや冒険者活動に『メルティーナ』も活躍するんでしょ?」
「・・そういえば、考えてみたらあたしたちのパーティって『女神』に『聖騎士』に『人工女神』二機って凄まじい戦力を持っているわね」
「・・やろうと思えば、ものの数日で世界中を火の海に沈めることが出来ますね」
「ちょっとユナ!?そんな物騒なこと言ったら駄目だよ!!」
物騒なことを言いながら俄かに黒い笑みを浮かべるユナを見てハーティは慌てふためいた。
「・・本当にできてしまうところがシャレにならないわ」
クラリスもまたユナの言葉に嘆息した。
「・・じゃあ、ハーティの言う通り早速起動テストをしてみましょうか。二人とも『メルティーナ』に乗り込んでくれる?」
「承知した」
「わかったわ!」
「あ、そうそう・・乗り込む前にこれを二人とも装着してくれる?」
「ピアス?」
「なんだ、これは??」
「これはあたし達『白銀の剣』のメンバー同士が離れていても会話ができるようになっている魔導具よ!」
クラリスから魔導具のピアスを受け取ったニアールは、まじまじとそれを見つめてから自身の耳へと装着した。
「なるほどね・・・要はマナを使って音となる空気の振動をエーテル振動に変換して相手まで伝達、それを再び空気の振動にかえて通信するってわけね」
「すごい!説明も無しに理解できてる!?私は説明を聞いても意味不明だったのに!!」
ハーティはニアールの理解力に恐れ戦いた。
「あなたと二アールじゃ出来が違うからね」
「どういうことよ!?」
クラリスに心外なことを言われたハーティは怒りで頬を膨らませた。
そして、ピアスを装着した二人は『メルティーナ』の操縦座席に乗り込んだ。
ピピピ・・・ウィィィン、バシュウゥゥゥ!
ニアールが操縦座席にあるコンソールにマナを込めると、それにより操縦座席がコクピットへと吸い込まれてハッチが閉まった。
二人が乗り込んだコクピットの空間は、かつての『メルティーナ』から動力系統が省かれたことによって、かなり広くなっていた。
『じゃあ『メルティーナ』を起動するわよ。ナラトスは座席の肘掛部分にあるアームカバーに両手を挿入して、中にあるレバーを握ったらマナを込めてくれる?』
「承知した」
ナラトスはクラリスの指示通り、座席に備わった肘掛部分にあるレバーを握りこんでマナを込めた。
シュイィィィィィィン!!!
それと同時に操縦座席やコクピット内の神白銀板に刻まれた魔導式が白銀色に発光し始めて、駆動音が伝わり始めた。
そして、光魔導スクリーンが起動すると外部の様子が映し出された。
ヴォンヴォン・・・。
「おお!凄いわ!!本当に『メルティーナ』が起動したわ!!」
『じゃあ『メルティーナ』をハンガーからパージするわ!操縦方法は前と同じだから、さっきの駐機場まで歩いてみてくれる??』
「わかったわ!!」
ピピピ・・。
クラリスはハンガーの近くにあった魔導コンソールを手早く操作する。
パシュッパシュッパシュッ!!
すると、ハンガーから『メルティーナ』がパージされて、機体がゆっくりと歩みを進め始めた。
ギュイーン・・ズシーン!!ギュイーン・・ズシーン!!
神白銀化により軽量化されたとは言え、総重量四十トンをゆうに超える機体が一歩進むごとに地震のような揺れが辺りに響き渡る。
程なくして『メルティーナ』は駐機場の上へと到着した。
そして、駐機場の上に立つ『メルティーナ』に向かってクラリスは手を振って合図した。
「じゃあ早速『飛翔魔導』の実験をするわよ!!前と同じ感じで操作してくれる??」
『わかったわ!!』
ニアールの言葉の後に『飛翔魔導』を発動したのか、『メルティーナ』の背部にある可変式の『飛翔』ユニットが展開し、凄まじい量のマナによる光が迸る。
キィィィン!ズギャァァン!!!ドゥン!!!
そして、『メルティーナ』は大地を大きく揺らしながら猛烈な初速で離陸した。
『うわぁぁ!!なんなのよ!!この出力は!?は、はやすぎるわよ!!』
ニアールは旧型の『メルティーナ』と同じ感覚でスロットルを操作したようで、急激に出力上昇した『メルティーナ』の挙動に困惑したようであった。
「ハーティ!ユナ!あたし達も行くわよ!」
「わかった!」
「わかりました!」
ドゥン!
ドォォン!
「出でよ!『プラタナ』!」
そして、二人と一機も『メルティーナ』を追って離陸した。




