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【完結】ガチで限界な社畜リーマンがBでLしかける話  作者: 田中1号


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3. side 柊

 ふっと浮上した意識に、自分のいる場所がわからなくて瞬きを繰り返す。寝ていたのか、と理解した瞬間思ったのは仕事のことだった。やばい、とベッドから転げ落ちんばかりに起き上がったところ、掛けられた声にびっくりする。なんで家に椿がいるんだ。


 いきなり動くなよ、危ないだろ、としかめっ面に怒られ、呆気に取られる。逆にどういう状況なのか教えてもらいながら、そういえば瞼が腫れぼったい感じがするなとぼんやり自覚する。起きて大丈夫なのか、何か食えるかと聞かれて、買い物に行きたかったのだと思い出す。今この家にはペットボトルすらない。


 幾分か回復した顔色を椿に確認され、何か食いに行くか、と言われ連れ立って玄関へ向かう。お前仕事は、と今更ながらに聞くと、俺もお前もサボり、連絡はしといたから、と悪びれもなく告げられる。休んだのか、仕事。これで四日目だ。どうしよう、これ以上休みたくなかったのに。しかも今日は椿まで巻き込んでしまっている。仕事に行かなければならない焦燥感と、行かなくて済んだ安心感がせめぎ合っている。


 何してんだ、行くぞ、という椿の声に、ハッとする。まただ、玄関先から動けない。ぐにゃぐにゃとする腹が気持ち悪い。足の感覚がなくなり座り込みそうになる。目の焦点が定まらない。外に出なきゃ、ご飯食べるんだろ、待たせているのに。気分が悪いのに頭の中は鳴り響いたサイレンに支配されてうるさくてたまらない。どうした、と覗き込まれた顔と目が合った時、柊の頬には透明な雫が伝った。


 限界だ、と柊は遂に自分の状況を認めた。


 乾いた喉を振り絞り、買い出しを頼んだ。椿は幾分躊躇ったのち、動くなよ、と柊に言いつけてから出ていった。閉じた扉がやけに重たく見えた。動くなよ、と言われても動けないんだよと自嘲しながら、柊はその場にずるずるとしゃがみ込んだ。壁に体を預けようとして些か勢いがついたのか、こめかみの上ら辺をゴン、とぶつけた。


 動けなかった、と理解した頭で、今度はどうしようと思った。冷たい玄関の上でもう一生このままなんじゃないかと愕然とする。思えばもうずっと自分の体はおかしかったのだ。急速に体調が崩れたのはここ数日だとしても、もう何ヶ月もろくに眠れていなかった。毎日毎日疲れているのに、寝たい気持ちはあるのに、睡魔がどこからも現れない。先ほど起き上がった時にまだ眠れるのかと、睡眠体力があったことに驚いたくらいだった。仕事は嫌いじゃない。仕事をこなして得られる結果にも意義があると思うし、新卒で入社して数年、そつなくこなしていく方法も身につけた。コミュニケーションは論破じゃなくて落とし所を見つけるためにあるとも学んだ。やりがいだってあったはずだ。


 なのにどうして。


 頑張ってやってきたじゃないか。真面目にやってきた。後輩も増えて、椿たち中途入社者の教育係だって任せてもらえた。給料だって少しずつ上がってきている。陰口を叩かれているらしいが、どこもそんなものだろう。どこで何を掛け違えたんだ。何かを間違えたんだろうか。あぁ、今日も休んできっと迷惑をかけている。どうしよう、どうしよう、どうしよう。


 溢れて止まらない涙をそのままにして、手繰り寄せたティッシュで鼻をかむ。柊の周りには丸めたティッシュのお花畑ができていた。

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