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【完結】ガチで限界な社畜リーマンがBでLしかける話  作者: 田中1号


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2. side 椿

 ひたすらに泣き続けた柊は疲れ果てたのか、眠ってしまった。濃い隈に乾いた唇。こんこんと眠る柊に何が起こったのか椿には見当もつかない。そっと掛け布団を被せ、起こさないように帰ろうかと思うも、大の大人が泣き叫ぶという状況に直面し、椿も少なからず動揺していた。青白い顔の柊を一人にするのも心許なく、今日は自分もサボるかとスマホを取り出しチャットを打ち出す。ベッドを背にして床に座りこみ、柊が目を覚ますのを待った。


 チャットで連絡はあるんだが、流石に心配でな、という柊の上司の言葉を聞き、様子見の役目を買って出たのは昨日の夕方頃のことだった。生活圏が近く、朝ごはんにファストフード店に寄ってから一緒に出社でもと思った椿は朝早くから、若干傍迷惑な時間から、柊の家のインターホンを鳴らしたのだった。


 熱でも出してろくに食べていないだろうから、見舞いがわりに奢ってやるか、と言う思惑は成し得なかったものの、朝から押しかけた自分の行動を褒めたい気分だった。柊は一体どうしたのか。柊は頑固な面もあるが実直で勤勉な男だ。二年前に中途入社した椿の教育係を務めてくれたのが新卒で入社していた柊だった。最低限の愛想を持って必要な会話で仕事を回していく柊を心良く思わない連中もいたようだが、それぞれの仕事ぶりを見ればそれは椿にとって些末なことであった。大柄で見目の良い椿と近づきになりたいと擦り寄ってくる会社の人たちを無下にもできず、そこそこ丁寧な対応をする椿に、仕事してください、の一言で取り巻きごと蹴散らしてしまう柊を椿は変わったやつだと思っていた。


 仕事に真面目で、後輩のフォローも的確。複数の案件が重なっても捌いていく手腕。同じ社会人四年目だというのに、勤務年数の差を加味しても、それはかっこいいものだと椿は素直に柊を評価していた。椿が入社して半年経った頃、仕事の話ばかりでなくたまにランチに行くようになった柊を椿は飲みに誘った。若干緊張しつつ誘ったものの、あっさりと、いいぞ、と返ってきた声にホッとしたのは今でも内緒にしていることだ。会話が続くだろうかという懸念は杞憂に終わり、会社を一歩でた柊はどこにでもいる同い年の男だった。趣味もあれば嫌いな食べ物もある。もっと早くこういった機会を設けておけばよかったのにと、湧いてきた思いの理由を椿はまだ掴めずにいる。


 それからも度々二人で飲みに行くことがあった。繁忙期明けだったり、ボーナスが出た後だったり。つい一週間前にも飲みに行ったばかりだった。あー異世界転生でもしてぇ、という柊に、なんだそれと笑い返したのが遠くのことのように思える。あー、は濁点がついたような声で、その切実さが尚のことおかしかった。同じ開発部に所属しながらも隣のチームとなった今では、柊がどんな仕事をしているのか完璧には理解できない。柊の様子におかしなところはなかったはずだ。友人関係は希薄らしい柊の一番近くにいるのは自分だという自負が椿にはあった。

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