24話:鳥人
「ここから右回りで迂回して…」
「え、この森を突っ切ってはいけないのですか?」
「うーん…駄目ではないけど。オススメは出来ないな。」
私(の分身体)は、スーの案内を受けて街を目指していた。半分程進んで、日が暮れて来た頃、目前に森が現れたのだ。
「理由は?」
「森を突っ切った方が、時間的には早いんだけどね。本来は。ただ、この森には厄介者が居てなぁ。」
「厄介者…ですか。」
「僕もあいつに目を付けられて、面倒なことに…まぁ、君なら何とかなるかもしれないけど。」
そう言うスーの声はいつもより低く、声量も小さかった。本当に面倒なのだろうということが伝わってきた。
「あいつ、とは、どんな方なのですか?」
「どんな方…か。うーん…」
「こんなだよ~。」
「え!?」
死角から声を掛けられて驚いた私は、咄嗟に飛退き、距離をとる。
「何さ、そんなに警戒しなくても。」
「あー…こいつがその厄介者だ。まさか森の外まで出て来るとは…」
…周囲に気を配っていなかったのもあるが、完全に背後を取られていた。不覚。
「厄介者呼ばわりは悲しいなぁ、スー君…久しぶりに会えたっていうのに。」
「…こっちは会いたくなかったんだが…」
「何さ、冷たいなぁ。あっそうだ、自己紹介をしてなかったね。私はサキ。見ての通り、鳥人だよ。よろしくね。」
鳥人…か。背丈は今の私と同程度か少し低いくらい、明るい緑の毛色に真紅の瞳が映えて綺麗だ。
「…私はフウカと言います。よろしくお願いします?」
「あれ。よーく見たら、フウカちゃん、人間じゃないのね~。ま、スー君の一部を持ってる時点で当然か~。」
「…何のことでしょうか。」
人間にも気付かれない自信があったのだが、サキには一瞬でバレてしまった。
「誤魔化しても無駄だな。こいつの観察眼からは逃れられないよ。僕の時もそうだった。厄介者たる一つの要因だな。そして、こいつは鳥人だ、つまり…」
鳥人の特徴…それは異様なまでの好奇心を持つ事。出会った者に片っ端から『遊び』と言う名の決闘を挑んでくる事で有名である。負けても何もされないとはいえ、体力と時間をかなり奪われる。本来は無視してしまえば興味を失うらしいが…
「何が厄介かって、弱みを握った上で『遊び』を要求して来る事だな。」
「ふふん、そうでもしないと皆、無視してくるからね。さぁ、フウカちゃん、私と遊んでくれたら、君が魔物ってことは内緒にしておいてあげるよ~。」
「やっぱりな…。ごめんフウカ、森の外なら安全だと思ったんだけど…。」
「私だって成長してるんだから。あの頃は森の外なんて怖くて出れなかったけど、いざ踏み出してみれば、楽しい事だらけじゃない。」
そうか、この子も、新しい一歩を踏み出した者なのか。少し親近感が湧く。
「……。」
スーが黙ってしまった。これではもう、遊び相手になってあげるしか道は無さそうだ。
だが、ただ遊んであげるだけではつまらない。ここは1つ…
「分かりましたよ。でも、遊んであげるからには、条件を付けましょう。」
「いいけど。何~?」
「私が勝ったら、私の仲間になって下さい。」
「は?」
スーが小声で「正気か!?」と言ってくる。それは多分サキにも聞こえていると思うが。
「え、何それ、面白そう。私にデメリットある?」
「貴女にデメリットがあるかは知りませんが、私にメリットはあります。」
「おい、こんな奴仲間にして、どうする気なんだ…?」
スーが呆れたように訊いてくるが、私にとってはこれは大チャンスなのだ。
「こんな奴、と言っていますが、彼女の強さは本物ですよね…私はそこを買っているんです。」
最初の気配の消し方、私の正体を見抜いた観察眼、彼女を厄介者たらしめているその頭脳。
「…成程な。それなら、絶対に勝てよ。ま、フウカが負けるとは思ってないけどね。」
「ふふ、言っておくけど、わざと負けるような事はしないからね!全力で遊んであげる!」
彼女はその大きな翼の先を、指さすかのように私の方へ向けた。
…開戦の合図か。
24話です。
私の推し魔物第1位はハーピィです。
しかし、これを書いている時点ではそうではありませんでした。
何故ハーピィ推しになったかというと、この作品を書いていたせいです。
サキ…こいつ…いいキャラすぎるんだもん…。
誰かに影響を及ぼす作品を作りたいという思想でいろいろ創作していますが、自分の作品の影響を一番強く受けるのは自分自身だったようです。
この話は、投稿するにあたっていつもより多めに修正しました。サキの容姿について書いたり、地の文を書き足したり、台詞を追加したり…。ここはこだわりたかったのです。




